押さえておきたい3つの金融商品の基礎知識とその本質

投資がもっと楽しくなる!日興フロッギー選書/ クロスメディア・パブリッシング前川 富士雄

投資や資産形成をもっと楽しくするためにピッタリの書籍を、著者の方とともにご紹介する本連載。今回は、「ほったらかし投資」を構成する3つの金融商品の仕組みと本質について、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)としてこれまで実に1万人以上の資産運用の悩みに応えてきた前川富士雄さんと見ていきます。[PR]

1.債券の仕組み

まずは債券がどういうものか、簡単にご説明しましょう。

債券は、企業がお金を「借りて」資金調達をする方法です。「借りて資金を調達する」方法として、社債(債券)を発行します。会社からすると「借りる」ことですから、業績にかかわらず、約束の期限が来たら返さなければなりません。約束の期限を満期といいます。企業側は決められた利子も払わなければいけません。

例えば、利率2%、5年満期の債券を100万円で発行するとします。毎年2万円分の利子が発生し、企業側から見ると、5年間で利子と元金合わせて110万円を払わなければなりません。毎年の業績にかかわらず、返さなければいけないわけですから、企業からすればリスクの高い調達方法ともいえます。

反対に債券を買う側からすれば、会社が倒産でもしない限り、元本の100万円と利息分10万円(2万円×5年)が上乗せされた110万円が戻ってくるわけですから、安定した投資先になります。

「これなら銀行の定期預金と変わらないのでは?」と思われる方もいるでしょう。ただ、債券の場合は、定期預金と違って流通する市場があります。定期預金は売り買いできませんし、預けたら満期が来るまでそのまま持ち続けるか途中解約するかしかありませんが、債券の場合は証券会社を通じて売買が可能です。そのため、定期預金はインカムゲイン(資産の継続的な保有による利益)しか得られませんが、債券はキャピタルゲイン(資産の売却による利益)が得られる場合もあります。そこが大きな違いでもあります。

例えば、債券が100万円で発行されたとします。債券価格は、市場の金利に合わせて、波打つように上下変動します。一般的には、金利が上がると債券価格は下がり、金利が下がると債券価格は上がるという逆方向の動きをします。

では、損することもあるのではと心配される方がいると思いますが、債券の場合は発行時に額面100万円で始まったら、満期時に目減りすることなく、額面100万円で返ってくると決まっています。先ほども述べましたが、債券は国や企業などの借金であり、返済義務があるからです。

債券価格は、金利情勢にあわせて、波打つように変動しますが、毎年2万円分の利息は着実に積み上がり、満期には、額面100万円はそのまま額面100万円として返ってきます。100万円が5年間の利息合計10万円と合わせて110万円として戻るわけですから、手堅い投資先になります。債券投資の本質は「金利の蓄積」といえますね。

なお、この満期の期間や金利については、発行する会社の事情によって異なります。その他に、国が発行する債券として国債があります。

万が一、社債(債券)を発行した会社が倒産しても、会社整理の段階で、お金を借りた人(債権者)から優先的に返金しますので、投資したお金が1円も戻ってこない……ということはめったにありません。仮に元本すべては難しくとも、財務状況によりますが少しは戻ってくるケースが多いのです。もちろん何事もなければ、元本は戻ってきますから、株よりは怖くないといえます。

※編集注:破産手続きによらずに、破産財団から優先的に弁済を受けられる財団債権には劣後します。

2.株式投資の仕組み

そもそも、株式とは何でしょうか? 会社の資金調達の方法には、

①借りて資金調達する(A:銀行融資を受ける、B:社債を発行し資金調達する)

②出資を受けて資金調達する(C:株式を発行し出資を受ける)

と2つの方法があります。株式とは、会社が資金調達するために発行するものをいいます。そして、その株式を持っている人を株主と呼びます。

会社側から見れば出資金(株式)は債券のような返済義務がありません。そのお金を活用して継続して事業ができますので、会社側にとってはありがたい調達方法といえます。

会社側は資金調達するとき、株を発行して投資家からお金を受け取ります。そして株券(現在はペーパーレス化)を投資家に発行します。投資家はそのリターンとして、配当金や値上がり益を得るのです。

株主の権利は3つあります。

1つ目は利益配当請求権といって、配当金などの利益分配を受け取る権利、2つ目は議決権といって、会社の経営方針などについて株主総会で意見を述べたり、議決に参加したりできる権利です。そして3つ目は残余財産分配請求権といって、もし会社が解散する場合は、株式数に応じて残った財産が分配される権利です。

次に流通市場、つまり、マーケットを見てみましょう。投資家は株を売りたいとき、会社に直接買ってもらうことはできません。株式の流通市場を通じて、売りたい人と買いたい人が売買取引をします。そこでついた価格が株価になります。高くてもいいから買いたい投資家がたくさんいれば、株価は値上がりする傾向がありますし、その逆もあります。一般的には証券会社を通じて売買の発注を行います。

 

株式の本質

株式の本質についても少しだけお話ししましょう。

会社が毎年利益を出していけば、その利益が蓄積されていきます。株式投資の本質は「利益の蓄積」なのです。

例えば第1期では、100万円の資本金を使って、結果として利益が20万円出たとします。そうすると、利益率は20%となります。

この場合、

自己資本〈純資産〉利益率(ROE)

=当期純利益(20万円)÷自己資本〈純資産〉(100万円)×100[%]

=20[%]

となります。

この利益は誰のものでしょうか? 利益は社長のものでも、従業員でも、債権者でもなく、会社の所有者である株主のものです。株主のひとつの喜びですね。

そして利益20万円を、内部留保(社内に蓄積する分)と配当(その期に分配する分)に10万円ずつ割り当てました。配当はその期に直接もらえます。これがインカムゲインになります(利益配当請求権)。内部留保は会社に蓄えて、翌期以降の事業活動に活かしていきます。継続して蓄えた「資本金+留保(剰余)金=純資産」も株主のものであり、この蓄積に応じて本質的価値は積み上がります。そしてこの利益の蓄積が値上がりにつながるのです。これがキャピタルゲインになります(残余財産分配請求権)。

すなわち、「利益」は株主のものであり、2つの恩恵があるのです。ひとつは「配当」として利益の一部をその期にもらえるインカムゲイン、2つ目は「留保金」として利益の一部を蓄積し、毎期積み上がっていく「純資産の大きさ」、つまりキャピタルゲインです。この2つが株主の本質的喜びです。

では次に、株価について見ていきましょう。

日々の株価は、本質に沿って理論通りに動いているのでしょうか? 決してそんなことはありません。

仮に本質として、1株あたりの純資産が「1.1」の価値があるとします。ただ、高くてもいいから買いたい人が次々にあらわれて、株価が「5」まで上がりました。株式市場では一時期、理論的にどうみてもおかしい水準まで割高に上がる現象が起きます。バブルともいわれますね。ただ、もし株式市場が正しく機能しているとすれば、本質と比べて、あまりにも高いことに気づき、売りたい人が増えていきます。

逆に本質(1株あたり純資産)が「1.1」なのに売り込まれて、例えば株価「0.1」まで下がっていったとします。株式市場では、理論的にどうみてもおかしい水準まで不安が先行して売り込まれたりします。暴落といわれます。ただ、もし株式市場が正しく機能しているとすれば、本質と比べてあまりにも安すぎることに気づき、再び買いたい人が増えるのです。

結局、株価は常に上にも下にも変動します。しかし、あまりにも本質からのブレ幅が大きすぎると、修正されるという株式市場の価格調整機能が働きます。そして5年、10年と長期的なスパンで本質、つまり利益が蓄積されている限り、ブレながらも株価は本質に沿って上がっていくといえます。

 

3.REITの仕組み

次にREITについて、少しお話ししましょう。REITと聞いて「何のこと?」と思われる方も多いでしょう。

REITとは「Real Estate Investment Trust」の頭文字をとったもので、不動産投資信託といいます。多くの投資家から集めたお金で、オフィスビルやマンション、商業施設、物流施設、データセンター、ホテルなどを購入することで、そこからもたらされる「家賃(賃貸料)収入」や「売買益」で得た利益を投資家に分配するものです。

REITの特徴として、次の3点が挙げられます。

①購入、管理などは不動産のプロが行う

②複数の不動産への投資なので、リスクが分散されている

③取引所に上場しているため、株式のように売買できる

REITの本質は、継続的に入ってくる「家賃(賃貸料)収入の蓄積」であるといえるでしょう。

投資信託としてREITを組み入れる場合は、上場している「上場不動産投資信託」をいくつかまとめて組み入れて運用されます。

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