地の利を生かせ! 九州インバウンド銘柄

世界は株式会社でできている/ 本城 直季日興フロッギー編集部白根ゆたんぽ

タカシはいま、自社のウェブメディアで九州企業の特集記事を執筆中。熊本地震という悲しい出来事にも負けず、インバウンドの伸びとともに成長を続ける企業を応援しようと、毎日遅くまで仕事に没頭している。夜食を差し入れたユイは、その熱意につられて、いつもの長いおしゃべりに付き合うことに……。

ユイ

遅くまでお疲れ様――! はい、肉まんと牛乳。最近、いつも遅くまで残ってるって聞いたから、差し入れだよ。

タカシ

さすが! 気が利くなあ。


何この、「がまだせ!」って貼り紙……。


ああ、これは熊本弁で「がんばれ!」って意味だよ。熊本は大地震が起きて、ずいぶん被害が出たでしょ? その後に九州のエリア担当になって現地でヒヤリングをしていたら、あったかい人が多くて、なんだか応援したくなっちゃった。そこからずっと準備してきた九州企業の特集記事が、ようやく形になりそうなんだ。


コツコツ派のタカシ君らしい話ね。いま、九州企業の業績はどうなの?


震災後に一時落ち込んだけど、上場企業は持ち直しているよ。業績を支えているのは、アジアからの観光客。九州に来る外国人観光客の数は、2017年1月~8月の累計が300万人を突破。1ヵ月で40万人以上が訪日しているんだ。韓国からクルーズ船でやって来る人が突出して多いというから、アジアに近い地の利が生きているんだね。


九州の観光地といえば、長崎のハウステンボス! インバウンドの波に乗っていそうね。


まさにそう。ハウステンボスは、2010年に「 エイチ・アイ・エス 」の子会社となって以来、快進撃を続けている。辣腕家として名高いエイチ・アイ・エスの澤田秀雄会長兼社長が、東洋一の「観光ビジネス都市」を掲げてユニークなコンテンツを増やし、みるみるうちに入場客が増えたんだ。世界最大の電飾を使用した「光の王国」、日本一の「VRテーマパーク」、接客や掃除といったサービスすべてをロボットが行う「変なホテル」など、話題にはこと欠かない。キャッチコピーは「さあ、未来を旅しよう。」。オランダの風景だけを売りにしていた以前とは、まったく違うテーマパークに生まれ変わった。これからも、世界一生産性の高い植物工場の建設計画などが控えていて、目が離せないな。


新しいテクノロジーを取り入れて、園内を「実験の場」にしているのが面白い。外国人観光客が楽しみながら日本の技術を知るって、いいことね。


他に九州のインバウンド系で僕が気になるのは、福岡県北九州市に本社を置く「 TOTO 」。なんといってもウォシュレットは、外国人観光客が日本で感動するものの1つ。日本が生んだ最高の発明品、ウォシュレットのないトイレなんて、僕には想像できない~!


ハイハイ、わかったから落ち着いて(笑)。TOTOはトイレでよく見るロゴね。衛生陶器で国内6割のシェアをもつ最大手。


2017年3月期決算は、地道に売り上げと営業利益を伸ばして、過去最高を更新。この堅実な感じ、好みなんだよね~。売り上げで目立つのが、海外でのウォシュレットの伸び。富裕層の多い中国沿岸部では、軒並み2ケタ成長を達成している。日本に来てウォシュレットの心地よさを知った富裕層が、自分の家に導入しているんだ。2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、TOTOが水回りのオフィシャルパートナーとなっている。ここでさらに、世界各地から来た人たちが「日本のトイレ、すごい!」って思うはず。将来はどんな国に行っても、TOTOのウォッシュレットが使えるようになってるかも……!

「おなじみの湿布」の意外な歴史


インバウンドといえば、「爆買い」効果で潤う会社も結構あるはず。


高級品の「爆買い」バブルは終わったといわれているけど、中国人観光客を中心に、安全で質の高い日本製品がほしいというニーズは根強くある。たとえば、医薬品。2014年に、中国のインターネットメディアが「日本の12の神薬」を取り上げて話題になった。その中の1つ、「 久光製薬 」の「サロンパス」は日本人には当たり前といっていい湿布薬だけど、海外から見ると「すっきり感」「かぶれない」という使い心地に感動するみたい。


久光製薬って、九州の会社なの?


バリバリ九州。本社は佐賀県鳥栖市だよ。歴史は長くて、1847年に薬業を始め、サロンパスが生まれたのは戦前の1934年。当時、黒い粘着剤を使って臭いも強かった湿布のイメージを180度変えて、「真っ白でメントール臭がさわやかな湿布」を開発。炭鉱が多かった地元九州で、仕事帰りの銭湯の客に貼って宣伝したらしい。いまや、サロンパスは世界185ヵ国以上に商標登録され、鎮痛消炎貼付剤の世界小売売上額No.1ブランドにも認定されている。


最初にサロンパスを使ったのは、炭鉱の労働者たち。九州らしいエピソードね。

九州の「足」として欠かせない企業


九州といえば、「 JR九州 」が2016年秋に上場したよね。乗客が少ない地方の鉄道会社の快挙として、話題になったわ。


ホント、あの上場はうれしかったな。JR九州は、本州に比べてどうしても条件が不利。その弱点をカバーするために、民営化当初から不動産やホテルといった新規事業の開発に努力してきて、それがようやく実ったんだ。地域住民の人口が減る中、インバウンドももちろん重要。外国人観光客向けに、インターネットで購入できる乗り放題のチケット「JR Kyushu Rail Pass」を発売したり、国・地域ごとの情報発信にも力を入れているよ。


JR九州といえば、個性的な列車をたくさん走らせているイメージ。


「ななつ星in九州」とか、こだわり抜いた「D&S(デザイン&ストーリー)列車」はすばらしいよね。九州各地の風景や食材をテーマにして、質の高さを追求した列車は、外国人観光客に大うけ。特急「ゆふいんの森」なんて、乗客の7割が外国人というほどの人気だ。地方の豊かさを列車でじっくり味わってもらうって、最高のおもてなしだよね!


九州の足といえば、「 スターフライヤー 」も福岡の会社よね。


うん、北九州市の小倉が本社。


大手より安いのに、革張りの広いシートで全席ディスプレイ付き、ドリンクも提供してくれて、サービスで引けを取らない。出張のときによく使うけど、業績はどうなの?


2002年に設立されて以来、スターフライヤーは低価格とサービスの両方を実現する「感動のあるエアライン」をうたってきた。順調に就航路線を伸ばしていたけど、拡大路線やLCC(格安航空会社)との価格競争などで2014年に赤字転落。どうなるかと思ったけど、経営者が交代して、質の高さやホスピタリティといった「スターフライヤーらしさ」をさらに追い求めた結果、2015年からは順調に売り上げを伸ばしている。JCSI(日本版顧客満足度指数)調査で8年連続「顧客満足度No.1」を獲得していたり、実は地道な顧客サービスを怠らずに続けている会社なんだ。


経営危機のときにもLCCと同じ道をいかず、独自路線を貫いた。安さのためにサービスを犠牲にしないっていうのが、信念のようね。


大手でもLCCでもない、第三極。ぶれずにわが道を進むスターフライヤー、僕は好きだなあ。そうそう、経営危機のときから凍結していた国際線の定期便を、2018年に復活する予定。九州のインバウンドがますます増えそうだね。


タカシ君、肉まん冷めちゃうよ。


あ、ついまた長時間しゃべってしまった……。


覚悟して来たから、大丈夫(笑)。九州っておいしいものたくさんあるよね。出張で通って、詳しくなった?


もちろん! 食関連の会社にもくわしくなったよ。長崎ちゃんぽんのリンガーハットに、棒ラーメンの……。


ちょっと待って! まずは食べてからにしようか。


ハイ! って、あれ? なんかユイが保護者っぽくなってる。まずいな、恋愛対象から外されてるんじゃ……。まあ、とにかく食べてから考えよう。もぐもぐ。

カエル先生の一言

ユイとタカシの会話にもでてきたJR九州。FROGGYでは、「JR九州 青柳俊彦社長のインタビュー」も公開中。会社の存在意義は「九州を元気にすること」とまっすぐに語っている。

今回のテーマで取り上げた上場企業

エイチ・アイ・エス
TOTO
久光製薬
JR九州
スターフライヤー

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