入れ替えで強くなるJPXプライム150

あなたの知らない「インデックスの世界」/ おせちーず須山 奈津希

稼ぐ力が高い日本株を集めた指数 「JPXプライム150」を読む

前回、稼ぐ力に着目した日本株指数であるJPXプライム150をご紹介しました。今回は構成銘柄を徹底解剖します。

150銘柄をブレイクダウン

JPXプライム150に採用されている銘柄は、日本取引所グループのwebsiteで公開されています。

銘柄入替は年に1度、8月にのみ実施されます。2024年8月の銘柄入替後の採用銘柄を眺めてみましょう。

東証33業種分類による銘柄数を集計してみました。またそれぞれの業種ごとにエクイティスプレッド(ES)基準で採用か、PBR基準で採用かも公表されているので集計してみました。また、業種ごとのウエイトも集計しています。
33業種中12の業種は、採用銘柄数がありません。JPXプライム150はエクイティスプレッドとPBRの基準でそれぞれ75銘柄を採用するルールですが、どちらも75銘柄と限定すると、業種は絞り込まれてしまうのかもしれません。

カエル先生の一言

「エクイティスプレッド」とは当該企業の収益性と投資家が期待するリターンの差のことで、具体的には「ROEー株主資本コスト」で計算されます。これが高いほど、投資対象として魅力的であることを表します。

「稼ぐ力」に着目した株式指数がJPXプライム150ですが、言い換えれば1銘柄も採用されていない業種は、JPXプライム150が定める基準で判定すると「稼ぐ力」が相対的に弱いということになるのかもしれません。

銘柄数で目立ったのは電気機器と情報・通信業です。たった2業種の合計で銘柄数では全体の約3分の1を占めます。電気機器は全体に占めるウエイトも約4分の1と非常に高いです。一方、エクイティスプレッド基準では情報・通信業の銘柄数が多く、PBRでは電気機器の方が多いという特徴も見えます。

JPXプライム150採用銘柄のうち、日経平均株価にも採用されている銘柄を調べると、150銘柄中95銘柄が該当しました。日経平均株価は銘柄選定時にセクターバランスを考慮しますが、JPXプライム150は業種を問いません。よって日経平均株価は「日本を代表する225銘柄」を採用していますが、銘柄選定ルールの違いにより、JPXプライム150でも採用されている銘柄はそれほど多くない結果になっています。

2024年8月の定期銘柄入替結果

JPXプライム150は2023年夏から運用されていて、2024年8月に初めての定期銘柄入替が実施されました。入替られた銘柄を確認しましょう。追加銘柄については、2つの採用基準のうちどちらで採用されたかを表に加えました。株式指数のルールに基づいた銘柄選定をした結果とはいえ、150銘柄のうち20銘柄程度が入れ替わるのはかなり多いように感じます。ただし、銘柄入替はまだ1度しか実施されていません。1回で評価してはいけないと思いますので、2025年以降の定期入替結果も検証したいところです。
追加された銘柄には総合商社、損害保険会社、不動産業が目立ちます。これらの銘柄はPBRの基準でランクインしています。また、「 トヨタ自動車 」もPBRの基準で追加されました。PBR基準はエクイティスプレッド基準により選定された銘柄を除き、2期連続でPBRが1倍を超えているという選定条件があります。

日本株には名は通っていてもPBRが1倍割れしている銘柄が珍しくありません。銀行業や証券業には該当銘柄が多く、1銘柄も採用されていない理由だと想像されます。一方、銘柄入替で採用された総合商社( 豊田通商住友商事三菱商事 )、損害保険会社( SOMPO HDMS&ADインシュアランスGHD )、不動産業( 三井不動産三菱地所住友不動産 )などはPBRに改善が見られたということでしょう。

エクイティスプレッド基準で採用された銘柄は時価総額がそれほど大きくない銘柄が散見されます。JPXプライム150は時価総額上位500位以内であることが採用基準です。TOPIX500はCore30+Large70+Mid400の総称です。Core30とLarge70を足した100銘柄は「大型株」と呼ばれます。JPXプライム150は大型株以外であるMid400からも採用されますので決して大型ではない銘柄も、JPXプライム150では採用される可能性があります。
除外された銘柄には海運業が目立ちます。2024年8月の銘柄入替で海運業はゼロになりました。除外された海運業3社は、2024年3月期末の1株あたり純資産が大きく上昇した結果、株価÷1株あたり純資産で算出するPBRが低くなったことが除外の要因と想像されます。

なお、JPXプライム150は、定期銘柄入替以外での除外は臨時補充をしませんが、定期入替で150銘柄にするため、除外銘柄よりより追加銘柄の方が多くなっています。

パフォーマンスを他の株式指数と比較

前回、JPXプライム150はTOPIXの残念なところに配慮した印象を受ける株式指数と言及しました。稼ぐ力に着目した銘柄選定をした結果、パフォーマンスはどうなのかを確認しましょう。JPXプライム150は2023年7月に算出がスタートし、基準日も2023年5月26日ですから、歴史が浅いです。さしあたり比較は1年で実施してみました。春から夏にかけてはTOPIXに劣後して推移していましたが、2024年8月上旬の大きな下落以降はJPXプライム150の方が優位です。銘柄入替は8月末でした。9月以降もJPXプライム150の方が優位ですので、銘柄選定効果はまずまずありそうです。

JPXプライム150の「使い方」

JPXプライム150の「使い方」は2つあると考えています。1つはJPXプライム150に連動したETFを買って指数のリターンを直接得ることです。たとえば、iFreeETF JPXプライム150(2017)や、NEXT FUNDS JPXプライム150指数連動型上場投信(159A)があります(日興フロッギーからは購入できません)。

イージートレードにログインしてiFreeETF JPXプライム150を見る
イージートレードにログインしてNEXT FUNDS JPXプライム150指数連動型上場投信を見る

もう1つは、個別株投資の参考にすることです。「稼ぐ力」に着目して銘柄選定をしているのですから、採用銘柄を個別株投資の候補にするという使い方です。ただし、選定結果はあくまでも過去の結果に基づくものです。株価は将来を見据えるものですので、JPXプライム150採用銘柄はあくまでも候補とし、将来性も考慮したうえで投資の是非を決定した方がいいでしょう。