マーケットの「温度感」がわかる連載「カエル先生のマーケットハイライト」。2024年も残りあとわずか! ということで今年の相場を振り返りましょう。
世界的なインフレの波を受けながらも、賃上げや価格改定など物価上昇の好循環が少しずつ進み、17年ぶりに「金利ある世界」に戻った日本。日経平均株価の最高値更新や過去最大の下げ幅の記録など、変化の大きかった2024年を振り返りながら、2025年の相場を見通していきましょう。
2024年の日本株市場
11月29日の日経平均株価は3万8208円で、昨年末に比べて4743円高となりました。2024年の日本株市場は、年初から米株高や円安が好感され、海外投資家の積極的な買いからスタートしました。日銀がマイナス金利を解除し利上げに踏み切り、デフレ脱却への期待感が高まったことや半導体関連株の上昇が日経平均株価を押し上げ、史上初の4万円を突破する場面もありました。
それでは、2つの視点から2024年の日本株を動かした要因と今後の影響について見ていきましょう。
②トランプ次期大統領の経済政策
①日米の金融政策の転換
2024年の日本株を動かした要因の1つには、日米の金融政策の転換が挙げられます。金融政策の正常化に向けて日本では「利上げ」、米国では「利下げ」がいつ行われるのか、そのタイミングが意識された相場展開となりました。
国内では、大企業を中心に賃上げが進んだことなどから、2024年3月に日銀がマイナス金利の解除を発表しました。ただ、日銀の植田総裁は「当面緩和的な金融環境は継続する」と発言。日米の金利差から円安が進み、6月28日にはドル円が一時161円台と、約37年半ぶりの円安水準をつけました。
その後、米FRBが9月に利下げに踏み切るとの観測が広がると、米国の主要株価指数は最高値を更新し、その流れを受けて日本株も上昇。7月11日の日経平均株価の終値は4万2224円2銭と、終値としての史上最高値を3日連続で更新しました。
7月31日には日銀がややサプライズ的に政策金利を0.25%程度に引き上げることを決定し、急速に円高が進行しました。また、雇用統計の結果から米景気の後退が懸念され、日経平均株価は大幅下落。8月5日の終値は前週末比4451円安の3万1458円と、過去最大の下げ幅を記録しました。
売られすぎによる日本株の買い戻しが進む中、9月の米FOMCでは4年半ぶりに0.5%の利下げを決定。記録的なインフレを抑えこむため、急ピッチで利上げを続けてきた米金融政策は大きな転換点を迎えました。また、今後の利下げは緩やかなペースになるとの見方から再びドル高・円安が進み、日本株市場は輸出関連株を中心に上昇しました。
市場では2025年も日本で利上げ、米国で利下げが行われると予想されており、長期的には円高・ドル安基調が進みそうです。輸出関連企業の多い日本株は、円高により上値の重い局面も予想されますが、賃上げによる消費回復などを背景に国内景気が堅調に推移すれば、内需関連銘柄による下支えも期待できそうです。
なお、業績と株価の関係を見ると、足元の業績が順調に推移しており(今期経常利益の進捗率が高い)、先行きの業績も期待できる(来期予想経常増益率が高い)銘柄の株価パフォーマンスは高い傾向があります。以下では、関連銘柄をご紹介します。来期も好業績が予想される銘柄はチェックしておきたいですね。
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日本ハム
三菱ガス化学
アステラス製薬
セガサミーHD
TDK
ゼンショーHD
MS&ADインシュアランスグループHD
TBSホールディングス
東映
日本空港ビルデング
②トランプ次期大統領の経済政策
11月のアメリカ大統領選挙では、共和党のトランプ氏が返り咲き、大統領、上院、下院すべて共和党が勝利をおさめる「トリプルレッド」を達成したことで、政策を遂行しやすい体制が整いました。
トランプ氏は、法人税率の引き下げや規制緩和など企業寄りの政策を掲げていて、米経済が活性化すると期待されています。とくに規制緩和については大統領令で実施可能なため、就任後早い段階で実施される公算が大きく、金融や石油・天然ガス関連、ヘルスケア企業などの業績を押し上げる可能性があります。
一方、関税や移民政策が原材料高や人件費増につながり、インフレが再燃する可能性には注意が必要です。インフレが再燃すると米FRBが利下げを行いにくくなるため、利下げの見通しも変更を余儀なくされるかもしれません。
米国景気の先行きに関しては、トランプ氏の掲げる減税や規制緩和といった「プラス効果」と、関税や移民政策の「マイナス効果」の綱引きになると見られます。ただ、利下げ効果などを支えに堅調な景気が続けば、米国での売上高比率の高い日本企業は業績面で恩恵を受ける可能性が高まりそうです。
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住友林業
東洋水産
信越化学工業
テルモ
第一三共
UACJ
フジクラ
リクルートHD
キヤノン
カプコン
トランプ氏は2025年1月に大統領に就任予定ですが、引き続き、同氏の発言には注目しておきたいですね。
新NISAの口座開設件数は300万件を突破!
2024年にスタートした新NISA(少額投資非課税制度)。日本証券業協会の証券会社10社を対象とした調査によると、2024年1~9月における新NISAの新規口座開設件数は約303万件となりました。2023年1~9月比では1.9倍に増加し、個人投資家の裾野が広がっていることが伺えます。
国内では、引き続き企業の資本効率改善に向けて、増配など株主還元を強化する流れが続くことが予想され、NISAと相性の良い高配当利回り銘柄などにも注目が集まりそうです。
2024年にNISA口座を活用した方も、しなかった方も、2025年はまずNISA口座を活用するところから始めてみてはいかがでしょうか。