老朽化に対する危機感高まる 「水道」関連株が上昇

直近の値動きから見るテーマ株/ QUICK

株式市場で「水道」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は8.2%と、東証株価指数(TOPIX、1.4%高)を大きく上回りました(1月31日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

道路陥没事故で対策の必要性が浮き彫りに

水道関連株が上昇したきっかけは、水道管老朽化への危機意識や点検需要の高まりです。1月28日に埼玉県八潮市の県道交差点で発生した道路陥没事故が背景です。

事故は水道管の腐食部分に道路下の土砂が流れ込んで陥没し、発生したとみられています。29日には国土交通省が東京や大阪など7都府県に緊急点検を要請し、他の場所で同様の事故が起きないよう対応を急ぎました。

以前から水道管の老朽化は全国的な問題となっていましたが、今回の事故を受けて対策の必要性が浮き彫りになっています。政府や自治体による点検や修繕の需要が高まるとの見方から、水道関連株が大きく上昇しました。

水コンサルの需要高まるか【NJS】

上昇率首位のNJSは水と環境に関するコンサルティングを手掛けており、上下水道インフラ施設向けの点検調査や災害対策を支援しています。グループ会社に上下水道などをX線で検査する日本X線検査、ドローンを中心とした新技術を用いて排水路や下水道管を調査・点検する北王インフラサイエンスなどがあり、水インフラ調査の技術革新も推進しています。28日にはオーストラリアに現地法人を設立するなど海外展開にも積極的です。

水道管の交換条件の厳格化で需要拡大も【日本鋳鉄管】

上昇率2位の日本鋳鉄管は水道管やガス管、関連部品などの製造、販売を手掛けています。主力製品のダクタイル鉄管は強靭性や耐食性に優れ、地震に強いという特徴があり、上下水道やガスなど幅広い用途の管材として使用されています。埼玉県で発生した事故の水道管は「ただちに工事が必要な状況ではない」とされていただけに、交換が必要な条件の厳格化などが進めば需要が高まりそうです。

 設備投資の前倒しも

日本ヒュームは上下水道や排水などに用いられるヒューム管や建物などを支えるコンクリート杭などを製造、販売しています。

オリジナル設計は国内外で上下水道事業施設の設計や工事発注、施工監理などのコンサルティングをしています。

前沢工業は上下水道設備に用いられるバルブや下水処理施設などの製造、販売を手掛けています。いずれの企業も上下水道に関連した事業を手掛けており、設備老朽化への危機意識の高まりから設備投資が前倒しになれば、需要が高まりそうです。

水道の老朽化対策で耐震化も進む

国土交通省は2024年1月に発生した能登半島地震でも全国の上下水道施設の緊急点検を実施し、2024年11月に結果を公表しています。接続する上下水道管がともに耐震化されている避難所や災害拠点病院などの重要施設は15%にとどまり、地震発生時の上下水道システムには不安がありそうです。

今回の事故をきっかけに以前から対応の必要性が提唱されている水道管の老朽化に向き合う動機が高まっており(『メンテナンスは喫緊の課題 「水道」関連株が上昇)同時進行で耐震化が進む可能性もありそうです。今後の国や自治体の政策に注目したいですね。