地熱からエネルギーを! 政府の事業化支援でビジネスチャンス

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世界有数の火山国である日本にとって地熱発電は優位性を発揮できる分野として注目が集まっています。国内で地熱発電所を運営するだけでなく、海外で事業経験の蓄積を進める中部電力を中心に各社の動向をご紹介します。

政府が11月にまとめた総合経済対策に地熱発電の事業化支援が盛り込まれました。地熱発電は火山の近くの地下で発生する高温の蒸気や熱水でタービン発電機を回し、発電する方法です。同じく自然のエネルギーを使う太陽光発電や風力発電と異なり、天候に左右されないため発電量の安定性などが魅力といえます。

地熱発電のメリット
・昼夜・天候を問わず24時間発電が可能
・自国の資源を活用できる
・発電後の熱水を使ったハウス栽培や養殖などの地域共生

一方、調査にかかる多額の費用や開発の難しさなど課題もあります。そこで政府は地熱発電の有望な開発地域の地下構造を調べる地表調査や、実際に地面を掘って温度や圧力を確認する掘削調査を支援し、事業化につなげていく方針です。政府は2030年に電源構成のうち、地熱発電の比率を0.3%から1%程度に引き上げる目標を掲げています。地熱発電は発電後の熱水を地元でのハウス栽培や養殖事業などに再利用できるため、地方創生にもつなげたいようです。

中部電力、海外で地熱の知見を蓄積

中部電力 」グループのシーエナジーは東芝エネルギーシステムズとタッグを組み、岐阜県高山市の奥飛騨温泉郷の豊富な地熱資源を利用した「奥飛騨温泉郷 中尾地熱発電所」を運営しています。発電電力量は約4000世帯分(一般家庭)といわれています。

2022年にはカナダの地熱発電のスタートアップであるエバー・テクノロジーズ(Eavor Technologies )に出資し、海外での知見も取り入れ技術開発を進めてきました。エバー社の持つ技術は地下にループ(導管)を設置し、その中を流れる水を介して地下の熱を取り出すため、蒸気や熱水が乏しい場所でも発電が可能なことが特徴です。そのため地熱発電の課題の1つとなっている掘削後の開発中止リスクの低減が期待できます。

2023年にはエバー社がドイツ・バイエルン州で進める地熱発電事業に中部電力も出資を決めました。海外での経験やノウハウの蓄積が今後の中部電力の地熱事業に役立ちそうです。

発電用タービンなどにもビジネスチャンス

国内の地熱発電所は火山や地熱帯が多い東北地方や九州地方に集中しています。「 九州電力 」の八丁原地熱発電所(大分県)のほか、「 東北電力 」が運用するなかには商用運転を開始して50年以上の岩手県の松川地熱発電所などがあります。新しい技術の活用で候補地が今後広がる可能性もありそうです。

そのほか、地熱発電用タービンを手掛ける「 富士電機 」や「 三菱重工業 」なども需要増加の恩恵が期待されています。「 大同特殊鋼 」は従来よりも深い地層でも腐食に耐えられる新素材の地熱発電専用の部品を開発しています。

政府の支援拡大が見込める国内だけでなく、脱炭素の流れもあり世界的に地熱発電への注目度は高まっており、商機が広がる可能性があります。