日経平均7万8000円も理論上ありうる? マーケット歴38年の日経記者だからこその「今の株価」考察のほか、注目の企業紹介もたっぷり。読み応えのある一冊です。
2024年の株価急騰がバブルではない、その理由は?
「日経平均、盛り上がっているけれど今の株価は結局バブル?」ーーそんなモヤモヤで次の一手に迷いあぐねている読者に読んでほしい本。著者は日経平均1万2000円の時代に日本経済新聞社に入社しました。バブル経済の狂乱を感じ、リーマン・ショック後の7000円台という底を見て、そこからの直近4万円超えと市場の変遷に対する筆致も熱い。ですが、やはり最も気になるのは、今回の急騰と1989年のバブル比較でしょうか。
株価の割安性を表す指標のひとつに、PERがあります。シンプルにいえば数字が小さいほど株価が割安であることを示すもので、2024年2月はPER16.47倍。高い気がするかもしれませんが、1989年のバブル期はなんとこの4倍近い62.58倍!
一方、1株当たりの利益はどうかというと2024年の2373円に対し、1989年は622円と4分の1でした。時価総額は2024年の932兆円に対し、1989年は603兆円。こうした数字を丹念に並べつつ「バブルがいかにいびつな株高だったか」を論じていきます。当時は、企業がお互いの株式を持ち合い、決して売らないという構造があって、これまた歪んだ株高の要因となっていました。
現在はというと、持ち合い構造は見直され、企業が資金を投じるのは「株式還元を目当てとした自社株買い」や「成長戦略のためのM&A」などへ。こうした変革を経て、足元では連続で最高益となる企業が続出。大幅な賃上げあり、はたまた17年ぶりの日銀の利上げや新NISAのスタートなど、改革の機運も続いています。結論として「歴史的な上げ相場は驚くべきことではない。日経平均7万8000円も十分ありうる」と著者は述べます。
では狙い目はどこか? そんな声にしっかり答えるのが本書の後半。観光や金融株など期待の業種や注目のスタートアップ企業紹介のほか、中長期的に見た中国リスクや原油価格の上昇など懸念材料にも触れています。巻末には東京証券取引所CEOや大和証券グループ前会長ら識者へのインタビューもあり、今後の日本株への多面的な視座が持てる構成となっています。