株式市場で「暗号資産(仮想通貨)」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は8.0%と、東証株価指数(TOPIX、1.7%高)を大きく上回りました(11月8日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した主な銘柄とその背景について解説します!
トランプ氏勝利でビットコインが一時最高値
暗号資産関連株が上昇した背景は、米大統領選でトランプ前大統領が勝利したことによる暗号資産に対する規制緩和の期待感の広がりです。
7月下旬、暗号資産業界のイベントでトランプ氏は、大統領に当選した場合には暗号資産業界への締め付けに厳しい姿勢をとる米証券取引委員会(SEC)のゲンスラー委員長を解任すると発言。また、「米国を暗号資産の首都、ビットコインの超大国にする」と述べ、業界への支持を明確にしていました。
大統領選開票が行われた今月6日には、ビットコインが7万5000ドルと最高値を更新し、「トランプ・トレード」として注目を浴びています。米国の暗号資産規制緩和の追い風に乗って日本でも取引が活発になるとの思惑から、暗号資産関連銘柄が大きく上昇しました。
足元低調な暗号資産の好転が追い風か【セレス】
上昇率首位の「 セレス 」は、フィナンシャルサービス事業で暗号資産販売所の「CoinTrade」を運営するほか、ビットコインで海外の携帯電話用SIMに入金が可能なサービス「Sobit」を手がけています。トランプ次期大統領が暗号資産の規制を緩和し、取引量が増加すれば同社の事業拡大が見込めます。
8日に発表した2024年1~9月期連結決算は大幅な増収増益となりました。フィナンシャルサービス事業は4~9月期に暗号資産相場が下落した影響を受け営業赤字でしたが、主力のモバイルサービス事業が好調で補えました。フィナンシャルサービス事業が好転すれば、さらなる収益拡大が見込めそうです。
暗号資産証拠金取引にも波及か【トレイダーズホールディングス】
上昇率2位の「 トレイダーズホールディングス 」は、子会社のトレイダーズ証券が個人投資家向けの暗号資産の証拠金取引サービス「みんなのコイン」を手掛けています。システム開発の子会社のFleGrowthも外部向けの暗号資産証拠金取引に関連したシステム開発などを手掛けています。暗号資産の取引が活発化すれば、証拠金取引への波及が見込まれ、システム開発や保守、運用の需要増加も期待されます。
財務資産にビットコインを起用する企業も
「メタプラネット」は5日に、暗号資産関連企業のパフォーマンスを示す指数「コインシェアーズ・ブロックチェーン・グローバル・エクイティ・インデックス」に採用されたと発表しました。
「 マネックスグループ 」は子会社のコインチェックが暗号資産取引サービス「Coincheck」を手掛けています。
いずれの企業も暗号資産の取引や運用などを手掛けており、トランプ次期大統領の暗号資産への規制緩和が実現すれば収益拡大が見込めそうです。
高まる期待でフェイクニュースも
一方、暗号資産の規制緩和に絡むトランプ・トレードでは、SNS(交流サイト)でのフェイクニュースの拡散も見られました。トランプ氏が大統領選に勝利した6日、トランプ氏がSECのゲンスラー委員長に解雇を伝えるフェイク動画が流れました。AI(人工知能)で生成されたとみられます。
トランプ氏はビットコインなどの暗号資産に関心を持ち、政策に関する発言をしているため、今後も、それに絡むフェイクニュースが流れる可能性はあります。
また、暗号資産は裏付けとなる資産が無く値動きが大きいため、関連銘柄の変動率も高まりやすい特徴があります(『金融不安横目に価格上昇 「ビットコイン」関連株が上昇』)。暗号資産に関する情報については、ニュースの取捨選択と念入りな事実確認を踏まえ投資判断に役立てたいですね。