再び勢いづく「インバウンド」関連に注目

カエル先生の株式相場プレイバック/ 日興フロッギー編集部平松 慶

マーケットの「温度感」がわかる連載「カエル先生のマーケットハイライト」。今回は、トランプ政権の関税政策や足元で再び勢いが増しているインバウンドの動向について解説します。

カエル先生の一言

トランプ政権の関税政策が世界経済に悪影響を及ぼすのではないかといった懸念から、上値の重い展開が続いた2月の日本株市場。当面は、同関税政策をめぐり各国の駆け引き、交渉が活発になるとみられ、外需業種を中心に強気になりにくい状況が続きそうです。

2月の日本株市場

2月28日の日経平均株価は3万7155円、前月末比2416円安でした。1日にトランプ大統領がメキシコなどに関税を課す大統領令に署名し、世界経済の先行きに対する警戒感が強まったことで、日経平均株価は月初から大幅に下落しました。

その後、3月期決算企業の2025年3月期第3四半期決算はおおむね良好な結果となり、業績への期待が株価を下支えする場面もありました。しかし、トランプ政権の関税政策をめぐる懸念や米半導体大手エヌビディアの決算発表などを受けて、28日には日経平均株価が一時1400円以上値下がりし、2025年最大の下げ幅を記録しました。

エヌビディアの2024年11月〜2025年1月期決算発表は、売上高・純利益ともに市場予想を上回り、四半期ベースで過去最高を記録しました。ただ、同社が手がけるAI半導体「Blackwell」の生産拡大を背景に2025年2~4月期の調整後粗利益率が前四半期比で低下する見通しが嫌気されたことなどから、27日にエヌビディアの株価は8%超下落。翌28日の日本株市場でも「 東京エレクトロン 」や「 アドバンテスト 」「 ディスコ 」など、半導体関連銘柄を中心に大きく下落しました。

日経平均株価は値がさ株(株価水準が高い銘柄)の値動きに影響を受けやすいため、今後日経平均株価が上向くには、値がさ株の東京エレクトロンなど主力の半導体関連株の持ち直しが欠かせないと言えます。しかし、中国の新興企業DeepSeekの台頭による影響など、半導体需要に対する懐疑的な見方も根強くある中、新たな買い材料が出てくるまで半導体関連株はさえない動きが続きそうです。

「トランプ関税」の動向に注意

アメリカ国内の雇用を拡大させるため、関税を引き上げて輸入品の流入を抑えるなどの対応を進めているトランプ政権。最大の貿易赤字国である中国に対しては、2月4日から10%の追加関税を発動しました。これを受けて中国政府は石炭や液化天然ガス(LNG)に追加関税を課すなどの対抗措置を発表し、両国の緊張感が高まりました。

目先のところでは、3月12日(水)からアメリカが輸入する鉄鋼製品とアルミニウムに25%の関税を課すことが予定されており、日本の製品も対象となる見通しです。

また、4月2日(水)からは輸入自動車に25%程度の関税を課すことや、貿易相手国がアメリカに対して高い関税を課している場合に、その国からの輸入品への関税も同じ水準に引き上げる「相互関税」の導入も検討されています。自動車や相互関税についても日本の製品が対象になる可能性があり、警戒感が広がっています。

トランプ関税が発動されれば、各国・地域の報復措置にも注意が必要です。引き続き、市場ではトランプ大統領の関税政策などをめぐる発言や動向に一喜一憂する展開が続きそうです。

1月の訪日外客数は初めて370万人を突破

一方国内では、1月の訪日外客数が3,781,200人で前年比40.6%増となり、単月として過去最高を大幅に更新しました。アジア圏の旧正月に合わせた旅行需要の高まりがみられたほか、ウィンタースポーツ需要などにより、豪州やアメリカなどの地域からを中心に一層の旅行者数の増加があったことが主な押し上げ要因となりました。

また、1月の全国百貨店免税売上高は前年比54.9%増となり、再び増勢が加速。とりわけ、免税総売上高が54.9%増と大幅に伸長・加速して全体を牽引しました。

今後は、2024年末に日本政府が発表した中国人訪日客向けのビザ発給の緩和措置が2025年春から開始する予定です。また、4月から開催される大阪・関西万博では約350万人の海外来場者が見込まれています。

インバウンド(訪日外国人)需要がさらに拡大していけば、運輸・宿泊業や百貨店など関連企業の業績押し上げにも期待が持てそうです。関連銘柄の動向はチェックしておきたいですね。

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3月は日米の金融政策の行方にも注目

3月は11日(火)~13日(木)にかけて春季労使交渉(春闘)の集中回答日が、18日(火)~19日(水)には日銀の金融政策決定会合が予定されています。日銀の植田総裁は今後の追加の利上げについて、賃上げの動きなどを見極めて判断したいとの考えを示しており、今回の春闘における賃金動向は今後の日銀の金融政策を占う上で、重要な判断材料のひとつになりそうです。

またアメリカでは、18日(火)~19日(木)にFOMC(連邦公開市場委員会)が行われる予定です。足元の経済指標の発表ではアメリカのインフレが根強いことから、市場では今回も政策金利が据え置かれるとの見方が優勢となっています。

3月はこうした日米の金融政策や今後の見通しにも注目しておきたいですね。