株式市場で「半導体製造装置」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は3.4%高となり、東証株価指数(TOPIX、2.5%安)に対して逆行高となりました(1月10日までの5営業日の騰落)。関連5銘柄とその背景について解説します!
AI需要の拡大で業績拡大
海外の半導体関連企業の好調な業績発表を受けて、半導体製造装置関連株に業績拡大期待が高まりました。
台湾電機大手の鴻海(ホンハイ)精密工業が5日に発表した2024年10~12月期の売上高(速報値)は、前年同期比15%増の2兆1322億台湾ドル(約10兆円)となりました。世界シェア約4割を誇るAI(人工知能)サーバー生産の増加でクラウドおよびネットワーク製品部門の収益が伸び、売上高が過去最高を更新しました。
韓国電機大手のサムスン電子が8日発表した24年12月期の連結決算速報値で、売上高が前期比16%増の300兆800億ウォン(約32兆円)、営業利益が5倍の32兆7300億ウォン(約3.5兆円)となりました。前の期に過去最大の赤字を計上していた半導体部門が、主力のメモリー半導体の価格上昇などを背景に黒字転換したことが寄与しました。
モールディング装置でシェアトップ【TOWA】
上昇率首位は、半導体製造装置・超精密金型メーカーの「 TOWA 」です。半導体製造の後工程で、半導体ウエハーから切り出されたチップを樹脂で封止するモールディング装置で世界シェアトップを誇り、2014年には経済産業省が認定する「グローバルニッチトップ企業100選」にも選定されたことがあります。
モールディングとは半導体チップを衝撃などから守るために特殊な樹脂で覆い固める技術で半導体製造工程において不可欠とされます。23年秋には生成AI向け半導体の生産に最適なモールディング装置「YPM1250-EPQ」を開発し、産業タイムズ主催の「半導体・オブ・ザ・イヤー2024」半導体製造装置部門のグランプリを獲得するなど注目を集めています。
プローブガードでシェアトップ【日本マイクロニクス】
上昇率2位は半導体検査機器メーカーの「 日本マイクロニクス 」です。半導体の集積回路を検査するのに使う計測器具「プローブカード」が主力で、メモリー向けプローブカードでは世界シェアトップを誇ります。毎年継続的に売上高の約1割を研究開発に投資し、積極的に技術を開発しています。
AIサーバーに不可欠な高性能メモリーであるHBM(Hight Bandwidth Memory)の需要急増を背景に業績を伸ばし、24年11月には26年12月期を最終年度とする中期経営計画の目標値を上方修正しました。
業績上方修正や会社予想を上回る決算も相次ぐ
「 アドバンテスト 」は半導体試験装置大手で、半導体の複数機能を1つのチップに集約したシステム・オン・チップ(SoC)向け検査装置の好調を背景に24年4~9月期決算の発表時に25年3月期の業績予想を上方修正しています。
「 ディスコ 」は半導体製造装置大手で、ウエハーを賽の目に切り分けるダイシングソー、薄く削るグラインダー、綺麗に磨くポリッシャーで世界シェアトップを誇ります。24年4~9月期決算は大幅増収増益で会社計画を上回りました。
「 東京エレクトロン 」は半導体製造装置最大手で、24年4~9月期決算の発表と同時に25年3月期の業績予想を再度上方修正しました。
市場拡大が続く
世界半導体市場統計(WSTS)が24年12月に発表した世界半導体市場予測によると、25年の世界半導体市場は前年比11%増の6971億ドルに拡大しそうです。主力の集積回路(IC)ではロジックが17%増の2437億ドル、メモリーが13%増の1894億ドルになる見通しとなっています。
AI関連ではデータセンター向けの投資継続に加えて、AI機能を搭載した端末の増加などが半導体需要の拡大に寄与するほか(『生成AIブームで半導体企業に商機 「エヌビディア」関連株が上昇』)、世界経済の緩やかな成長を背景に全種類の半導体でプラス成長を見込んでおり、半導体製造装置関連の業績拡大も続くと期待されそうです。