株式市場で「銀行」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は1.4%となり、東証株価指数(TOPIX、0.3%高)を上回りました(3月14日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
日銀による追加利上げ観測高まる
日銀の追加利上げ観測を背景に、足元で長期金利の上昇が顕著になっています。
国内債券市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが、10日に1.575%と2008年10月以来、16年5ヵ月ぶりの高水準を付け利ざやが改善するとの期待感から銀行株が買われました。
日銀は1月に公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、先行きの経済・物価・金融情勢次第としながらも、現在の実質金利が極めて低い水準にあるため、政策金利を引き上げて金融緩和の度合いを調整していく方針を示しています。
市場では、7月にも追加利上げに動くとの観測もあります。
投資判断・目標株価引き上げ【楽天銀行】
上昇率首位はインターネット専業銀行で国内最大手の「 楽天銀行 」です。証券会社が投資判断を引き上げたことなどが手掛かりとなりました。
同社は楽天グループの顧客基盤を活用した口座獲得推進により、残高・口座数を順調に伸ばしており、2024年末時点で預金残高は前年比約17%増の12兆円、口座数は約12%増の1648万件となりました。
運用資産の8割が変動金利ベースとなっているため、日銀の利上げが業績面で追い風となりそうです。
金利上昇で通期の業績予想を上方修正【第四北越】
上昇率2位は新潟地盤の金融グループである「 第四北越フィナンシャルグループ 」です。14日に、2025年3月期の連結純利益が前期比32%増の280億円(従来予想は250億円)になりそうだと発表しました。
市場金利の上昇などに伴って貸出金利息や有価証券利息配当金などの資金利益が想定以上に伸び、経費が当初予想を下回る見込みであることが寄与しました。
好調な業績を踏まえ、期末配当を70円(従来予想は56円)に引き上げたほか、政策保有株を一段と削減する方針を示したことも評価されました。
政策保有株で巨額の含み益、株主還元の拡充方針も
「 京都フィナンシャルグループ 」は、傘下の京都銀行が任天堂や京セラ、ニデックなど、京都発の世界的な大企業に創業初期から出資しており、巨額の含み益を抱えています。これらの銘柄の一部を売却すれば株主還元への期待感が高まりそうです。
「 いよぎんホールディングス 」は、愛媛県地盤の伊予銀行を中核とする金融グループです。2026年度末までに政策保有株式を取得原価ベースで250億円削減し、株主への利益還元を充実させるため総還元性向を50%以上とする方針を掲げています。
「 コンコルディア・フィナンシャルグループ 」は、地銀最大手の横浜銀行を中核に、東日本銀行や神奈川銀行などを傘下に置く金融グループです。2025年10月に「横浜フィナンシャルグループ」に社名変更を予定しており、投資家の認知度が高まりそうです。
春闘の結果を受けて利上げ確率高まる
日銀の植田総裁は、「2025年は賃金の上昇を伴う形での2%の持続的・安定的な物価上昇の姿に近づく」と予想しており、春季労使交渉(春闘)の動向は極めて重要です。
3月14日に公表された2025年春闘の第1回回答集計では、基本給を底上げするベースアップと定期昇給を合わせた正社員の賃上げ率は5.46%と、前年同期(5.28%)を上回り34年ぶりの高水準となりました。
中小労組の賃上げ率も5.09%と前年同期(4.42%)を上回り、33年ぶりの5%超えとなりました。大企業中心に満額回答が相次いだほか、中小企業にも賃金上昇が波及しました。
春闘の結果を踏まえ、日銀が追加利上げに踏み切る確率は高まったとみられます。
3月18~19日開催の日銀金融政策決定会合では金利を据え置きましたが、今後の植田総裁や日銀審議員の発言により、次の利上げ時期は有力とされる7月から早まる可能性もありそうです。なお、日銀が昨年7月に政策金利を0.25%に引き上げる前に「地方銀行」を取り上げていました(『13年ぶりの金利水準 「地方銀行」関連株が上昇』)。