「復活と再生」の巳年を象徴するV字回復企業

株はテーマで斬れ!/ 日興フロッギー編集部白根ゆたんぽ

あけましておめでとうございます! 今年も「楽しく学び、実践する」投資体験をみなさまにお届けして参ります。引き続き日興フロッギーをよろしくお願いいたします。

さて、2025年は巳年です。

蛇は長期間餌を食べなくても生きながらえる生命力の強さから、神の使いとして崇められてきました。また、脱皮をして新たな姿に生まれ変わることから「復活と再生」の象徴としても知られています。

今回はそんな巳年にちなんで、好調な業績が一度低迷し、大きく復活・再生したV字回復の企業をご紹介します。

約7900億円の赤字から大復活!【日立製作所】

さまざまな分野で企業のDXを支える「 日立製作所 」。国内第5位の時価総額(2024年12月20日終値時点)を誇る大企業ですが、2009年3月期にはリーマン・ショックの影響で、なんと当期純利益が約7873億円の赤字に陥ったことも。

2008年当時は総合家電メーカーとして不動の地位を築いていた日立ですが、巨額の赤字を機に事業方針を方向転換しました。

具体的には、事業基盤をシステムやインフラ事業などの「社会イノベーション事業」へ変更すること、そして当時上場していた子会社を5社すべて完全子会社化するなどを実施。この改革が功を奏し、2011年3月期にはバブル期以来の純利益を更新するというV字回復を果たしました。

今の主力事業は企業のDX化を推進する「Lumada(ルマーダ)」。2016年から始まったこの事業は、収益性が高く全体の利益を押し上げています。

そんなLumadaの伸長もあり、業績面は好調です。2025年3月期第2四半期の連結業績は、売上高が前年同期比で11%の増収、当期利益は23%の増益となりました。2023年3月期には過去最高益を更新しており、2025年3月期にその記録を更新できるか、注目が集まりそうです。

2度の低迷からよみがえる!【良品計画】

2つ目の企業は、「無印良品」や「MUJI」をてがける「 良品計画 」。2024年8月期の決算も売上高・純利益ともに過去最高を更新するなど、飛ぶ鳥を落とす勢いの同社ですが、かつては経営危機に陥っていました。

低価格ながらも安さを感じさせないシンプルなデザインで支持を集めた同社は、設立から20年も経たないうちに売上1000億円を達成しました。

しかしその後、急激な店舗拡大とそれに伴うブランドの弱体化により売上が低迷し、2001年8月の中間決算では一時38億円の赤字に陥ります。そんな中、不良在庫の処分や品質の向上、「MUJIGRAM」と呼ばれる社内マニュアルの作成などを行い、業績を回復させました。

ところがV字回復後今日まで順調に売上を伸ばせた訳ではなく、2020年8月期には2度目の赤字を計上しています。2020年8月期はコロナ禍において店舗の閉鎖を余儀なくされたことや、欧州の不採算店舗の撤退から当期純利益169億円の赤字を計上しました。しかしながら巣ごもり需要を取り込み、翌年にはV字回復をはたしています。

2024年8月期決算では、国内外の出店に伴う店舗数の増加に加え、国内の売上が伸びたことで営業収益、純利益ともに過去最高を更新しました。V字回復後も堅調な業績を維持していることがわかりますね。

労働環境の改善がV字回復のカギ【ゼンショー】

3つ目は「すき家」「ココス」「ビッグボーイ」などを手がける「 ゼンショーHD 」。「世界から飢餓と貧困を撲滅する」ことを企業理念に、世界の食事情を変えることのできるシステムと資本力を持ったフード業界世界一を目指しています。

現在の世界シェアは第6位で、M&Aも行い国内外食産業の売上高トップに君臨する同社ですが、一時は赤字に転落した過去も。2015年3月期通期では、当期純利益111億円の赤字を計上しています。

従業員が1人ですべてをこなす「ワンオペレーション」が批判を受け、その解消に向けすき家の一部店舗で深夜営業を休止したことなどが影響しました。これを受け、経営体制を変更し、すき家の労働環境改善や企業のイメージ回復にも尽力。赤字を計上した翌年度には黒字転換、業績は回復に向かいました。

直近では2024年4−9月期、売上と最終利益ともに過去最高を記録しています。国内外のすき家やはま寿司が好調だったことが要因です。通期予想も増収増益を見込んでいます。

コロナの大打撃から5年で過去最高益【ANAホールディングス】

4つ目は、航空事業を中心としたエアライングループの「 ANAホールディングス 」。コロナ禍の影響で、国際線の全方面で運休・減便を余儀なくされたこと、国内線も緊急事態宣言を受け利用者が大きく減ったことなどから、2021年3月期決算で当期純利益4046億円の赤字を計上しました。

これに伴いコスト削減と投資の抑制や、ノンエア事業での収益確保など、事業構造の改革を行いました。こうした改革と、コロナウイルスの収束が重なり、2023年3月期決算で3年ぶりに黒字を記録。そして、2024年3月期決算では営業利益が過去最高を大幅に更新しました。見事にV字回復を果たしています。

2024年度に入ってもその勢いは健在です。好調なインバウンドや日本発旅客の増加などを受け、2025年3月期第2四半期決算では、売上高が上期として過去最高を更新しています。

国内の航空業界のトップシェアを誇るANA。ANAマイレージクラブを活用した「ANA経済圏」の拡大にも注力しており、ノンエア事業と航空事業との相乗効果が見込まれています。

「マスから個へ」の転換で赤字を跳ね返す【三越伊勢丹HD】

5つ目は、百貨店業界でトップの売上高を誇る「 三越伊勢丹HD 」。百貨店を中核事業としていることから、コロナ禍の影響を受け、2021年3月期に当期純利益410億円の赤字を計上しました。

その後、「マスから個へ」ビジネスモデルを転換。三越伊勢丹グループのクレジットカード「エムアイカード」やアプリのデータを利用して、個々の顧客ニーズにつぶさに応えるようになりました。その結果、入店客数はコロナ前の8割ながら、営業利益が大幅に増え2024年3月期に過去最高を記録し、V字回復を果たしました。

その勢いは2024年度に突入しても衰えていません。インバウンドの増加や、高価格帯の時計や宝飾品の売れ行きが好調となり、2024年の4−9月期連結決算では、4−9月期としては13年ぶりに純利益が過去最高を更新しています。また、好調な業績をふまえて100億円を上限とする自社株買いも発表しています。

「復活と再生」の企業はいかがでしたか? 今回ご紹介した企業以外にも、V字回復企業はまだまだあります。今年も日興フロッギーでは、様々な企業をご紹介していきますので、ぜひ投資の参考にしてみてください!