設備投資増加で収益拡大期待 「油圧・空圧機器」関連株が上昇

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株式市場で「油圧・空圧機器」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は3.8%と、東証株価指数(TOPIX、0.3%高)を上回りました(5月16日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

4月の工作機械、受注額は前年比7.7%増

油圧・空圧機器の関連株が上昇した背景には、国内企業の設備投資の増加が収益を押し上げるとの期待に加え、決算の内容や積極的な株主還元姿勢への評価の高まりがあります。

日本工作機械工業会(日工会)が15日に発表した4月の工作機械受注額の速報値は前年同月比7.7%増の1302億円でした。日銀が4月1日に発表した3月の全国企業短期経済観測調査(短観)でも、大企業製造業の2025年度の設備投資計画は前期比4.8%増とプラスを維持しています。

企業の設備投資が続けば、油圧・空圧機器関連株など工作機械業界の業績の伸びが期待できそうです。

国内売上高が復調、大幅な増配を発表【アネスト岩田】

上昇率首位のアネスト岩田 」は空圧によるコンプレッサー(圧縮機)や真空ポンプ、塗装装置などの製造・販売を手掛けています。工作機械への投資増加でコンプレッサーなど空圧機器の需要も高まりそうです。

9日に28年3月期を最終年度とする新しい中期経営計画(中計)を発表し、株主資本配当率(DOE)を7.0~7.5%に設定し、26年3月期を下限とする累進配当とする方針を示しました。26年3月期の配当予想は前期比38円増の83円と大幅な増配を見込みます。25年3月期は人件費の増加や為替差益の減少で減益となりましたが、国内売上高は回復基調となっており、業績の改善も見込めそうです。

半導体やEV向けFA装置の需要が増加【SMC】

上昇率2位のSMC 」はコンプレッサーのほか圧縮空気により人の手に代わって製品の製造に携わるアクチュエーター(駆動装置)などを手掛けています。

工作機械を自動化するファクトリーオートメーション(FA)の装置の一部として幅広い業種の工場で需要があり、14日に米関税の影響を織り込んだうえで26年3月期が増収増益となる見通しを発表しました。中国を中心に半導体やEV(電気自動車)向けの需要が増加します。

併せて発行済み株式総数の1.1%に当たる75万株、300億円を上限とする自社株買いを実施すると発表したことも好感されました。

収益向上でさらなる株主還元も期待

デンヨー 」は発電機やエンジン溶接機のほか、コンクリートの吹き付け機などの動力源として使用されるエンジンコンプレッサーを手掛けています。25年3月期のコンプレッサー関連事業は国内が好調でした。増配も発表しています。

油研工業は油圧機器の専業メーカーとして幅広い油圧システムを手掛けています。15日に発表した25年3月期決算が事前の会社予想を上回り、業績に合わせて増配も発表しました。

コンバム 」は真空機器や空気圧を利用したアクチュエーターなどを手掛けています。15日に発表した25年1~3月期決算で国内は真空パッドを利用したロボットハンド関連製品が好調でした。16日には自社株買いも実施しました。

いずれの企業も国内需要は増加もしくは回復基調にあるうえ、株主への利益還元の拡充も発表しています。設備投資の増加で収益が向上すれば、さらなる株主還元にも期待を集めそうです。

国内やアジアの割合が大きい、米関税は引き続き注視

上昇率上位の5銘柄は工場の多い地域に向けた販売が多く、国内や中国、インドなどアジアの売上高比率が高いのも特徴と言えそうです。一方で米政権は自動車や半導体などの自国生産を求めており、将来的には幅広い製造業の生産拠点の米国への移転を目指しています。

物価上昇や人件費を勘案すると実現の可能性は高くないものの、主要な輸出先が米国に移った場合は関税の影響を直接受ける可能性があり注意が必要です。人手不足や人件費の増加を背景に省力化に向けた設備投資は増加基調が続く見通しですが、投資先は油圧・空圧機器以外にも多岐に渡ります。他の機械株も含め需要の強さを見極めて投資する銘柄を選定したいですね。

※油研工業(6393)は、記事執筆時点で証券金融会社の注意喚起銘柄に指定されています。