企業が稼いだ利益の一部を株主に還元する「配当金」。そこで今回はこれまでフロッギーに登場してくださった億り人のみなさんに、「配当株投資」に関するアンケートを実施! 配当株の見極め方や、気を付けるべきポイントを一緒に学んでいきましょう。
大前提は成長性があるかどうか
配当の源泉は企業の利益です。そのため、配当株を選別するための大前提として、企業の「成長性」を要件としている億り人さんは多いようです。
「利益成長することで配当余力が増えて配当額が増えていくことを期待しており、現時点の配当利回りはそれほど重視していません。現時点では無配や低配当でも、中長期的に安定成長が期待できる事業で、配当も増えていくような会社が理想的です」
と回答したのはアイルさん。高配当であることよりむしろ、無配であっても安定成長を重視している、とのこと。そんなアイルさんが保有している銘柄は、新車ディーラーをM&Aしながら成長してきた「 VTホールディングス 」、その子会社で住宅・建築事業を展開する「 AMGホールディングス 」などです。
「新車ディーラーのM&Aは自動車メーカーの承認も必要で時間がかかるのに対し、後継者難などの工務店は多いので買収が成立しやすく、今後も成長が期待できる。グループ化することで規模の利益が働き、経営効率を高めやすいので、利益面への貢献も大きい」(アイルさん)とのこと。
また、成長性と割安感の両面からバランスを考えて選別するのは弐億貯男さんです。
「私の場合は値上がり益が優先で、配当の優先度はその次です。ですが売上高、利益が伸びることで増配になり、その配当が株価の下支え、底上げにつながりますので、値上がり益狙い、かつ中長期の投資をしていれば、配当金もそれなりに伴ってくると思います」(弐億貯男さん)
そんな弐億貯男さんが配当株で保有している銘柄の1つが、建設機材などの専門商社である「 小野建 」です。
「利益は多少デコボコはあるため、配当に多少の増減があるものの、売上高が伸びていますので、中長期で見たときには増益、増配トレンドを期待しています」(弐億貯男さん)とのこと。
同じように業績回復や増配を見込んで「 北川鉄工所 」「 加藤製作所 」「 三栄コーポレーション 」「 ソマール 」などを配当株として保有しているのはサラリーマン投資家のキクチさんです。
「復配もしくは増配のタイミングで売却を考える」(キクチさん)とのことで、むしろ配当をフックに売却も合わせて考えているのは、キクチさんならではなのかもしれません。
割安感&配当利回りの高さに着目
成長性はもちろん考慮しつつも、割安感や配当利回りの高さなどに着目した投資をしているのがDAIBOUCHOUさんです。そんなDAIBOUCHOUさんが配当株として選んだのは「 GMOフィナンシャルHD 」です。
「GMOフィナンシャルHDは配当性向が50%と高く、予想配当利回りも5%以上と高い(編集部駐:11月8日終値665円、東洋経済予想1株当たり配当金36.91円、予想配当利回り5.55%)。口座開設者増加に伴い、業績成長と増配が期待できるし、株主優待でGMOクリック証券の手数料のキャッシュバックが受けられる。FXやビットコインなど相場状況次第で業績が変わる不安定な業態だが、その分、株価が割安と思える」(DAIBOUCHOUさん)
そのほかにも、財務面での安定感などから独立系自動車シート大手の「
タチエス
」、不動産投資代わりにもなり得る不動産管理会社の「
長栄
」などを配当株として保有しているとのこと。
「元々バリューで買ったものの、ここ数年の保有目的はインカムゲインです」
と語るのは「退場しない」をモットーに長期投資を続ける名古屋の長期投資家(なごちょう)さんです。配当目的で購入したわけではありませんが業績が好調で配当を出し始めたため、結果として配当株として保有しているのが、インタビューでも語ってくれた中央紙器工業です。そのほか、「 USS 」や「 芙蓉総合リース 」なども長期目的で配当株として保有しています。
「高配当」以外に理由はなし
「高配当だった以外は特にない」
そう語るのは80銘柄以上ものテンバガー(10倍株)を見つけた愛鷹さんです。
「メガバンク、商社は最初から配当が目的です。「 三菱UFJ 」「 伊藤忠商事 」「 住友商事 」「 三井物産 」あたりは10年以上保有しています」(愛鷹さん)
重厚長大ながらも業績の拡大に伴い、ここ10年ほど配当を出し増やし続けているのが大手金融機関や大手商社です。業績の好調が続いているからこその高配当株とも言えますね。
株主還元方針の明確性
一方で企業側の「配当に対する姿勢」に着目しているのはかぶ1000さんです。
「企業側が株主還元の方針を明確に示していることや、配当性向が30~40%前後と増配余地があること、配当の継続性が高いと思われることなどを見ています」(かぶ1000さん)
そうした考えのもと、配当株として保有しているのは、「 TOYO TIRE 」や「 リケンNPR 」です。
たとえばTOYO TIREは中期経営計画の中で、投資計画と株主還元策を明確に公表しています。営業キャッシュフローのうち、成長投資50%、設備投資30%、株主還元に20%割り当てるとし、配当性向(当期利益に対する配当金の割合)を30%以上としています。こうした透明性のある情報発信が、配当の安定感につながり、安心して配当株として保有できるのかもしれませんね。
最近加わった「配当株」の新顔とは?
また、配当株として最近購入した「新顔」についても教えてもらいました。
「「 淀川製鋼所 」です。同社は中期経営計画の中で、PBR1倍割れ解消のため配当性向75%に引き上げる方針を示しています。配当が200円(2024年3月期)から309円(2025年3月期)に増配される見込み(会社予想)で、予想配当利回り5.80%(編集部駐:11月8日終値5320円)となる。足元の業績進捗も良く、増益に伴う増配も期待できる」(DAIBOUCHOUさん)
中計の会社方針と、足元の業績好調から新たに加えたようです。
「「 FPG 」です。ビジネスのポートフォリオが変わり、安心して保有できるようになった」
と教えてくれたのは立川一さん。同社は2011年に航空機リースを、2013年に国内不動産ファンド事業、2022年には海外不動産ファンド事業を開始。足元では、リースファンド事業と国内不動産ファンド事業が主力となり、安定的な収益源を確保しています。配当株として持ちづけるにはこうした安定感も重要かもしれません。
避けているのは「配当の持続性」がない銘柄
逆に「配当株」として避けたい銘柄の特徴についても教えていただきました。
「「特殊な事情で一時的に高配当になっている銘柄」や「近いうちに減配する可能性が高いと思われる銘柄(業績が頭打ちになりそう、かつ既に配当性向が高過ぎるなど)」は気をつけるようにしています」
と話すのはこの記事で信用取引についてわかりやすく教えてくれたTyunさん。高配当と一言で言っても、その中身をしっかりと確認し、それが持続するものなのかどうかをチェックする必要があるそうです。
また、同様に配当を裏付ける業績が大きく変動する銘柄は避けているというのが、アイルさんや響煇さん、はっしゃんさんです。
「景気敏感株など業績の変動が大きい会社、配当性向が高過ぎて配当の維持が難しそうな会社、業績の見通しが不透明で減配のリスクが高そうな会社は避けています」(アイルさん)
「大手商社株など業績が世界経済や円安と連動するシクリカル銘柄は避けています」(響煇さん)
「配当が持続可能でないものは避けるようにしています。具体的には、一時的な特需によって業績が向上したものやアクティビストによる圧力によるものなどです」(はっしゃんさん)
次回は「気持ち編」!
いかがでしたでしょうか。一言で配当株と言っても、人によって着眼点が異なったり、売り時も異なるようです。高い配当金の水準ばかり気になりがちですが、きちんとその企業の成長性や持続性も考慮したうえで、楽しく配当株投資を続けてみてはいかがでしょうか。次回は配当株を考えるうえでの「気持ち」や「向き合い方」について紐解いていきます! お楽しみに。