値上がりだけでなく、配当金を目的に投資をする「配当株投資」。前回に引き続き、億り人のみなさんへのアンケートをもとに、配当株への向き合い方や気を付けるべき点などを一緒に学んでいきましょう!
億り人「配当株アンケート」~銘柄選び編~を読む
目的はインカムゲインの最大化
「色んな人が居るでしょうけど、今の自分はインカムゲインの最大化を目的としているので、最優先に考えています」(なごちょうさん)
配当株を保有するうえで、最大のメリットであるインカムゲインを目的にする人は多いのではないでしょうか。年間の手取り配当400万円を目指す名古屋の長期投資家(なごちょう)さんは、今は配当の最大化を考えているとのこと。ただ、気を付けるべき点もあるとか。
「買った時より10年後には配当が倍になっていそうな銘柄を買うように心掛けています。なので、事業環境、財務状態と増配余力、景気が悪化した時の耐性などを考えて買っています。配当を貰うととても嬉しいし、配当を沢山貰いたい気持ちも分かります。でも、配当だけで買うと、全然増えなかったり、それどころか減配する事もあるので、目先の配当ではなく、減配しなくて大きく増配しそうな銘柄を買う事が肝心だと思います」(なごちょうさん)
配当株こそ「値上がり」狙い
また、全く違った「狙い」をもって配当株を保有している億り人さんも。
「私自身は、「配当株」は基本的に値上がり益狙いです。更なる増配、自社株買いなど株主還元改善に伴い、株価が上昇する事を狙っています。ある程度株主還元改善が完了し、株価上昇が落ち着くまでが勝負だと思います」(DAIBOUCHOUさん)
そう教えてくれたのはDAIBOUCHOUさんです。配当を狙っている株なのに値上がり狙い? と思うかもしれませんが、「増配」「自社株買い」を株主還元強化の一環と捉えれば、それをきっかけに株価が上昇するというストーリーは自然な流れなのかもしれません。
一方で、JACKさんは値上がり目的ではありませんが、あくまでも配当株は「ポートフォリオの1つ」にすぎないと捉えているとのことです。
「MRFやら使わない資金は、お金を生まないから、配当株に投資。あくまでも株式投資の中でのポートフォリオの1つ。メインではない。私の場合」(JACKさん)
「配当」という分かりやすいインカムゲインがあると、それにばかり注目がいきがちですが、資産運用全体でとらえた場合、「お金を生まないものの代替資産」として配当株を考える向きもあることが分かります。人によって配当株との向き合い方や考え方は十人十色と言えるでしょう。
配当株を選ぶときに気を付けること3つ
アンケートで「配当株を選ぶときに気を付けていることはなんですか」ということもお聞きしました。回答として主に挙がったのは、以下の3つでした。
①好業績の逆回転
②減配リスク
③投資額
気を付けること①好業績の逆回転
「成熟した大企業が中心で、円安、コロナ明け、資源などの市況高と価格転嫁で景況感が良くて利益が出やすかった事業環境があったと思います。銀行も金利上昇期待で株価が上がった。その結果、高配当株にありがちなセクター、銘柄の業績、株価が好調で、高配当株が人気になったのだと思いますが、逆回転もありえると思います」(DAIBOUCHOUさん)
たしかに足元のマクロ状況を確認すると、円安や資源高がここ数年で進行していることが分かります。それに支えられて好業績となっている業種では、業績悪化による減配や株価の急落などには注意が必要ですね。
また、弐億貯男さんからは配当株であったとしても、損切りが大切であることについてコメントがありました。
「配当狙いだとしても投資先の企業の業績のチェックは怠らないようにして業績が悪化したら損切りをするように心がけています。配当を得られても株価の値下がりで損をしたら意味がないのと、業績が悪化すると減配のリスクもあるからです」(弐億貯男さん)
配当金が出ているうちは、株価下落をしても表面的には利回りが上がって見えるため、なかなか売却しにくいものです。ただ、将来の減配につながるのであれば、しっかりと業績を見据えたうえで、損切りも辞さずに考えていきたいところです。
気を付けること②減配リスク
さきほどの弐億貯男さんのコメントにもありましたが、気を付けることの2つ目として押さえておきたいのが「減配リスク」です。配当金そのものが減ってしまっては、「配当株」という特徴すらなくなってしまい、保有する理由がなくなってしまいます。
さらに減配リスクが低い銘柄であったとしても、気を付けたいポイントがあるそうです。
「減配リスクが低いことが一番重要ですが、配当株でも業績維持タイプか安定成長が期待できるタイプかは意識しています。私は成長株の方が好みなので、業績維持タイプへの投資は最小限にとどめています」(アイルさん)
減配リスクが低いということは、ある程度業績は底堅い企業ということが言えますが、その業績が成長しているのか、なんとかキープしている状態なのかでは大きな差があります。株価の成長も加味するならば、アイルさんのように保有している配当株が「業績維持タイプ」なのか「安定成長タイプ」なのかは把握しておきたいポイントと言えるでしょう。
ただ、どうしても業績の見通しが外れてしまうときはあります。そんな時のヒントを教えてくれたのはかぶ1000さんです。
「配当はあくまでおまけ程度で、基本はキャピタルゲインを優先に考える。減配しても株価の下落しにくい銘柄(PBRが低い、自社株買いをしている企業)を選ぶとリスクが減ると思う」(かぶ1000さん)
仮に業績が停滞したり落ち込んでしまって、減配したとしても、株価の下落が最小限に抑えられれば、資産を守ることができます。ディフェンシブな面で強い銘柄かどうかというポイントもチェックしておきたいですね。
気を付けること③投資額
最後に気を付けたいポイントは「投資額」です。
「資産額に応じて、1銘柄に投下する金額は決めてます。それは一企業に資産を傾けすぎるリスクを避けるためです」(響煇さん)
いくら配当株として魅力的な銘柄があっても、どんなに自分が気を付けていても、世界景気の悪化や不祥事などで急速に株価が下落する可能性はあります。そうした万が一の局面でもリスクを最小限にするために、一極集中投資は避けていきたいですね。
これから「配当株」を買う人へ
アンケートの最後に、これから「配当株」を買おうと思っている読者に向けたメッセージもお願いしました。
「高配当だから長期保有、ガチホ(編集部注:ガチ(本気)でホールド(保有)するの略)だと決めつけず、業績も見ないといけない」(DAIBOUCHOUさん)
「ここ数年は高配当株ブームが続いていますが、なぜ配当株に投資するのかはっきりさせた方が良いと思います」(アイルさん)
DAIBOUCHOUさん、アイルさんが言うように、株式投資に絶対はありません。みんなが持っている配当株だからーーと情報を鵜呑みにせずに、定期的に銘柄の「健康診断」は欠かさずに行いましょう。
また、はっしゃんさんからはこんな素敵なアドバイスもいただきました。
「大前提として、これから日本や世界をよくしてくれる会社であることを重視しています。そのうえで、成長余地があって、配当も増えればよい。その会社が大きくなるほど、明るい未来が開けていく。 そんな風に思える会社に投資したいですね」(はっしゃんさん)
配当は企業の利益の一部を還元して得られるものです。その利益の源泉たる企業の事業活動そのものにも目を配り、社会全体を良くする企業に投資をするーーという気持ちは、忘れてはならない考え方の1つかもしれませんね。
いかがでしたでしょうか。億り人さんたちの「配当株」に対する考え方、銘柄の選び方についてご紹介しました。少しでもみなさまの「配当株」投資の参考になれば幸いです。