インバウンドも取り込み 「ラーメンチェーン」関連株が上昇

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株式市場で「ラーメンチェーン」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は5.8%と、東証株価指数(TOPIX、0.6%安)に対して逆行高となりました(4月11日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

値上げ浸透、月次売上高も好調

ラーメンチェーンの関連株が上昇した背景は二つ挙げられます。

一つは旺盛なインバウンド(訪日外国人)需要を取り込んだ業績の伸びや価格改定。もう一つは、米関税の影響を受けにくい内需株の一角といった材料です。

観光庁の2024年の「インバウンド消費動向調査」によると、外国人が「一番満足した飲食」はラーメンが18.9%と肉料理の32.3%に次いで人気でした。

ラーメンには「1000円の壁」と呼ばれる1杯の価格が1000円を超えると客足が伸びず、売れなくなるという定説がありますが、インバウンドには意識されにくいため値上げに踏み切りやすいとの見方もできそうです。

国内でも全体的な物価上昇によって、生活防衛意識の高い消費者も、値上げを受け入れざるを得ない状況となりつつあります。

トランプ米大統領の発言によって相場全体が乱高下するなか、関税の影響を受けにくい内需株の一角との見方も、買い安心感につながったようです。好調な月次売上高を発表した企業も相次いだため、ラーメンチェーン関連株が物色されました。 

幹線道路沿いに店舗数拡大【丸千代山岡家】

上昇率首位の丸千代山岡家 」は東日本の主要幹線道路沿いを中心にラーメン店の「山岡家」を展開しています。直営店のみの出店にこだわり、年中無休24時間営業を基本としているほか、広い駐車場を備えているのが特徴です。

10日に発表した3月の既存店売上高は客数が前年同月比で21%伸びたのが寄与し、24%増と好調だったのが好感されました。

3月28日には業績の好調を理由に中期経営計画の更新を発表して数値目標を引き上げたほか、配当性向を28年1月期までに段階的に20%まで引き上げる方針を新たに示しました。

経営ビジョンの国内300店舗の達成に向け、26年1月期に10店舗、27年1月期に15店舗、28年1月期に20店舗を新規出店して、合計233店にする計画としています。

幅広い飲食チェーン店を展開【物語コーポレーション】

上昇率2位の物語コーポレーション 」は広い駐車場を備えたラーメン店「丸源ラーメン」や焼き肉食べ放題の「焼肉きんぐ」などを中心に、幅広い飲食チェーン店を展開しています。

9日に発表した3月の直営店とフランチャイズ店を合わせたラーメン部門の既存店売上高は10%増と、グループ全体の5%増を上回りました。丸源ラーメンでは24年10月と12月に値上げしたものの、客数は6%増とプラスを維持しています。客数を落とさずに原材料費の高騰を価格転嫁する価格戦略が続くかどうかに注目です。

相場が不安定でも好調な業績で逆行高に

力の源ホールディングス 」は豚骨ラーメンの「一風堂」などを運営しています。7日に発表した3月の既存店売上高は1%増えました。

ラーメンチェーンの幸楽苑 」も8日に発表した3月の直営店既存店売上高が16%増と好調でした。

ハイデイ日高 」はラーメンを看板商品とする中華料理チェーン「日高屋」を運営しています。2日に単独営業利益が6年ぶりに最高となったと伝わり、決算発表を前に買いを集めました。

いずれの企業も好調な業績を背景として相場が不安定ななかで逆行高となっています。

小麦粉の価格低下も追い風か

主要な製粉会社が業務用小麦粉の値下げを相次いで発表したのもラーメン関連銘柄には追い風となりそうです。

日清製粉グループ本社は10日、業務用小麦粉の特約店向け仕切り価格(特約店庫前渡し)の改定を通知したと発表しました。25年7月10日納品分から、25キログラムあたりの価格を強力系小麦粉は55円、中力・薄力系小麦粉は65円、国内産小麦100%の小麦粉は55円引き下げます。ニップンと昭和産業も11日に業務用小麦粉の値下げを発表しました。

政府が輸入して製粉会社へ売り渡す小麦の価格は、国際相場や為替などの過去6カ月間の変動分を反映して4月と10月の年2回、見直されています。25年4月の見直しでは5銘柄平均の政府売渡価格が平均4.6%引き下げられました。

ラーメンチェーン関連株は新型コロナウイルスの感染が拡大しても行動制限が課されなくなり、客足が回復した局面でも物色されました(『みんな大好き“日常食”が回復 「ラーメンチェーン」関連株が上昇)

今回はインバウンド需要だけでなく、原材料価格の上昇一服といったフォローの風も加わりそうです。飲食店全体では米価高騰など原材料費の増加が負担となっている一方、主原料の小麦粉の価格が低下するラーメンチェーン関連株には採算が改善する展開に期待が高まっています。

※力の源HD(3561)は、記事執筆時点で証券金融会社の注意喚起銘柄に指定されています。