株式市場で「総合不動産」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は3.3%と、東証株価指数(TOPIX、1.7%安)に対して逆行高となりました(3月28日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
物言う株主が株式取得
上昇のきっかけは、アクティビスト(物言う株主)による株式取得の報道です。
米ヘッジファンドのエリオット・インベストメント・マネジメントが住友不動産の株式を取得したと、3月24日に伝わりました。両者は株主価値の向上策について協議しているようです。
他の不動産デベロッパーを巡っても、アクティビストが株式を取得し、株式価値の向上を迫るケースが増えています。業界の株主還元拡大の流れが一段と強まるとの思惑から、関連銘柄に買いが優勢になりました。
また、公示地価の上昇も支えになりました。国土交通省が18日発表した2025年1月1日時点の公示地価は、全国全用途平均が4年連続で上昇。商業地の上昇が目立ち、東京23区が11.8%、大阪市が11.6%、福岡市は11.3%と大きく上がりました。
将来的な不動産デベロッパーの業績に寄与するとの期待も、関連銘柄の物色を誘った模様です。
株主還元に好業績も【住友不動産】
上昇率首位の「 住友不動産 」は近年、株式還元の強化や資本効率の改善を積極化させていました。2024年5月には年間100円配当を当初目標から2年前倒しすると公表し、同12月には350億円を上限とする自社株買いを発表しています。エリオットによる要請が強まれば、株主還元が一段と強まるとの見方があります。
同社はオフィスビルやマンションなどの賃貸事業が強みです。分譲マンションの販売単価の上昇などが寄与し、28日には25年3月期の連結純利益が前期比8%増の1910億円と従来予想を10億円上回りそうだと発表しました。足元の好調な業績も物色を支えそうです。
丸の内エリアに強み【三菱地所】
上昇率2位の「 三菱地所 」も株主還元に力を入れています。同社は24年5月に発表した長期経営計画の改訂版で、30年度までに原則として毎年3円増配する「累進配当制度」を導入し、24年からの3年間は年間に約500億円ずつの自社株買いをする方針を示しています。
同社は東京・丸の内エリアでオフィスビルや「丸の内ビルディング」などの商業施設を始めとする強力な収益源を持つのも魅力です。足元の業績も好調で、25年3月期連結純利益は前期比3%増の1730億円と、24年に続き過去最高益を更新する見込みです(会社予想)。住友不動産に続く、業績の上振れも期待されます。
還元強化が各社で加速
「 東京建物 」はJR東京駅八重洲口前周辺の再開発に取り組み、複合施設「TOFROM YAESU(トフロムヤエス)」の建設などを進めています。物言う株主の英パリサー・キャピタルが24年10月に株式を取得したのも明らかになっています。
「 三井不動産 」もエリオットが株式を取得したのが24年2月に伝わっています。報道後の24年4月、三井不動産は総還元性向の引き上げなど、株主還元の強化方針を発表しました。
「 野村不HD 」は分譲マンション「プラウド」などを手掛けています。足元の好調な業績を受け、25年3月期の期末配当を期初の予定から積み増す方針です。
世界経済の不透明感も後押し?
トランプ米大統領の関税政策などを巡り、日本への影響を含む世界経済の不透明感が強まっており、安定収益を期待できる不動産株の魅力は高いという声もあるようです。世界経済の不透明感の強まりを受けて、日銀が次回以降の金融政策決定会合で利上げを急がない姿勢を示したと受け止められれば、再び物色される可能性もあります(『マイナス金利解除も買い安心感 「総合不動産」関連株が上昇』)。市況改善が続く内需銘柄という側面も見逃せません。
もっとも、世界的な景気後退局面に陥れば、長期的には不動産銘柄にも逆風となり得ます。投資家心理を見極めるうえでも、米政権の関税策の行方や経済指標などの変化に注意する必要がありそうです。