「バフェット効果」や円高でバリュー株優位か

カエル先生の株式相場プレイバック/ 日興フロッギー編集部平松 慶

マーケットの「温度感」がわかる連載「カエル先生のマーケットハイライト」。今回は、久しぶりに日本株を買い増したバフェット氏の動向や、2025年度に最高益の更新が期待される銘柄について解説します。

カエル先生の一言

東証に上場する銘柄を対象とした株価指数であるTOPIX(東証株価指数)が、3月に2025年の高値をつけるなど、全体では堅調な動きも見られた日本株市場。しかし、トランプ政権による関税政策の動向やアメリカ景気の後退懸念などから、31日には日経平均株価が1500円超下落。4月以降も当面は値動きの荒い展開が続きそうです。

3月の日本株市場

3月31日の日経平均株価は3万5617円、前月末比1537円安でした。先月に引き続き、トランプ政権の関税政策による景気への悪影響などが懸念され、日経平均株価は上値の重い展開となりました。とりわけ31日には、前週末比1500円超の下げ幅を記録。アメリカ経済が物価上昇と景気停滞が同時に進む「スタグフレーション」に陥るリスクを投資家が感じ取り始めたことなどが株価急落の背景となりました。

一方、TOPIX(東証株価指数)は19日に2025年の高値を更新。長期金利の上昇や、アメリカの著名投資家ウォーレン・バフェット氏が日本の商社株を買い増したことなどを受けて、銀行や商社株などに買いが集まりました。

海外投資家による日本株買い越しの動きも

バフェット氏が率いる投資会社「バークシャー・ハザウェイ」は、2019年7月から日本の大手商社株への投資を始め、これまで株式の保有比率を引き上げてきました。

優良な企業を魅力的な株価で長期保有する「バリュー投資」で莫大な資産を築いてきたバフェット氏。実際に保有する各商社の業績は上向き、足元の株価は「 伊藤忠商事 」が2019年6月末の約3.3倍、「 三井物産 」は約3.1倍、三菱商事は約2.7倍となっています(いずれの銘柄も2025年3月31日終値ベース)。

2023年6月以降は買い増しが途絶えていたものの、2025年2月下旬に公表された「株主への手紙」では、保有比率の上限を緩和することで各社と合意したとし、商社株への買い増しに意欲を示していました。

その後、3月17日にバークシャーが5大商社株(三井物産、三菱商事、「 丸紅 」「 住友商事 」、伊藤忠商事)を買い増したことが明らかになると、国内外の投資家の買いを誘う「バフェット効果」が広がりました。日本取引所グループの発表によると、3月第3週(17〜21日)の投資部門別売買動向(東証と名証の合計)で、海外投資家の現物株と株価指数先物の買越額は6973億円に。およそ2ヵ月ぶりの高水準となる場面もありました。

市場では、これまで商社株を買い増してきた時と比べて足元の相場は高揚感がないといった見方もあるものの、「投資の神様」と呼ばれるバフェット氏の動向には、今後も関心が集まるかもしれません。

日銀の追加利上げは続く見通し

3月18日、19日に行われた日銀の金融政策決定会合では、事前の市場予想通り、政策金利の据え置きが決定されました。ただ、会合後の植田総裁の会見では、トランプ政権による関税政策の影響で不確実性が高まっていることを言及しつつも、引き続き経済・物価の見通しが実現していけば、今後も追加利上げを進めていくスタンスを改めて示しました。

一方、19日にアメリカで行われたFOMC(連邦公開市場委員会)でも政策金利は据え置かれ、同日公表された経済見通しの中央値は、年内の追加利下げ回数が2回のまま維持されました。

日本では利上げ、アメリカでは利下げと、日米の金融政策の方向性が逆であることから、今後もドル安・円高の基調は続くことが予想されます。引き続き、金利上昇局面で相対的に物色されやすいバリュー株や円高で恩恵を受ける内需関連株などは買われやすい展開となりそうです。

2025年度に最高益更新が期待される銘柄をチェック

4~5月にかけて、3月期決算企業の本決算と2025年度の会社計画の発表が本格化します。2025年度の会社計画については、外部環境の不透明感が強いこともあり、例年より保守的な内容となる可能性もあります。株価の変動が激しい足元の状況下では、業績面で安心感のある銘柄を押し目買い(一時的に株価が下落したタイミングを見計らって買いを入れること)する戦略が有効と言えそうです。

そこで今回は、TOPIXに採用されている2、3月期決算企業のうち、2025年度に最高益更新が期待される銘柄をいくつかご紹介します。 ログインして「日本株投資戦略 4・5月合併号」を見る

アダストリア
ADEKA
リゾートトラスト
富士電機
ヒロセ電機
川崎重工業
西松屋チェーン
エイチ・ツー・オー リテイリング
住友不動産
ミスミグループ本社

※三菱商事(8058)は、記事執筆時点で公開買い付けが行われています。