実用化秒読みか 「iPS細胞」関連株が上昇

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株式市場で「iPS細胞」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は11.2%と、東証株価指数(TOPIX、3.7%)を大きく上回りました(4月18日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

iPS細胞の明るいニュースが相次ぐ

iPS細胞関連株が上昇した要因は、iPS細胞による再生医療の実用化への期待の高まりです。

京都大学医学部付属病院が14日、iPS細胞から作製した膵臓(すいぞう)細胞を糖尿病患者に移植する臨床試験(治験)で、1例目の移植が完了したと発表しました。経過は良好で、近く2例目も実施予定です。

16日には、同大学iPS細胞研究所(CiRA)などがiPS細胞を使ったパーキンソン病の臨床試験(治験)で安全性と有効性を示唆する結果が英科学誌に掲載されました。協力企業の住友ファーマが実用化を目指します。

4月上旬には大阪大学発のスタートアップのクオリプスがiPS細胞から作製した心筋シートの製造販売に向けた承認申請を厚生労働省に申請したとの発表もありました。

iPS細胞に関する明るいニュースが続いたことを受け、再生医療の実用化に向けた期待が高まり、関連銘柄への物色を誘いました。

パーキンソン病治療薬の治験にまい進【住友ファーマ】

上昇率首位の住友ファーマ 」はiPS細胞の実用化に向けた研究開発に取り組んでいます。パーキンソン病治療のためのiPS細胞活用については日本で承認申請に取り組んでいるほか、米国で治験を進めています。視野の欠損などを引き起こす網膜色素上皮裂孔の治療に関する治験も日本で進めています。

CiRAなどと取り組むパーキンソン病治療の治験に関しては、早ければ今夏にも厚生労働省に製造販売承認を申請すると伝わっています。いずれの病気も根本的な治療法がないため、実現すれば世界的にも大きな意義のある取り組みです。

 治療薬の実現も近い?【サンバイオ

上昇率2位のサンバイオ 」も再生治療を実現する細胞治療薬の開発に取り組んでいます。主力製品である外傷性脳損傷の治療薬「アクーゴ」はiPS細胞ではなく、体性幹細胞の一つである間葉系幹細胞を加工や培養して製造しており、2024年7月には厚生労働省から販売や製造の承認を「条件及び期限付き」で取得しました。

正式承認に向けた改善も順調に進んでおり、従来の予定通り5~7月の出荷開始を目指すと18日に発表しました。アクーゴが実用化されれば、サンバイオの業績に大きく寄与することが期待されます。

「ゲームチェンジャー」になれるか

ジャパン・ティッシュエンジニアリング(J-TEC) 」は日本で初めて再生医療関連製品の国内での承認を実現した企業です。患者本人の細胞を培養して作る軟骨や角膜など5つの製品やiPS細胞から人工的に臓器の環境を再現する「オルガノイド(ミニ臓器)」の製品化に関わる特許などを保有しています。

ヘリオス 」はiPS細胞などを用いた再生医療製品の開発を手掛けています。がん治療への活用や住友ファーマと共同で網膜細胞を使った医薬品の治験などを進めています。

セルシード 」は体性幹細胞を活用した細胞シートの実用化を目指し、東海大学と共同で膝の軟骨を再生する細胞シートの開発に取り組んでいます。

いずれの企業も根本的な治療法がない難病などに対する「ゲームチェンジャー」としての役割が期待されます。

万博では「iPS心臓」が注目

13日に開幕した大阪・関西万博では、iPS細胞から作成した直径3センチメートル強の「ミニ心臓」が注目されています。展示するパソナグループのパビリオン前には1時間半待ちの行列ができました。クオリプスが製造する心筋シートも展示されています。

iPS細胞などを活用した再生医療の実現に期待が先行する半面、未知の領域も残されており、実用化までの距離感などがイメージしづらい面もあります。万博に足を運び、実際の展示品を見学するのは投資判断にも役立つのではないでしょうか。

※ジャパン・ティッシュエンジニアリング(J-TEC)(7774)は、記事執筆時点で証券金融会社の注意喚起銘柄に指定されています。