みなさんこんにちは! 公認会計士兼税理士の山田真哉です。
今回は2025年4月から改正された失業保険と、秋に始まる新しい給付金制度、そしてさらに続く大改正について、最新情報をまとめて解説していきたいと思います。
お送りする内容は、以下の通りです。
・2025年4月からの失業保険 大改正
・2025年10月からの新しい給付金と最大50%返済免除の融資制度
・2028年10月、さらに大改正
雇用保険 5つのメリット
雇用保険の対象は、正社員なら全員(公務員を除く)、パート・アルバイトなら週の労働時間が20時間以上かつ31日以上の勤務見込みがあり、学生ではない人です。2025年度の保険料の料率は、一般的な会社の場合、労働者負担が1000分の5.5、雇う側である事業主負担が1000分の9です。月給20万円の方であれば、労働者負担は月1100円、事業主負担は月1800円と、非常に安い保険です。そして、安い保険料の割に、雇用保険には大きなメリットが5つあります。
①求職者給付
②就職促進給付
③教育訓練給付
④雇用継続給付
⑤育児休業給付
まず1つ目は求職者給付です。失業して仕事を探してる場合、失業給付、いわゆる失業保険(雇用保険の基本手当)をもらえます。おおよそ月給の45%から80%を、数ヵ月間もらうことができます。実際にどれぐらいもらえるのかは、シミュレーションサイトがたくさんありますので、ご自身の年齢や勤続年数、そして月給を入れて、具体的な金額を確認してみてください。なお、65歳以上の方は高年齢求職者給付金という失業保険がもらえます。
2つ目は就職促進給付です。失業給付を受けている方が安定した職業に就くと、再就職手当をもらえます。
3つ目は教育訓練給付です。国が認めた講座を受けると、最大で受講料の80%を、雇用保険から出してくれます。さまざまな講座が対象で、実質とても安く教育を受けることができるという制度です。
4つ目が雇用継続給付で、例えば介護休業している際に賃金の67%をもらえるといった制度があります。
5つ目は育児休業給付です。育児休業の際に、育児休業給付金がもらえます。
育児休業給付金はこれまで実質手取りの80%程度でしたが、2025年4月からは最大28日間、実質手取りの100%になりました。つまり働いている時と同じだけの金額を育児休業期間中ももらうことができます。子育て支援ということでかなり改善されています。また、同じタイミングで利用者が少なかった就業手当は廃止になりました。
そして、一番大きく変わるのが失業保険です。
【大改正】2025年4月からの失業保険
これまでの失業保険は、自己都合で退職すると、その日のうちにハローワークに行って求職の申し込みをしても、7日間の待機期間がありました。要は本当に失業しているかどうかの確認期間です。さらに給付制限で2ヵ月間もらえない期間がありました。給付制限の後、再度ハローワークに行くことで失業が認定され、1週間以内に振り込みがあるといった流れでした。ですので、会社を辞めてから実際に失業保険をもらうまでに3ヵ月ぐらいかかっていました。それが2025年4月から、給付制限が1ヵ月に短縮されました。退職してから実質2ヵ月ほどでもらえるようになります。
病気や家族の事情で辞めた特定理由離職者や公共職業訓練を受ける方々は、給付制限がないので、7日間の待機期間が終わったら失業保険をもらうことができます。例えば4月1日に辞めたとすると、4月の下旬には失業保険がもらえるので、お給料と同じような間隔でもらえることになります。ちなみに公共職業訓練は、毎月開講されていて、会計やウェブ関係、介護などもありますが、建築やものづくり系が多いです。
そして、今回の改正ではそれだけではなく、非常にジャンルが幅広い教育訓練給付金の対象講座を受けている人も、給付制限がなくなりました。失業者にとって、とても手厚い改正が行われています。
2025年10月からの新しい給付金と
最大50%返済免除の融資制度
さらに雇用保険の改正は2025年10月にもあります。メリットの3つ目に挙げた教育訓練給付のなかで、教育訓練休暇給付金が始まります。これは、会社員の方が給料なしの休暇を取って教育訓練を受けた場合、失業保険と同程度の給付金が90日、120日、もしくは150日間もらえる制度です。具体的には、大学や専門学校、国が指定している教育訓練などが対象です。つまり、失業していなくても、失業期間と同様に給付金がもらえるようになります!
雇用保険へ5年以上加入していることが条件なので、一定期間働いている必要があります。この機会に、新しい知識を身に付けようとする方は、思い切って会社を休んで勉強するのもアリかもしれません。ただこれは会社側の協力も必要なので、長期休暇が取れる大企業向けと言えます。もしくは中小企業でも、経営陣を説得できたら上手く使える のかもしれません。
そして、もう一つ新しい制度ができる予定です。それはリ・スキリング等教育訓練支援融資という「雇用保険対象外」の人にお金を貸してくれる制度です。過去3年以上、働いている方が対象です。想定している対象者は、ずっとフリーランスで働いている、退職してからしばらく時間が経っている、失業保険をもらいきってしまった、勤務先がいわゆるブラック企業で雇用保険に入ってなかった方々です。
教育訓練費と生活費として、それぞれ上限年間120万円、利率2%で最大2年間借りることができます。これだと「よくある無担保の無保証の国の融資だ」と思うかもしれませんが、この融資の特徴は「インセンティブ措置」にあります。例えば教育訓練を受けた後、賃金が10%以上上昇すると、返済額を最大50%免除してもらえる制度で、実質半分は給付金のような制度なのです。
例えば240万円借りた場合でも賃金が10%上昇すれば、返すのは120万円だけで良い。それほど新しく勉強し直して、給料が高いところに転職することを国が非常に推していることがわかります。
もちろん、これまでも給付金や融資制度はあったのですが、今回の特徴は、収入要件がなく、幅広い教育訓練から選ぶことができるという点です。まさにこれから新しく勉強したい、でも金銭的な不安を感じている方には、非常に有効な制度になるのではないでしょうか。細かい条件等はこれから発表されていくと思われます。
2028年10月、さらに大改正
そして、2028年10月、さらなる改正があります。雇用保険の大改正の集大成ともいえる「パート・アルバイトの雇用保険の加入条件の変更」です。これまでパート・アルバイトの加入条件は週20時間以上勤務だったのですが、週10時間以上勤務に変わります。週10時間といえば、5時間勤務が週2日ですから、多くのパート・アルバイトの方が雇用保険に入ることになるでしょう。雇用保険に入ると、失業保険ももらえるし、教育訓練給付も受けられる。何なら育児休業給付も受けられるようになるのかもしれません。そうなるとパート・アルバイトの働き方も相当変わってくると思われます。
というわけで、2025年3月15日時点の情報でした。
よかったら今後ともごひいきに。ば~い、ば~い!