半導体とは、導体と絶縁体の中間の性質を持ったものです。導体とは電気を通しやすい物質のことで、絶縁体は導体の反対で電気を通さない物質を指します。半導体は使い方次第で導体・絶縁体どちらの役割にもなれるものです。
なんだか難しく感じますが、半導体は私たちの生活に非常に身近なものです。たとえば、スマートフォンや、コンピュータ、ゲーム機といったデジタルデバイスだけではなく、テレビ、冷蔵庫、エアコンなどの私たちに身近な家電にも使用されています。エアコンが室温に合わせて動いたり止まったりできるのは半導体が仕事をしているからです。自動車も現代では半導体なしでは動きません。日本では半導体が「産業のコメ」とも呼ばれています。日本人の食生活に浸透しているお米と同様に、産業において大事なものであることを意味します。
半導体製造には約1,000ステップにも及ぶ多数の複雑な工程があるそうです。その工程をやや大まかにくくったものがこちらの表です。半導体産業は、完成した半導体製品を作ることのみを意味せず、それぞれの工程に関わる企業も半導体産業を構成しているとみなされています。
半導体関連株で構成された株式指数
製造工程が多く、裾野が広いので、半導体関連株はたくさんあります。そしてそれらの銘柄で構成された株式指数があります。今回ご紹介する株式指数はまさにその半導体産業を代表する銘柄で構成された「フィラデルフィア半導体株価指数」です。米国株にちょっと詳しい方なら、「SOX指数」の方が通りがいいでしょうか。
「SOX指数」は「そっくすしすう」と読みます。「そっくす」と読みますが靴下の指数ではありません。”S”は半導体を意味する英語Semiconductorの頭文字です。米国の証券取引所に上場されている半導体の設計・製造・流通・販売を行う企業30社で構成される株式指数です。
もともとフィラデルフィア証券取引所が算出、公表していたため「フィラデルフィア」という地名がついた指数になっています。のちにNASDAQがフィラデルフィア証券取引所を買収しましたが、この指数の名称は変更されていません。銘柄入替は年に1度、9月に実施されます。時価総額加重平均型の株価指数です。
半導体株の波は大きい
指数の推移を確認しましょう。S&P500と5年で比較してみます。S&P500より値動きが大きいことがよくわかると思います。構成銘柄が30と、500社で構成されるS&P500より少ないため、構成銘柄一つ一つの値動きに大きく左右されやすいことが特徴です。2023年以降は生成AIブームに伴い、大きく上昇しました。
半導体産業には「シリコン・サイクル」と呼ばれる、構造的な景気変動サイクルがあり、約4年の周期で好況と不況を繰り返すとされています。なお、シリコン・サイクルの言葉は、半導体がシリコンを主材料として生産されていることに由来します。
半導体業界は、好況のタイミングでは供給が追い付かないほど大量の注文が殺到しますが、不況フェーズでは供給過剰の状態にしばしば陥ります。半導体を使った製品の需要は変動します。製品の需要が少なければ半導体の需要が減ります。定期的に需要増と需要減が起きることをシリコン・サイクルと呼びます。すそ野が広い半導体関連産業株はシリコン・サイクルの影響を受けるので、業績変動が激しくなりがちです。だからSOX指数の値動きが激しくなるのです。
そして半導体需要は他の製品の需要の鏡のようなものです。SOX指数の動きは、半導体市場の今だけではなく、最終製品需要の近未来を見透かせるものです。よって、この指数の動きを監視している投資家が少なくありません。
SOX指数に連動するETF・投資信託がある
では、SOX指数の構成銘柄を確認します。30社は米国に上場していればいいので、「米国企業」である必要はありません。米国株に限られるS&P500とは違いがあります。例えばアームHDは英国、ASMLホールディングはオランダ、台湾セミコンダクターは台湾企業です。
エヌビディアやインテルは知ってるけど、知らない銘柄がいっぱいある……と不安になったでしょうか。大丈夫です。全銘柄を知らなくても全く問題ありません。なぜならSOX指数に連動した円建ての金融商品が登場しているからです。指数まるごと買ってしまうことができるわけですね。
SOX指数は日本でも多くの投資家になじみがある株式指数でしたが、実は日本では長い間SOX指数連動商品を取引することができませんでした。しかし、近年状況が変わり、現在では円建ての投資信託やETFが登場しています。
SOX指数連動ETFをご紹介します。「
グローバルX 半導体ETF
」はSOX指数に連動することを目指す東証ETFです。2023年4月に設定されました。組み入れ上位10銘柄を確認すると、ブロードコム(AVGO)とエヌビディア(NVDA)の2銘柄だけで全体の約4分の1を占めます。この2銘柄の時価総額がとびぬけて大きいということです。
フロッギーでも買える
グローバルX 半導体ETFは1口2000円程度で取引できるETFですが、フロッギーならば100円から買えますので、さらに気軽に手がけられますね。SOX指数は値動きが激しいので、ポートフォリオの主軸に置いてしまうと、心臓が悪くなるような資産の変動をもたらす恐れがあります。しかしフロッギーですこーし買って、適度に値動きを楽しめる程度であれば、シリコン・サイクルを体感できるという点で学びがあると思います。それを100円でできるのはありがたいことですね。