株式市場で「電線・ケーブル」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は7.4%高となり、東証株価指数(TOPIX、1.1%安)に対して逆行高となりました(11月15日までの5営業日の騰落)。関連5銘柄とその背景について解説します!
高性能・高品質光ファイバの需要が増加
電線・ケーブル関連の株価が大幅上昇したきっかけは好決算の発表です。データセンタの増設に伴う、電線・ケーブルの需要増加が業績に貢献しました。
データセンタは、大量の電力を消費しながら大容量の情報を扱うことから、冷却性に優れ、細径・軽量・高密度の光ファイバの役割が高まっています。加えて、データセンタの増設により、光ファイバの配線本数とともに、大量の光ファイバを接続する煩雑な作業も増加しています。
また、再生可能エネルギーの普及などもそのインフラを通じ電線・ケーブルの需要拡大につながっているとみられます。電線・ケーブルの世界の市場規模は32年までに3575億4000万ドルと、23年から7割強増えるとの試算もあります。
2024年4~9月期決算発表では、SWCCや古河電気工業などが通期予想を上方修正したことに加え、増配も発表したことなども電線・ケーブル関連株の買いにつながったようです。
ケーブルの細径化と作業性向上へ 【SWCC】
上昇率首位は、電線中堅の「 SWCC(旧昭和電線ホールディングス) 」です。同社は、変形しやすく柔軟な特性を維持しつつ、多数の光ファイバが精密に連結した部材を開発。ケーブルの細径化と配線時の作業性向上を同時に満たすことができるとしています。
11月12日、同社は25年3月期通期予想を上方修正。主力のエネルギー・インフラ事業が想定以上に好調だったことなどを背景に、連結営業利益を前期比60%増の205億円(従来予想は135億円)へ大幅に引き上げました。合わせて、期末配当も70円(従来予想は60円)に引き上げ、年120円配(前期実績は年90円)としました。
データセンタ関連製品が好調【古河電工】
上昇率2位は電線大手の「 古河電気工業 」です。同社は過熱するサーバの冷却に欠かせない「ヒートシンク」や、プリント基板パターンを作る「銅張積層板」の銅の層に使用する「電解銅箔」、ハードディスクドライブに搭載されるディスクである「アルミブランク」などをデータセンタ関連製品として取り揃えています。関連製品の25年度の売上高は23年度の1.5倍になると見込んでいます。
7日に25年3月期の連結業績予想と期末配当を大幅に引き上げると発表。営業利益は前期比3.4倍の380億円と、従来予想250億円から上方修正。期末配当も従来予想の60円(前期実績60円)から90円に引き上げられました。
生産性改善や為替差益計上も業績に寄与
「 住友電気工業 」は、光デバイスや光配線機器などの需要が増加したことを背景に生産性が改善し、24年4~9月期連結決算で情報通信関連事業の営業損益が黒字に転換しました。
「 三ッ星 」は、主力の電線事業の好調に加えて、為替差益の計上などで24年4~9月期の連結純利益が計画を上振れしました。
「 フジクラ 」は、生成AIの普及・拡大を背景としたデータセンタ向け需要の伸びが続くと見込み、25年3月期の連結業績予想および中間・期末の配当予想を引き上げました。
市場規模の拡大で物色にも広がり
総務省の情報通信白書によると、世界のデータセンタの市場規模は、23年に34.1兆円、24年には36.7兆円まで拡大すると予測されています。また、日本の市場規模も、22年に2兆938億円で、27年に4兆1862億円に達すると見込まれています。
市場が拡大するデータセンタに関連しては、半導体関連(『生成AIブームで半導体企業に商機 「エヌビディア」関連株が上昇』)、電気・通信設備工事関連(『データセンター特需がここに! 「電気・通信設備工事」関連株が上昇』)なども投資テーマとして注目されそうです。