トランプ関税でドル安進行 「円高メリット」関連株が上昇

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株式市場で「円高メリット」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は2.4%となり、東証株価指数(TOPIX、10.0%安)に対して逆行高となりました(4月4日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

トランプ米政権の相互関税は想定以上の厳しい内容

トランプ米大統領は2日、貿易相手国と同じ水準の関税を課す「相互関税」の詳細を発表しました。

全ての国に対して一律10%の関税を課したうえで各国の関税および非関税障壁を考慮して国・地域別に税率を上乗せし、関税率は日本が24%、中国が34%、欧州連合(EU)が20%など想定以上に厳しい内容となりました。

さらに中国が報復関税の方針を示したことで、今後の世界的な景気後退や貿易戦争の激化に対する懸念が拡大。株式市場では世界同時株安の様相を呈し、外国為替市場では急速にドル安が進み円相場は一時1ドル=144円台まで上昇しました。

一般的に海外から物品などを輸入し国内で販売する企業にとっては、円高進行は業績を押し上げます。そうした円高メリット関連株に収益改善への期待から買いが優勢になりました。

中国・ASEANが製造拠点【ワークマン】

上昇率首位は作業服大手のワークマン 」です。

同社は高品質かつ低価格な商品提供のため製造拠点を海外に設置し、中国や東南アジア諸国連合(ASEAN)で製造した商品を輸入して仕入れています。そのため、外国為替市場で円高・ドル安が進むと調達コストの低下につながるとの期待感が高まりました。

4月1日に発表した3月の既存店売上高が前年同月比2.2%増となり、3カ月ぶりにプラスに転じたことも安心感を与えました。気温上昇で作業服やカジュアル衣料で春夏衣料が好調に推移したほか、コラボ企画が好評でワーキングウエアやバッグの売上高が伸びました。

輸入依存度が高い【パルグループ】

上昇率2位は総合アパレル企業で、雑貨店「3COINS」などを展開するパルグループホールディングス 」です。

グループ商品のほとんどを輸入に依存しているため、為替相場の変動で仕入れ価格が左右され売上高総利率が変化します。売り上げ全体の約4割を占める雑貨事業では販売価格の上限を設定している商品が多いため、円高・ドル安の進行は仕入れ価格の抑制につながり、粗利率の改善につながると期待されます。

円高・ドル安で採算改善に期待

業務スーパーを展開する神戸物産 」は、2024年10月末現在で世界に約500社の協力工場を持ち、「世界の本物を直輸入」をコンセプトに世界各国から仕入れた本場の商品を輸入して提供しています。為替相場が円高・ドル安になればコスト低減につながるとみられています。

家具大手のニトリHD 」は、商品の約9割を人件費の安いアジアなど海外で生産して輸入する製造小売り(SPA)モデルのため、対ドルで1円の円高が年20億円の増益要因になるとみられています。

100円ショップ運営のセリア 」は、取扱商品のほとんどを国内企業から調達しているものの、仕入れ先の大半は海外から原材料や商品を調達しています。為替相場の変動がタイムラグを伴って業績に影響することがあるといいます。

輸出・輸入企業、追い風の分水嶺は1ドル=147円06銭

日銀が1日に発表した3月の全国企業短期経済観測調査(短観)において、2025年度の想定為替レート(全規模・全産業)は1ドル=147.06円でした。この水準から円高・ドル安が進むと輸出企業にとっては業績悪化要因となり、輸入企業にとっては採算改善の期待が高まるとみられます。

昨年8月も、日銀の追加利上げと米連邦準備理事会(FRB)による早期利下げへの思惑を背景に円高が進行し、円高メリット関連株が上昇しました(『相場の転換点か 「円高メリット」関連株に底堅さ)。 足元の円高の要因となっているトランプ政権の関税政策の先行きは不透明です。政策の動向によっては、為替相場の方向性が逆転する可能性もあり、輸出企業・輸入企業の株価は、為替相場に左右されやすい展開が続きそうです。