食事にイノベーション 減塩や健康な食生活 「電気味覚」で実現

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塩分を控えたいけれど、薄味では味気なくて食事が楽しくない…。そんな悩みを解決できるのが「電気味覚」です。電気味覚で新たな展開を進める味の素を中心に各社の動向をご紹介します。

味の素が「電気調味料」を開発

9月10日、「 味の素は東京大学やお茶の水女子大学と共同で「電気調味料」の技術を開発したと発表しました。

「電気味覚」は、電気刺激で舌の味の感じ方を変え、味覚を増幅させる技術「電気調味料」は、その電気味覚の技術を使い、味の素が共同開発した独自の新たな技術です。

「電気調味料」の注目点は、経皮電気刺激を活用して食品の味を調整する点です。下顎や首の後ろの皮膚への電気刺激を通じて味を増強します。

実証実験では食品によっては塩味のほか、うま味や酸味も強まり、風味にも影響を与えることが確認できました。

味の素は、この技術を使って首や耳にかけて使うウェアラブルデバイスを開発食事中に装着することで、減塩が必要な人の食を豊かにし、「おいしい減塩」の実現を目指しています。

「電気味覚」とは
・微弱な電気を流すことで生じる味覚
・電気の向きなどをコントロールすることで、塩味や酸味が増幅する

キリンHDは「減塩スプーン」を発売

キリンホールディングス 」は、2024年5月に食器型デバイス「エレキソルト スプーン」の予約・抽選販売を開始しました。

「エレキソルト スプーン」は、ユニークな研究を評価する「イグ・ノーベル賞」の栄養学賞に選ばれた明治大学の宮下芳明教授と共同で開発したもの。減塩食品の塩味を約1.5倍に増強させる独自の電流波形の技術を使ったスプーン型のデバイスで、強度は4段階で調整することができます。

「減塩」以外にも食生活を豊かで健康なものに

食べ物の味をデジタルで再現できる装置の開発も始まっています。五味(甘味・酸味・塩味・苦味・うま味)や渋み、辛みなどを味センサーで測定・データ化して伝送することで味の再現が可能になりました。

日本電信電話 」傘下のNTTドコモは、この技術を応用して単純な味の伝送だけでなく、個人の味の感じ方も他者と共有できる技術を開発しています。 

デジタル化された味覚データは商品開発の現場でも活用が進みます。「 伊藤忠商事 」は、定量化しにくかった味や食感、栄養などのデータを可視化した「FOODATA(フーデータ)」というサービスを提供し、食品メーカーなどの商品開発を支援しています。

味覚だけでなく、デジタル技術を使った食感の再現に挑戦する動きもあります。「 パナソニックホールディングス 」は音と振動で食べ物の食感を再現するデバイスを開発しています。

「電気味覚」の技術開発や製品の登場は、食事にイノベーションを起こし、食生活はより豊かで健康的なものへと変化していきそうです。