手軽な移動手段の一つとして「パーソナルモビリティ」が注目されています。二輪車の製造技術を活かし、未来型のモビリティを提案する川崎重工業を中心に各社の動向をご紹介します。
川重が大阪・関西万博でモデルを披露
4月に開幕し現在開催中の大阪・関西万博で、「 川崎重工業 」が2050年の移動手段を想定したパーソナルモビリティのコンセプトモデル「CORLEO(コルレオ)」を披露しました。
パーソナルモビリティとは、街中など近距離の移動を想定した1~2人用の電動の乗り物です。自動車やバイクといった従来の乗り物と歩行者の中間の位置付けで、街中で見かける機会が多くなった電動キックボードや、電動車いすなどが代表例です。
高齢者や身体の不自由な人、さらには若者の足としても利用が広がっています。単純な移動手段に適したパーソナルモビリティですが、山や岩場などの悪路も乗りこなしたり、段差をものともせず走行したりと、近未来の乗り物として活躍の場を広げようとする動きも出てきました。
パーソナルモビリティとは
・近距離移動を想定した1~2人乗りの小型電動車
・歩行者と自動車やバイクなどの乗り物と中間的な位置づけ
・歩道や屋内での走行を想定したものと、車道を走行するものがある
4本の脚で走行、ライオンのようなモビリティ
川重の「CORLEO(コルレオ)」は、しし座を意味する「LEO」の名前が示すように、ライオンのような四足の脚が特徴的で、従来のようにタイヤで走るパーソナルモビリティとは異なり、一見するとロボットのような見た目です。
脚には二輪車のフレームと後輪をつなぎ衝撃を吸収する役目を果たす「スイングアーム機構」を使用。前脚と独立して後脚部分が上下に動くため、路面の凹凸を吸収しながら走行するのが特徴で、タイヤでの走行が難しい山岳地帯や水場でも移動することができます。
具体的な製品化の計画はありませんが、実現すれば年齢や体力に関係なく、秘境の風景を楽しんだり、大自然を満喫できたりするツールになるかもしれません。
社会実装を念頭に関連サービス提供の動きも
「 スズキ 」は「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」でタイヤの付いた四脚で階段や段差を昇降できる「MOQBA(モクバ)」を公開しました。平地では車輪で走り、階段などの段差では4本の脚が独立して伸縮し、スムーズに上り下りできます。車体に「への字」のフレームを使うことで脚の可動域を確保し、搭乗者の体勢を水平に保てるよう設計されています。
「 本田技研工業 」は今年4月、パーソナルモビリティの新モデル「UNI-ONE(ユニワン)」を大阪・関西万博で初公開しました。座ったまま体重移動するだけで全方位に移動することが可能で、移動中も両手が自由に使えるのが特徴です。車いすを日常生活で使う人や長時間歩くことができない高齢者などの移動手段にとどまらず、多くの人に使ってもらえるようにデザインも工夫したそうです。
「 ヤマハ発動機 」は三輪走行のモビリティ「TRITOWN(トリタウン)」を開発しました。前方に二輪を備えて立ち乗りで走行するスタイルで、観光産業での活躍を想定して実証実験などを進めています。
パーソナルモビリティの社会実装を念頭に、関連サービスの提供を進める企業も出ています。
「 日本電信電話 」グループのNTTデータコミュニケーションズは自動走行ロボット管制サービス「Robico(ロビコ)」を開発。24年9月にはスポーツ施設で複数メーカーの自動走行ロボットを一元管理するサービスを始めたと発表しました。
警備や清掃、来訪者の対応など各業務に適した複数のロボットの運用をロビコが一元的に管理することで、施設運営の負担軽減につなげます。
公共交通機関だけではカバーしきれない個人の移動ニーズをくみ取ることが可能なパーソナルモビリティが新たな「足」として活躍する日は近そうです。