エブリシング・バブル 終わりと始まり 地政学とマネーの未来 2024‐2025

今日からお金賢者になれる「1分書評」/ 日興フロッギー編集部

地政学的要因を追い風に、日本は「一人勝ち」状態に! 米・中・ロシア・中東など世界の動向をストーリーで見せ、日経平均30万円の未来を語る。時事とマネーに詳しくなれる一冊です。

猛烈な「日本買い」がやってくる!?

SNSでも大人気のエコノミストによるTHE・日本復興論。2025年には日経平均5万円、2050年には日経平均30万円(!)説を唱える著者ですが、この先続くであろうインフレトレンドと地政学的な観点から考えると、荒唐無稽とも思えなくなる。

歴史を見ると、どの国の繁栄も低迷も、国自体の力量よりも地政学的影響が大きいのだそう。すなわち世界各地の紛争やパンデミック、国と国との政治的思惑云々。

たとえば、日本の高度経済成長期を後押ししたのは、朝鮮戦争の特需と米ソ冷戦からでした。当時の米国は共産主義と距離を置き、また「日本を豊かにしよう」という方針がありました。このため、グローバル資本が日本に集中します。

しかし、ベルリンの壁崩壊をはじめとする冷戦の終了で一転、日本の重要性は失われ、資本は中国やロシアへ。バブル崩壊後のあまりに長すぎた低迷には、地政学的な背景があったといいます。

さて、一度は去った「地政学的な風向き」ですが、著者はこれが再び日本に来ているといいます

世界各地での紛争、新型コロナのパンデミック等で関係図は変わり、欧米と中国は冷戦時代に突入。次なる資本の投じ先といえば、製造業も盛んでインフラ、人材とも揃っている日本しかない。株式投資だけではなく工場や事業の直接投資で「日本買い」がやってくるとも。

紛争や冷戦の果てのマネーの動きに切なさも感じつつ、風が吹けば桶屋が儲かる的なロジックは腑に落ちます(ちなみに、著者は投資の大局観を養う上で、戦後史を学ぶことを強く薦めています。世の中は同じことの繰り返しなのだなとわかるのだとか)。

もう一つ面白く感じたのが、日本の人口減少が追い風になるという考察。この先、AI化の波が人の職を奪う懸念があるとよく言われています。一方、単純労働が減っていく分、人口も減る日本はこの時代変化をバランス良く乗り切るのではないか、とも。

全編通じ、視点のズラシが興味深い一冊です。