億り人アンケート~トランプ2.0編~

億り人アンケート/ アイル愛鷹かぶ1000JACKDAIBOUCHOUちょる子DUKE。とりでみなみ名古屋の長期投資家(なごちょう)なのなの弐億貯男はっしゃん響煇 嚆矢日興フロッギー編集部白根ゆたんぽ

2025年の株式市場に波乱を起こしそうなのが、トランプ大統領の存在です。すでに追加関税やエネルギー政策、国境警備の強化などさまざまなテーマが話題となり、株式市場への影響も少なくない一方で、何をしてくるのかわからない怖さも……。そこで15人の億り人さんに、トランプ相場で注目の銘柄と気になるリスク、さらにその対処法をお聞きしました。
億り人アンケート~2025年注目銘柄編~を読む

トランプ政権で有望な銘柄は

億り人の皆さんへ行ったアンケートの後編は「トランプ相場で注目している銘柄は?」という直球質問からスタート。億り人さんたちは、華麗に打ち返してくれました。

「エネルギー政策では『脱炭素』志向が強かったバイデン前大統領に比べ、トランプ大統領は原油高にポジティブな印象。長期的に見れば海洋資源開発は成長産業でもあり石油生産設備を製造する「 三井海洋開発 」は有望」(DAIBOUCHOUさん)

同じく原油に関連して「 住友商事 」に注目するのは、名古屋の長期投資家さん。

「トランプ大統領は自国の油田を掘って掘って掘りまくって増産し原油価格を下げると公言しています。実際に実行されれば、アメリカで原油生産に使われる油井管(ゆせいかん)で高いシェアを持っている住友商事は恩恵を受けそう」

資源では金・銅・ニッケルなどの非鉄金属の製錬を手がける「 住友金属鉱山 」にも注目が。

「住友金属鉱山は菱刈鉱山をはじめ、高品位な金鉱山を保有し、資産価値が高いのにPBRは0.5倍台と割安(2025年2月10日時点)。資源価格が高騰すれば、大幅な増配も期待できます。実際、ニッケル価格が高騰した2022年3月期は301円の配当が実施された経緯もあります」(かぶ1000さん)

インフレからの連想で米穀精米袋と米穀計量包装機械で首位の「 のむら産業 」に目をつけているのは、名古屋の長期投資家さん。

「トランプ大統領の政策でインフレが加速しそう。インフレの影響で好業績だったのむら産業も恩恵を受ける企業のひとつでは」(名古屋の長期投資家さん)

防衛産業や対中関係はどうなる?

トランプ大統領がライバル視する中国。はっしゃんさんからは「米中対立」というキーワードが聞かれました。

「トランプ政権での米中対立も念頭においているのか、日本産水産物の輸入再開など中国の対日姿勢に変化の兆しがあります。「 資生堂 」や、育児用品の「 ピジョン 」は福島第一原子力発電所からの処理水をきっかけにした中国での反日キャンペーン以来、業績が悪化していますが、関係好転で底入れする可能性が。さらなる下値リスクもありますが、反発すればおもしろそう」(はっしゃんさん)

米中の対立が先鋭化すれば、中国製品からの置き換え需要が期待できる会社もありそうです。

「トランプ政権の中国への姿勢から考えると、港湾クレーンで国内最大手の「 三井E&S 」。中国製クレーンのリスクが強く意識されれば、三井E&S製品への入れ替えが進む」(DAIBOUCHOUさん)

外交面では関税を武器にした強気な交渉姿勢が目立つトランプ大統領。防衛産業に目をつけた億り人さんも複数いました。

「トランプ大統領の就任で防衛産業がテーマになる可能性はありそう。実需というより雰囲気で資金流入が見込めそうなのが「 三菱重工業 」」(ちょる子さん)

「造船業はもともと活況ですが、米海軍の修繕などメンテナンス面での需要増加に期待できるのが「 名村造船所 」」(DAIBOUCHOUさん)

トランプ大統領の発言で為替市場が荒れたときにはこんな銘柄も。

「トランプ大統領の言動で為替が激しく動いて、FXトレーダーが活発に取引する可能性が。そのときはFX大手の「 トレイダーズHD 」(DAIBOUCHOUさん)

関税に関してはこんな見方も。

「関税騒ぎに巻き込まれそうな自動車や半導体に比べ、相対的にリスクが小さいのはIP(知的財産)関連。たとえば「 任天堂 」や「 ソニーグループ 」です。任天堂は新型ゲーム機の発売もあり、動きがありそう。ただし株価が割高である点には注意が必要です」(はっしゃんさん)

AI、暗号資産が盛り上がる

トランプさんが大統領に就任して早々に発表したのがAIインフラを構築する「スターゲート」プロジェクト。発表の場には「 ソフトバンクグループ 」の孫正義会長の姿もあった。

「ソフトバンクグループ持ち分のアーム株は時価約18兆円ほど。これだけでソフトバンクグループの時価総額約14兆円を上回り、そのほかにも「 LINEヤフー 」や「 ソフトバンク株式会社 」、TモバイルなどAI・通信関連企業の株を保有しています。保有する有価証券と比べると株価は割安。いずれも関税強化の影響はなさそうです」(かぶ1000さん)

暗号資産に着目するのはDUKE。さんです。

「トランプ大統領は『アメリカをビットコインおよび暗号資産の中心地にする』と明言しており、新政権下での暗号資産の大幅な規制緩和が期待されます。ビットコインや側近であるイーロン・マスク氏が推すドージコインなどは値上がりが期待できそう」(DUKE。さん)

暗号資産そのものでなくとも、関連銘柄があります。

「暗号資産の相場が活況となれば、暗号資産取引所・GMOコインを傘下に持つ「 GMOフィナンシャルHD 」の収益も増えそう」(DAIBOUCHOUさん)

「トランプ政権下で規制緩和が期待される暗号資産関連としては暗号資産を扱っている「 セレス 」も」(JACKさん)

トランプ相場の混乱を避けた銘柄選び

一方で、トランプ大統領がもたらすであろう混乱を避けて銘柄を選ぶ億り人さんも。

「2019年の夏ごろのように彼のSNS投稿でボラティリティが大きくなりそう。お仕事をされている人は高配当のバリュー株やディフェンシブ銘柄などがいいと思います。配当性向が高くディフェンシブ銘柄である「 武田薬品工業 」や、設備投資の増加とともに需要の増えそうな「 JFEHD 」など堅実で長く持っても安心できる企業が良さそう」(ちょる子さん)

カエル先生の一言

バリュー株とは会社の利益や資産に対しての評価が株価に反映されておらず、株価が低い状態の株式のことです。一般的に株価純資産倍率(PBR)、株価収益率(PER)などの株価指標を用いて評価されます。ディフェンシブ銘柄とは、業績が景気動向に左右されにくい業種の銘柄のことで、生活必需品である食品や日用品、社会インフラである電力、ガスなどの業種が該当します。

アイルさんも同様の考えです。

「トランプ大統領の政策は予測が難しい。関連銘柄も乱高下が予想され、トランプ相場に乗るのは難しそう。トランプ政権に左右されず中長期的な成長が期待できる会社に投資していきたい」(アイルさん)

そんなアイルさんが挙げたのは、こんな会社です。

「DX支援サービスの「 L is B 」は損益分岐点を超えたことから、今後は利益拡大局面に入り株価も見直されると期待していますし、「 エスプール 」はコロナ特需の反動で株価が低迷していますが、利益率の高い障害者雇用支援事業の拡大にともない株価が見直されると期待しています」(アイルさん)

「読めない面が多いため、保有株には内需関連の銘柄も組み入れておきたい」とする弐億貯男さんが挙げたのは、上下水道を中心にした建設コンサルティングの「 日水コン 」と、アスクルの子会社で、間接材・サービスのワンストップ購買代行を行う「 アルファパーチェス 」。

「日水コンは官公需要が多く、上下水道設備の老朽化にともなう更新需要がコンスタントに見込めますし、アルファパーチェスは中長期的に安定したストック収益が見込めます」(弐億貯男さん)

トランプ相場から距離を置く考え方は、愛鷹さんも同じです。

「関税の影響を受けず需要が堅調なサービスを展開する会社に投資すれば、トランプが何を言おうが無風。業績見通しが良好で増配の期待できる銘柄を粛々と狙うべし。たとえば『カラオケまねきねこ』を展開する「 コシダカHD 」、お土産用のお菓子などの製販会社「 寿スピリッツ 」、累計3.9兆円のリースファンドを組成した「 FPG 」、都内23区で斎場や火葬場を運営する「 広済堂HD 」です。一見すると事業内容に共通点は見られないかもしれませんが、コロナ禍など過去一時的に苦境に陥る局面もありながら、それらの難局を乗り越え、長期的に増収増益基調で増配で株主に報い続けてくれる点が共通しています」(愛鷹さん)

同様の考え方に沿って、かぶ1000さんが教えてくれた銘柄は「 三菱地所 」です。

「国内不動産がメインの内需型のため影響が少なそう。保有する賃貸等不動産の含み益は時価総額を大きく上回ります。インフレによる賃料の増額改定も進んでおり、2024年度は過去最高益を更新する見通し。2030年度まで毎年3円増配の累進配当を導入し、2024年度に行なった約500億円の自社株買いを2025年度・2026年度も継続する見通しです。『資産バリュー株の代表格』と言える存在に」(かぶ1000さん)

日銀、為替、インフレ再燃――億り人が警戒するリスク

次に億り人へ聞いたのはトランプ2.0で想定されるリスク。下記の9つの選択肢から「想定しておきたいリスク」を複数選択で回答してもらいました。

①米国の金融政策
②日本の金融政策
③為替の急変動
④世界的なインフレの再燃
⑤国内個人消費の落ち込み
⑥AI関連株の崩壊
⑦中国の景気低迷長期化
⑧新たな紛争の勃発
⑨その他

注目度トップとなったのは「日本の金融政策」です。

「さらなるインフレ傾向が進み、日銀の金融政策に対する思惑や、実際の利上げにより、2024年8月5日のような暴落が今後も発生することを想定」(弐億貯男さん)
利上げに伴う円高への警戒感も高く、「為替の急変動」が2位に。

「2025年1月の利上げで日本の政策金利はスイスと並びました。スイスは利下げサイクルにあり今後は逆転する見通し。資金の調達通貨が円からスイスに変われば円高トレンドとなる可能性があり、想定しておきたいリスクです」(響煇 嚆矢さん)

なのなのさんは、為替の不透明さを踏まえた上で、注目銘柄に「 iシェアーズ S&P 500 米国株ETF(為替ヘッジあり) 」を挙げてくれました。

「トランプ政権は「米国第一主義」を掲げており、日本の経済的恩恵は限られる可能性が高い。その点を考慮すると、日本株よりも米国株のインデックスの方が期待値は高いかもしれません。また、為替動向も不透明な点が多く「為替ヘッジ」を付けた方がよいと考えています」(なのなのさん)

落ち着いたかに見えるインフレですが、3位は「世界的なインフレの再燃」でした

「少なくとも日本でのインフレは確実と考えていて、リスクではなく『シナリオの一部』。『値上げがしっかりとできる商売か』など、インフレを前提に銘柄を選択しています」(とりでみなみさん)

インフレと同数の票が集まったのは「中国の景気低迷長期化」。とりでみなみさんは中国リスクも「シナリオの一部」としています。

「そのため、いま中国でビジネスを展開している企業は極力避けています。逆に『中国の景気が良くなること』がリスク。世界の投資資金、とくに欧米の資金が日本から再び中国に向かうことを警戒し、慎重にウオッチしています。万が一、そうなったらキャッシュポジションを増やすなどの対応も検討します」(とりでみなみさん)

その他では災害リスクに警戒する声も。

「金融政策や為替急変、インフレ再燃、個人消費の落ち込みといったリスクもありますが、基本的に個別銘柄での対処となり、特別なことはしません。ただし天災リスクは別。南海トラフ地震および南海トラフ近海での津波の可能性に備え、それに応じた銘柄をリスクヘッジとして保有します」(DUKE。さん)

トランプ相場にどう対処するか

億り人さんへのアンケート、最後の質問はリスクへの対処法です。

「上記のようなリスクにより急激な円高(ドルの暴落)を伴う株価暴落が発生する可能性もあります。『世界同時株安』となればコロナショック以来、5年ぶり。有望な企業がバーゲンセールとなるのでキャッシュを多めにしておくことが対処法です」(はっしゃんさん)

「スタイルが基本的に持ちっぱなしなのでマクロリスクは全受け」と潔く言い切る御発注さんは少数派。あらかじめ暴落を想定し、下げたときに買いたい銘柄をチェックしている億り人が多いようです。

「日米の金融政策変更による株安は想定されるリスクであり、あとは『いつ起こるか』。暴落があれば、買いたい銘柄は高配当株、優待株を中心にチェック済みです」(JACKさん)

「暴落したら欲しい銘柄を拾う。ただ、それだけ」(愛鷹さん)

より積極的にリスクヘッジのために、信用取引を使うという億り人さんも。

「今年はできる限りフルポジションで株を持つのではなく『キャッシュポジションを一定金額、確保しておく』『チャートの崩れている銘柄を信用売りしてリスクヘッジする』などを心がけたいと考えています」(なのなのさん)

初心者はちょる子さんのアドバイスに耳を傾けるのも良さそうです。

「トランプ政権になり、ボラティリティは高まると思います。なが~く資金流入が見込め、配当性向が高く、財務状況のいい銘柄を少しずつ買うのがいいと思いますし、私もそうします」(ちょる子さん)

株式投資の先輩たちがくださったアドバイスには、2025年の株式市場で成功するための秘訣がつまっています。銘柄選びやリスクへの対処法など、ご自身の投資スタンスに合わせて取り入れてみましょう。