トランプ米大統領による関税政策や、米半導体大手エヌビディアの決算発表などを受けて2月28日の日経平均は一時1400円を超えて下落しました。足元の株式市場の状況と背景をサクッと解説します。
日経平均は5ヵ月ぶりに3万6000円台に
2月28日の日経平均は、昨年9月以降の下値とされてきた3万8000円を大きく割り込み、3万6000円台まで落ち込む場面がありました。下落幅は、今年最大だった2月3日を上回り2025年で最大に。
下落の背景としては、トランプ米大統領の関税政策による不透明感の高まりや、米国経済指標の悪化、米半導体大手エヌビディアの決算発表という3つが考えられます。1つずつチェックしてみましょう。
要因①トランプ米大統領の関税政策
2月27日、トランプ米大統領は、カナダとメキシコに対し25%の関税を発動することを発表しました。関税の発動は3月4日。カナダのエネルギー製品を除き、両国からの輸入品すべてに適用される予定です。
これに加え、3月4日に中国に対しても10%の追加関税を課すことが発表されました。トランプ大統領の就任後、中国にはすでに10%の関税が課されており、今回の追加関税を踏まえると20%の関税が課されることになります。中国側は報復措置としてアメリカからの輸入品に一部関税を課しており、両国の緊張感が高まっています。
また、こうした関税政策がインフレ圧力につながり、アメリカ経済を支える個人消費が減速してしまう可能性も。引き続き「トランプ関税」の動向には注意が必要です。
要因②直近の米国経済指標が悪化
政治的な動きに歩調を合わせるように、米国の景況感を表す指標も悪化しています。米国コンファレンス・ボードが2月25日に発表した2月の消費者信頼感指数は98.3と、前月から7ポイント低下しました。低下幅は2021年8月以来、3年半ぶりの大きさとなり、3カ月連続の悪化となりました。
「消費者信頼感指数」とは、消費者のセンチメント(消費者マインド)をアンケートで調査して指数化した景気関連の経済指標のことを指します。コンファレンスボードとは、米国の経済団体や労働組合などで構成される民間の非営利調査機関で、月1回発表されるこの指数は、米国の消費者マインドを測る重要な指標の1つです。
また、そのほかにも米労働省が27日発表した2月22日までの1週間の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は前週比2万2000件増の24万2000件でした。市場の予想を上回る増加となり、増加幅は5カ月ぶりの大幅なものとなりました。
こうした景況感や雇用を巡る不透明感が投資家マインドを低下させたものと見られます。
要因③:エヌビディアの決算
2月26日にアメリカの半導体大手エヌビディアが決算発表を行いました。売上高・純利益ともに市場予想を上回り、四半期ベースで過去最高を記録。好決算ながらも、想定の範囲内であったことから27日の米国株式市場では8%を超えて下落しました。中国企業ディープシークの台頭でAI市場の勢力図が変化するといった見方もあります。半導体投資への過熱感がピークアウトしているのかもしれません。
こうしたエヌビディアの決算を受け、28日の日本株市場は東京エレクトロンやアドバンテスト、ディスコなどの半導体関連銘柄が大きく下落しました。半導体関連銘柄は値がさ株が多く、日経平均への寄与度が高いため、こうした銘柄の動きが28日の大幅下落につながったと思われます。
いかがでしたか?3月は、トランプ大統領が追加関税を発表する可能性があったり、日銀の政策決定会合、FOMCなど注目スケジュールが目白押し。しっかりチェックして、今後の投資に活かしていきましょう。