不確実性の時代を生き抜く ピクテの金投資戦略

ここでしか聞けない!ファンドマネージャーの本音/ 塚本 卓治日興フロッギー編集部

金(ゴールド)は、人類の歴史の中で価値を失ったことがない資産として知られていますが、昨今インフレや地政学リスクの高まりを背景に、改めてその投資価値が注目されています。今回は、「 ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし) 」「 ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり) 」について、ピクテ・ジャパン株式会社の投資戦略部シニア・フェロー、塚本卓治さんにお話を伺いました。

世界最高水準の安全性で守る金投資

――本ファンドの特徴を教えてください。

ピクテ・ゴールドは、金の現物に実質的に投資するファンドです。一般的なファンドの中には先物に投資して金価格への連動を目指すものもありますが、本ファンドは現物投資にこだわっています。

また、ピクテ・ゴールドでは、為替ヘッジなし/為替ヘッジありの2つのコースから選択が可能です。為替ヘッジなしは、基準価額の値動きが米ドル建ての金価格を円換算した動きに近くなります。為替相場が円安になった場合に、為替差益が期待できます。長期的に円安になるといった為替見通しをお持ちの方に適しています。

一方、為替ヘッジありは、基準価額の値動きが米ドル建ての金価格の動きに近くなります。金は安全資産として注目される局面で円高になることも多く、その場合、為替の影響でリターンが相殺されてしまう可能性があります。こうした局面に備える場合は、為替ヘッジコストがかかりますが、為替ヘッジありのコースが適しています。

――金ETFと本ファンドの違いについて教えてください。

ETFの場合、リアルタイムでの売買が可能ですが、時間帯によっては流動性が非常に低くなります。特に東京時間で大口取引をすると、自らの注文で価格をつり上げてしまったり、価格を押し下げてしまうリスクがあります。一方、本ファンドはロンドン市場における午後金価格で取引を行うため、より透明性の高い価格で取引できます。

これは、ロンドン市場が世界最大の金の現物市場であり、機関投資家や中央銀行など大口投資家が取引を行う場所だからです。1日2回の値決めによって、世界の大口投資家と同じ価格で取引できるため、国内市場で取引する場合に起こりうる価格の乖離や流動性の問題を回避できます。

――金価格と連動したパフォーマンスを目指すということは、具体的にどのような運用をされているのでしょうか。

本ファンドでは、投資先ファンド(※)への投資を通じて、金の現物に投資しており、現物はピクテの金庫などで厳重に保管されています。1805年から世界の富裕層の資産管理を手掛けてきたピクテだからこそ可能な、世界最高水準の安全性を提供しています。

※主にピクテ(CH)プレシャス・メタル・ファンド-フィジカル・ゴールド(スイス籍)。局面によりETFを含む場合があります。

金が持つ独自の価値

――株式や債券への投資との違いを教えてください。

金の最大の特徴は、分散投資における効果です。株式や債券などと異なる値動きをする特性が古くから知られています。過去20年のデータを見ると、特に、株式に金を組み合わせることで、株式単体の保有よりもリスク低減効果が見られました。

特に近年は、株式と債券が同時に下落するリスクが指摘されています。2022年はまさにその状況でしたが、金は円ベースでプラスのリターンを記録し、ドルベースでもほぼフラットを維持しました。

また、金の希少性は際立っています。これまでに採掘された金を全て集めても、オリンピック公式競技用プール4.4杯分程度で、残存埋蔵量は約5万9000トン。現在の年間採掘ペース3600トンで計算すると、あと16年で採掘し尽くすことになります。

――同じコモディティの中でも、原油や銅、銀への投資とはどのように異なるのでしょうか。

原油や銀は、景気変動の影響を大きく受けます。景気が良くなれば需要が増加し、悪化すれば需要が減少する傾向にあります。一方、金は安全資産としての側面が強く、投資家や中央銀行、宝飾品による需要が中心です。需給が増減する工業用品向けは1割以下となっています。実際、昨年を振り返ると、原油価格が大きく下落する中でも、金価格は上昇を続けました。

不確実性の時代における金の役割

――これからの金投資について、どのようなイメージをお持ちですか。

世界は再び分断の時代に入りつつあります。かつての東西冷戦の時期には、様々な商品の価格が上昇し、インフレが続きました。その後、ベルリンの壁崩壊とともに、グローバリゼーションの時代が訪れ、最適地での生産が可能となり物価は抑制されてきました。

しかし今、トランプ政権2.0とともに、再び不透明感が高まっています。関税引き上げはインフレを引き起こし、個人消費の低下や景気悪化につながる可能性があります。そのような環境下で、世界の中央銀行は金の購入を継続しています。

さらに、インドや中国を中心とした宝飾品需要も堅調です。これらの国々で5~6%の経済成長が続けば、可処分所得の増加により金需要は安定的に伸びていくと考えられます。株式投資では投資時点のバリュエーションが重要になりますが、金にはそのような制約がありません。

長期投資家のための資産保全手段

――個人投資家にとって、本ファンドの投資価値はどこにあるとお考えですか。

不透明な時代には、ポートフォリオの一部に金を組み入れることをおすすめします。それぞれのリスク許容度に応じて、5%から場合によっては20%程度の組入れが考えられます。実際、ピクテのバランス型ファンドでは、一時期、株式と金で半々という配分を採用していました。

金の価値は、人類のDNAに刻まれていると言えるかもしれません。オリンピックでも最高位の証は金メダルです。その輝きと重みは、時代を超えて人々を魅了し続けています。

人類の歴史を振り返ると、世界の覇権国の通貨は、最終的に価値を失ってきました。米ドルでさえ、この100年間で金に対して100分の1の価値になっています。そのような中で、金は唯一、価値を失うことのない資産として存在し続けてきました。

不確実性が高まる今こそ、資産保全の手段として、金投資の重要性は一層高まっていくでしょう。ピクテ・ゴールドは、200年以上の歴史を持つピクテの信頼性と、世界最高水準の安全性で、皆様の資産を守り続けます。