電力を宇宙から! 「宇宙太陽光発電」関連株が上昇

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株式市場で「宇宙太陽光発電」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は3.9%と、東証株価指数(TOPIX、1.7%高)を上回りました(12月6日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します! 

株価上昇の裏にもう一つの投資テーマ

この週は、フジクラをはじめとした電線関連株が、証券会社による目標株価の引き上げなどを手掛かりに人気化。また、IHIや三菱重工業など防衛関連株が、外国研究所による防衛産業に関するポジティブな研究結果の発表を受けて買いを集めました。

しかし、これらの銘柄には、もう一つの投資テーマがありそうです。それは「宇宙太陽光発電」です。この週、宇宙太陽光発電について今後の展開のカギを握る重要な実験が行われました。

実証実験に成功

宇宙太陽光発電とは、宇宙空間に太陽光パネルを浮かべ、発電した電力を電波で地球に送る技術です。夜間や悪天候でも発電できるため、安定した電力の供給が可能。二酸化炭素(CO2)が発生せず、脱炭素化の流れで需要の拡大が見込まれます。

12月4日、経済産業省から委託された一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構(JSS)が、上空5〜7キロメートルを飛ぶ航空機から電波を送り、地上で受信するという実験に成功しました。今回の実験成功を受け、2025年度にも、宇宙に打ち上げた人工衛星から地上への照射を確かめる見通しです。

主力の光ファイバーを活用【フジクラ】

上昇率首位の「 フジクラ 」は宇宙太陽光発電システムでの活用が期待されるファイバーレーザーを開発しています。ファイバーレーザーは光ファイバーを活用した製品で、医療や半導体製造などでも使われています。

宇宙太陽光発電が実用化されれば、新たな事業の柱になる可能性を秘めています。主力製品である光ファイバーも、AI(人工知能)需要の拡大によるデータセンター向けなどの成長が期待されています。

20年以上も研究に携わる【IHI

上昇率2位の「 IHI 」は20年間以上、宇宙太陽光発電の各種実験装置の開発を手掛けています。JSSが実施した太陽光発電の無線送受電技術の研究開発事業にも参画しました。実験での豊富な経験を生かして、将来的な事業化が見込まれます。

成長事業と位置付ける航空エンジンやロケット分野と双璧をなす事業になれば、業績への大きな貢献が期待できます。 

多くの企業が開発に注力

三菱重工業 」は宇宙太陽光発電システムの無線送電技術の地上実証試験に成功しています。「 日本電信電話(NTT) 」とも共同で地上でのエネルギー伝送実験をするなど、実用化に取り組んでいます。

三菱電機 」は2000年ごろから、宇宙太陽光発電での活用が期待される電力をマイクロ波に変換して送電する技術の開発などに取り組んでいます。経産省や宇宙航空研究開発機構(JAXA)などによる研究に参画し、送電の実証実験にも成功しています。

豊田合成 」はマイクロ波での電力供給システムを開発するスタートアップなどに出資しています。宇宙太陽光発電の実用化により、将来的な豊田合成の業績への寄与が期待できます。

実用化には課題有るも日本企業の活躍に期待

宇宙太陽光発電は、1960年代に米国で提唱されました。その後、1980年代には京大が世界初となる宇宙空間での実証を実施。2023年には、米カリフォルニア工科大学の研究チームが、宇宙空間の衛星から地上にエネルギーを送る実験に成功したと発表するなど、主要各国でも実現に向けた大型の計画が進んでいます。

実用化には技術・コストなど多くの課題がありますが、日本企業の技術力が活かされることが期待されます。また、「宇宙」に関連しては、ロケット、デブリ除去なども投資テーマとして市場で話題(『8兆円マーケットへ 「宇宙開発」関連株が上昇)となっています。企業の発表やニュースなどにより関連銘柄に注目が集まる場面もありそうです。