ヨウ素が決め手!? 「ペロブスカイト太陽電池」関連株が上昇

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株式市場で「ペロブスカイト太陽電池」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は3.3%と、東証株価指数(TOPIX、0.6%安)に対して逆行高となりました(11月29日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

経産省が推進戦略と政府目標を発表

ペロブスカイト太陽電池関連株が買われたきっかけは、経済産業省による推進戦略と政府目標の発表です。

11月26日、経産省は、次世代型太陽電池戦略案に関する官民協議会で、ペロブスカイト太陽電池の需要創出と産業基盤の構築方針を示しました。

ペロブスカイト太陽電池は、薄くて軽くて柔軟性があり、従来の太陽光パネルに比べて、厚みは20分の1、重さは10分の1、簡単に曲げられるという特性があります。このため、壁や重いものを乗せられない屋根などにも設置が可能です。

2009年に初めて作製された当時の発電効率は3~4%でしたが、世界的に研究開発が加速したことで足元では26.7%まで向上しています。

今回の経産省の発表では、2025年度から海外展開を視野に国内市場を立ち上げ、40年には国内で約20ギガ(ギガは10億)ワット、海外では500ギガワット以上の導入を目指す方針を掲げました。

ペロブスカイト太陽電池の主原料はヨウ素であるため、市場拡大に伴う需要増加期待を背景に、ヨウ素に関連する企業の株価が大きく上昇しました。

ヨウ素シェアトップ【伊勢化学工業】

上昇率首位はヨウ素最大手の伊勢化学工業です。ヨウ素の国内シェアは45%、世界シェアは15%に達しています。ヨウ素はX線診断の造影剤などの医療分野に加え、農薬や液晶用偏光フィルム、自動車のシートベルト・エアバッグなどの素材の安定剤などに幅広い用途に使われています。

ペロブスカイト太陽電池という新たな用途が誕生し将来的に需要が拡大すれば、シェアトップの同社が恩恵を享受すると期待されます。

世界のヨウ素メジャーを目指す【K&Oエナジー】

上昇率2位はヨウ素大手のK&Oエナジーグループ 」です。主力の天然ガス事業に次ぐ第2の事業としてヨウ素事業を展開しており、国内シェアは15%、世界シェア5%を占めます。長期経営ビジョン「VISION2030」では、世界のヨウ素メジャーを目指して国内外でヨウ素を増産し30年のヨウ素販売量目標を年2000トン(23年実績は年1651トン)としています。

量産や事業化を目指すほか、助成対象事業者に採択

ホシデンは、新規事業としてペロブスカイト太陽電池へ参入し、23年度後半から量産を前提としたサンプルを開発しており24年度後半の量産を目指しています。

積水化学工業は、ペロブスカイト太陽電池の技術開発と実証実験、連携を加速し25年の事業化を目指しています。

リコーは、東京都がペロブスカイト太陽電池の早期実用化を目的とした「次世代型ソーラーセル社会実装推進事業」の助成対象事業者に採択されました。

自治体で導入の動きも

9月末、福岡市は30年度までに福岡ドーム(みずほPayPayドーム福岡)の屋根に「ペロブスカイト太陽電池」の設置を目指すと公表。自治体でも導入の動きが出始めています。

ペロブスカイト太陽電池の主原料であるヨウ素は、日本の産出量がチリに次ぐ世界第2位の位置にあり、自給自足が可能です。再生可能エネルギーの拡大のみならず、経済安全保障の面でも意義が大きいと思われます。

今回、新たに政府が導入目標を掲げたことで普及に弾みがつくとみられ、株式市場でも、投資テーマとして注目度は高まっていきそうです(『軽くて曲がる太陽電池 「ペロブスカイト」関連株が上昇)