株式市場で「自動車」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は3.6%と、東証株価指数(TOPIX、2.7%高)を上回りました(4月25日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
トランプ米大統領が中国に対して大幅な関税引き下げを検討
トランプ米大統領による高関税政策に対する過度な懸念が後退したことが好感されました。米ウォール・ストリート・ジャーナルは23日、トランプ政権が中国との貿易摩擦を緩和するため関税率の大幅な引き下げを検討していると報じました。
これまで米中で関税引き上げ合戦が過激化し、米国は中国に対して追加関税を合わせて145%課す方針を示していましたが、これを50~65%引き下げるほか、安全保障上の脅威ではないと判断した品目については35%にするなどの案も検討されているようです。
米政権が強硬姿勢を軟化させるとの報道を受け、自動車関税についても緩和措置が取られるのではとの思惑を誘いました。
米国で追加投資、グループ再編の期待も【トヨタ】
上昇率首位は自動車最大手の「 トヨタ自動車 」です。
トヨタは23日に、米ウェストバージニア工場に8800万ドル(約125億円)を追加投資し、次世代ハイブリッド車(HEV)向けのトランスアクスルの生産ラインを新設すると発表しました。
トヨタの電動化戦略を支える重要なハイブリッドシステムの構成部品で、2026年後半から生産を開始してトヨタ車およびレクサス車への搭載を予定しています。
今回の投資は米国で販売好調なHEVの拡大を意図したものに加え、トランプ大統領による高関税政策に対して対米投資に積極的な姿勢を示したことで意義が大きそうです。
27日にはトヨタ創業家が源流企業の豊田自動織機に対して株式非公開化を検討すると伝わり、グループ再編への期待感も株価上昇の追い風になりそうです。
自動車関税発動後に米国販売停止【三菱自動車】
上昇率2位は「 三菱自動車工業 」です。
25%の自動車関税が発動されたことを受けて、米国販売店向けの出荷を一時停止する方針が明らかとなりました。
三菱自は多目的スポーツ車(SUV)「アウトランダー」を中心に、2024年に米国で10万9843台を販売しましたが、米国に工場を持たず全量を日本などから輸入しているため、自動車関税引き上げの影響は大きいとみられます。
ただ、トランプ大統領が高関税政策を見直し、自動車関税の大幅引き下げなどがあれば米国向け出荷も再開する可能性があり注目されます。
悪材料出尽くし感、経営統合による相乗効果に期待なども
「 日産自動車 」は、24日に2025年3月期の連結最終損益が7000~7500億円の赤字と、従来予想(800億円の赤字)を大幅に下振れしたと発表しました。経営再建に向けた構造改革費用が膨らんだことが主因で、目先の悪材料出尽くし感から買い戻しが入りました。
「 SUBARU 」は、北米が売上収益全体の約8割を占める重要な市場となっているため、米国による高関税策や円相場の変動による業績への影響は大きいとみられています。それだけに、トランプ大統領の関税政策に対する態度の軟化や、円高・ドル安の一服で安心感が広がりました。
「 日野自動車 」は、独ダイムラートラック傘下の三菱ふそうトラック・バスとの経営統合を最終調整していると伝わったのが好感されました。エンジン認証不正問題が収束に向かったことで協議が前進し、経営統合による相乗効果が期待されます。
円高・ドル安の一服も追い風
自動車関連株は販売動向に加え、海外での価格競争力に影響する円相場の動向に左右されやすい面があります(『販売好調と円安で収益拡大期待 「自動車」関連株が上昇』)。
外国為替市場で円相場は22日、1ドル=140円の大台を突破し円高・ドル安が進みました。その後、トランプ大統領がパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長に対する解任要請を撤回したほか、24日に開催された日米財務相会談でベッセント米財務長官が「ドル安・円高が望ましい」としながらも具体的な為替目標は求めなかったことで、米国による円安是正に対する過度な警戒感が後退したことから円高・ドル安が一服しました。
米国の高関税政策の影響で基軸通貨としてのドルに対する信任が揺らぎドル安が進みましたが、トランプ大統領の態度軟化で関税政策が大幅に見直されると、円高・ドル安圧力も弱まり自動車などの輸出関連株にはプラスに作用しそうです。
トランプ政権が29日、米国内で生産する完成車を対象に自動車・部品関税の負担軽減措措置を発表したことも自動車株にとって追い風となりそうです。