株式市場で「米価高騰」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は4.1%と、東証株価指数(TOPIX、0.8%安)に対して逆行高となりました(2月21日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
米価高騰で採算改善、農機など設備投資も増えるか
米価高騰の関連株が上昇した背景は、流通量の減少などが原因で米の価格が上昇し一部企業が採算改善に成功したことなどがあります。
農林水産省が19日に発表した1月の米の相対取引価格(全銘柄平均)の速報値は玄米60キログラムあたり前年同月比69%高い2万5927円。単月として比較可能な1990年以降で最高となりました。
21日に総務省統計局が公表した1月分の全国の消費者物価指数(CPI)も「米類」の価格は前年同月比70.9%の大幅上昇となりました。
米の卸売り業者だけでなく、米の代替品への需要の強まりや生産能力向上に向けた設備投資の増加への思惑などから関連銘柄に買いが集まりました。
採算改善に成功【木徳神糧】
上昇率首位の「 木徳神糧 」は仕入れた玄米を精米して販売する米穀の卸売りが売上高の8割で主力となっています。海外の米の卸売りや輸入などのほか、飼料や食品の仕入れと加工、販売なども手掛けています。
14日に発表した2024年12月期連結決算 は増収増益でした。期初時点では猛暑による米の品質低下に伴う精米歩留まりの悪化や収穫量減が逆風となり減益となる予想でした。しかし、独自調達の推進による競争優位性の向上や構造改革、原材料費の価格転嫁などの採算改善策が奏功しました。米価高騰で消費者マインドが冷え込む中、価格転嫁に成功して増益を確保したのが好感されました。
設備投資増加で追い風か【井関農機】
上昇率2位の「 井関農機 」は稲作や野菜作などに関する農業機械や景観整備用機械の開発や製造、販売を手掛けています。特許などの知的財産に裏打ちされた技術力やエキスパート人材による生産者の課題解決などに強みがあります。米価高騰で収入が増加した農家や新規参入する農家による設備投資が増加すれば追い風となりそうです。
お米が原料の製品も価格改定
「 岩塚製菓 」は日本のお米100%にこだわった米菓を製造・販売しており、価格改定のほかインバウンド(訪日外国人)の取り込みにも成功しています。
「 クボタ 」は農業機械の製造・販売のほか、水や環境など生活を支える製品を展開しています。
「 サトウ食品 」はパックご飯や餅などを手掛けています。17日に6月2日出荷分からパックご飯の全商品を約11~14%値上げすると発表しました。いずれの企業もお米を原料とした製品の価格改定や米価上昇による設備投資増加などで収益向上が見込めそうです。
政府備蓄米放出で供給安定か
14日に農林水産省は米の流通円滑化を目的に政府備蓄米を放出すると発表しました。買い占めを防ぐために事業者規模ごとに販売数の上限を定めて21万トンを販売するとしています。3月上旬から入札を開始し、3月下旬から4月ごろには店頭に並ぶとみられます。
今後の米の価格は、供給量の変化の影響により先行き不透明です。価格戦略だけでない関連企業の柔軟な対応力が銘柄選別のポイントとなりそうです。