バフェット氏が買い増し意欲 「総合商社」関連株が上昇

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株式市場で「総合商社」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は3.9%となり、東証株価指数(TOPIX、1.9%安)に対して逆行高となりました(2月28日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

バークシャー、商社株の保有比率上限を緩和の意向

「投資の神様」と呼ばれる米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が日本の5大商社(三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅)の株式買い増しに意欲を示したのが材料視されました。

バフェット氏が率いる投資会社の米バークシャー・ハザウェイは2020年8月に大量保有報告書で新規に商社株を5%超保有したと明らかにしました。22年11月 と23年6月には変更報告書で買い増しを公表しています。(明るい見通しと株主還元 「総合商社」関連株が上昇)

バークシャーは25年2月22日に「株主への手紙」を公表。その中で、これまで各社の株式保有比率を10%未満に抑えるとしてきた方針について、上限を適度に緩めることで各社と合意したとし、時間をかけて比率を引き上げる可能性を示唆しました。

足元で商社株はさえない値動きとなっていたため、バフェット氏の買い増し方針が反転のきっかけとなりました。

セブン&アイへの出資取りやめ【伊藤忠】

上昇率首位は大手総合商社の伊藤忠商事です。時価総額は10兆円超で商社最大を誇ります。バークシャーの保有比率は7.47%と5大商社の中で一番低く(23年6月時点、以下同)、今後の買い増し余地が一番大きそうです。

また、カナダのコンビニ大手からの買収提案に対抗すべく、セブン&アイ・ホールディングスの創業家が株式非公開化を計画していました。その件では伊藤忠が1兆円程度の出資を検討していましたが、自社グループの食料事業との相乗効果などが得られないとの判断から27日に取りやめを発表しました。

資金効率の面からセブン&アイへの出資に懐疑的な見方が多かったため、出資取りやめが前向きに評価された面もあるようです。

バークシャーの保有比率が最高【三菱商事】

上昇率2位は三菱商事です。バークシャーの保有比率は8.31%と5大商社の中で一番高く、同社株に対して高評価を与えていたと推察されます。収益に占める資源事業の比率が相対的に高いため、資源価格に業績や株価が左右されやすい傾向にあります。

石油・天然ガスなど化石燃料の増産方針を示すトランプ米政権の発足以降、原油価格は軟調で株価が調整気味だったこともあって、バフェット氏の買い増し方針が見直し買いにつながりました。

今後投資対象となる可能性のある銘柄も

住友商事は、バークシャーの保有比率が8.23%です。収益に占める非資源比率が約8割と相対的に高いため、業績の変動が他の大手商社に比べて小さい傾向があります。

丸紅は、バークシャーの保有比率が8.30%です。2月の中期経営計画発表時に2030年度までに時価総額を現在の2.5倍となる10兆円を目指す方針を示しており注目されています。

豊田通商は、トヨタ系の総合商社で5大商社に次ぐ存在です。今のところバークシャーの保有は確認されていませんが、投資対象を豊田通商まで拡大する可能性も十分考えられます。

過去には円建て社債募集後に株式取得

バークシャーはこれまで大手商社株へ投資する際に、日本国内で円建て社債を発行して資金を調達し、調達した資金を総合商社などの株式購入資金に充ててきました。

今後大手商社株への投資を一段と増やすとなれば、同じように資金を調達する可能性もあります。バフェット氏の投資に追随しようとする投資家もおり、バークシャーが円建て債を募集すれば商社株投資の号砲になるかもしれません。