サステナブル投資は未来への投資

未来を変える!サステナブル投資/ 日興フロッギー編集部岡田 丈

熱を帯びる地球、広がる格差(貧困)など、人類が健康に暮らしていくために、いま、解決しなければならない環境問題、社会課題が山積しています。この課題解決に貢献する企業へ投資することで、持続可能な社会をつくり、社会と個人の両方が豊かになることを追求する「サステナブル投資」。本連載では、企業のサステナビリティへの取り組みをご紹介します。

そもそもサステナブル投資って何?

近年、集中豪雨をはじめとする異常気象や、猛暑による農作物被害、熱中症など健康被害に関するニュースを目にする機会が多くなりました。

このような原因のひとつとして、地球温暖化が挙げられることはご存知と思います。

例えば、東京都の平均気温はここ100年で約2.5度上昇する状況となっています。下の図は1950年以降の平均気温を示したものですが、確かに現在に近づくほど平均気温が上側に位置していることが見て取れます。特に2024年7月は統計開始以来、過去最高となりました。

※東京管区気象台「東京都の気候変動(令和4年3月)」

地球温暖化の影響は冒頭の問題だけではなく、海面上昇や生態系の変化といった、長期にわたって我々の生活を脅かす問題にも発展する可能性があります。

これらの影響を押さえるために、二酸化炭素(CO2)等の温室効果ガスの削減が急務となっています。

今、注目が集まるステナブル投資とは、持続可能な社会のために、そのような環境問題や社会的課題に対する企業の取り組みに着目した投資手法です。投資家として「投資(経済的)リターン」を追求しつつ、投資対象の企業の取り組みが「社会的リターン」を同時に追求することを目的としています。

これは投資を通じて持続可能な社会の実現を目指す投資手法であり、まさに未来への投資と言えます。

投資リターン-SX銘柄を参考に

サステナブル投資に関する投資リターンについて、ホットトピックの一つともいえる最新の事例を用いて見ていきましょう。今年4月、経済産業省と東京証券取引所は「SX銘柄2024」を公表しました。

「SX」とはサステナビリティ・トランスフォーメーション(Sustainability Transformation)の略です。社会のサステナビリティと企業のサステナビリティを一致させ、そのために必要な経営・事業変革を行い、長期的かつ持続的な企業価値向上を図っていくための取り組みのことを指します。「SX銘柄」とは、SX銘柄評価委員会での審査を経て選定された銘柄で、選ばれた企業は先進的にSXに取り組む企業と言えます。

次に、サステナブル投資で気になる要素である「投資リターンの追求」について見ていきましょう。

下の図は、「SX銘柄2024」の平均株価とTOPIXの値につき、5年間の動きを図で示したものです。

2019年10月1日の値を基準である100として換算すると、「SX銘柄2024」は2024年9月30日時点で178と1.78倍、TOPIXは1.65倍となっています。TOPIXだけを見ても過去5年間で1.65倍になっているものの、SX銘柄はそれを上回る1.78倍のパフォーマンスとなっています。

※過去の一定期間を分析したものであり将来の動向を保証するものではありません。

また、より長い期間の10年間での動きを図で示したものが下図です。

こちらは2014年10月1日の値を基準の100として換算したもので、「SX銘柄2024」は2024年9月30日時点で285と2.85倍、TOPIXは2.01倍となっており、こちらもTOPIXを上回るパフォーマンスとなっています。

※過去の一定期間を分析したものであり将来の動向を保証するものではありません。

近年の株式相場の好調・株価上昇は多くの方がご存知と思います。中でもSX銘柄に該当する銘柄に投資していた場合は、TOPIXをさらに上回る株価上昇であったことが分かります。

このように、SX銘柄への投資は、「投資リターン」の追求と同時に、その投資を通じて持続可能な社会の実現(社会的リターン)に繋げることができる、サステナブル投資の代表例と言えるでしょう。

社会的リターンって何?

次に「社会的リターン」について見ていきます。

具体例としては、日本においては下記のような環境問題や社会課題の解決から得られるベネフィットを指します。

・気候変動が引き起こす異常気象/災害の激甚化
・脱炭素(カーボンニュートラル)をはじめとしたエネルギー問題
・大気汚染・土壌汚染・海洋汚染、水質汚染
・生物多様性
・食品ロス
・長時間労働/生産性の低迷
・少子高齢化
・子どもの貧困都市一極集中/地方の過疎化
・情報リテラシーの格差 等

世界的には、このほか食糧問題、教育や児童労働といった課題解決も取り上げられます。

また、近年日本では、気候変動問題への対応として脱炭素に向けた流れが加速しています。従来の化石エネルギー中心の産業・社会構造を、クリーンエネルギー中心の構造に転換していく、経済社会システム全体の改革(グリーントランスフォーメーション(GX))への取り組みが活発化しています。

さらに生産性の向上を図るものとして、デジタルトランスフォーメーション(DX)の動きもあります。また、前述のSXの潮流も出てきました。

先進的な企業はこうした様々な環境問題や社会課題に立ち向かい、解決の道を切り開こうとしています。

その変革の動きは企業により様々ですが、例えばご自身の興味のある環境問題や社会課題に向けて取り組んでいる企業に投資することで、投資リターンに加えて、持続可能な社会をつくることに参画してみてはいかがでしょうか。

本連載では、次回から環境問題や社会課題の解決を目指して取り組みを行っている企業をご紹介していく予定です。

みなさんご自身に合った企業を見つけ、銘柄選定の一助としていただければと考えています。