ほったらかし投資は「2つの分散」でリスクを減らす

投資がもっと楽しくなる!日興フロッギー選書/ クロスメディア・パブリッシング前川 富士雄

投資や資産形成をもっと楽しくするためにピッタリの書籍を、著者の方とともにご紹介する本連載。今回は、「ほったらかし投資」を行ううえでの基本ルールというべき「分散」について、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)としてこれまで実に1万人以上の資産運用の悩みに応えてきた前川富士雄さんとあらためて考えてみます。[PR]

ほったらかし投資の基本ルール 分散

まずは、リスクコントロールのお話から入ります。難しい話ではありませんので、リラックスして読んでください。

私が考える投資のルールに、「分散」「長期」「積み立て」という考え方があります。さらに「プロの力を借りる」を加えた4つのキーワードが、リスクコントロールのフルコースとなります。これに忠実になればなるほど、投資としては穏やかな世界になっていきます。

しかし、一発儲けたいと思う人にとっては、面白くない世界に見えるかもしれませんね。つまり、そうした人たちが好むのは、この逆の「集中」「短期」「一気」ということです。

これでいくと上下に大きく振れますから、大きくあたることもありますが、外れる可能性も高くなります。まさしく、ギャンブル的世界なわけです。私がすすめている「ほったらかし投資」とは真逆の世界といえるでしょう。

「分散」アセット・アロケーションの重要性

分散といっても「信用リスクの分散」と「価格変動リスクの分散」の2つがあります。まず「信用リスクの分散」のお話をしましょう。投資信託の組み合わせ例を見ると、いろんなものが束になっていることがわかりますよね。

国内株式・国内債券・国内REIT・外国株式・外国債券・外国REITの6種類の投資信託を組み合わせることもできますし、外国株式だけにすることもできます。経済環境や、リスク許容度・お好みなどに合わせて、配分を決めていきます。

例えば、外国株式・外国債券・外国REITの3種類の組み合わせを考えてみましょう。仮に100万円投入するとしたら、3種類に分けるので、1種類あたり30万~40万円になります。

運用会社としては、このファンドは国内株式で運用、このファンドは外国株式で運用、このファンドは外国債券、このファンドは外国REITで……とそれぞれ役割が決まっていて、この考えに基づいて運用していきます。

例えば、外国株式だと「このファンドは外国株式で運用するので、テスラ・アマゾン・アップル・マイクロソフトなどを選んでいきます」とか「外国公益株を選んでいきます」というように外国の優良企業がたくさん組み込まれていきます。1ファンドあたり30~350銘柄あるとすると、仮に6ファンドですと180~2100銘柄あることになります。つまり上手に分散投資がしやすいのです。

ここでリスクのお話をします。みなさんは、先ほど述べたような投資信託を100万円購入して、そのお金がゼロになるときはどういうときか、想像がつきますか?

もしゼロになるとしたら、それはトヨタ、キヤノン、アマゾン、マイクロソフトなどの企業が一気に破綻するときでしょう。つまり、日本やアメリカの誰もが知る大企業が次々と破綻しない限り、100万円がゼロになることはありえません。また、運用会社のほうで良いもの悪いものの入れ替えは絶えず行っているので、リスクの高い企業はすぐに除外されます。100万円投資したお金がゼロになるとしたら「地球が消えるとき」といっていいでしょう。

とはいっても、コロナ禍のようなことを考えると、今後何があるかわかりません。1社に集中して投資するより複数の企業に束で投資しておいたほうが、将来に対する「安心」につながるのではないでしょうか。 

「一本の矢は意外な力で折れても、何百本の束の矢は折ろうと思っても折れない強さがある」のです。

価格変動リスクも分散される

 さて、もうひとつ「価格変動リスク」の分散があります。まずは、価格変動リスクのコントロールの前に、「なぜ相場で過ちを犯し、損している人が圧倒的に多いのか?」について考えます。

1.多くの人が犯す相場の失敗

投資をするうえで欠かせないのが、相場の値動きです。ご存じの通り、相場は日々動き、上下動を繰り返していきます。できれば安くなったときに買って、高くなったところで売りたいですよね。しかし実際は思うようにうまくいかず、高いときに買ってしまって、下がり始め、または下がりきってしまったところで売ってしまい、結果的に損をしてしまう人が多いのです。

上の図を見ながらご説明しましょう。

① 最初の下降線からこの位置に下がった場合、買える人がいるかといえば、ほとんどいません。「まだ下がるだろう」と考えます。

② そうしているうちに少しずつ値上がりし始めます。ここで買えるかというと、「またしばらくしたら値下がりするだろう」と思って、買わずにいます。

③ ここまで上がってくると「良くなって来たんだな」という認識になります。ただ「どうせだったらもう少し下がったところで買いたいな」と思って、この時点でもまだ買えません。

④ そこで様子を見ているとまた上がってきます。相場はトレンドができると、ある程度勢いよく上がるときがあります。これ以上、上がってから買うのも嫌だなと思い、思い切ってここで買ってしまう人がけっこう多いようです。

⑤ ④で買った人はさらにもっと上がると思っている人が多いのです。⑤で売れるかどうかですが、ここで売れる人はまだ少ないです。「もうちょっと上がったら売ってもいいのではないか……」と思っているうちに下がり始めてしまいます。

⑥ ここで売るのは悔しい。⑤の価格まで上がったのだから、また⑤の金額まで上がったら売ればいい、と考えます。そうこうしている間にまた下がり⑦になります。

⑦~⑧ 相場は下がりだすと暴落のように下がりだすこともあり、⑧までくるとこれ以上、下がったら不安でしょうがないので、早く売ってしまおうと思って売却し、結局は損することになります。

相場を追いかけている人は、このような結果になることが多々あります。もちろん、これとは反対にうまくタイミングをとらえて儲かる場合もありますが、それはとても稀なケース。それでは、ギャンブルと一緒です。短期間で売り買いを繰り返すようになってしまったら、お金を増やすよりもギャンブルを楽しんでいるのと同じになってしまいます。これではお金は増えていきません。

下がったときに買えず、上がり始めると買ってしまい、すごく下がり始めると不安になり売ってしまいます。つまり、④で買って⑧で売ってしまう人が多いのが相場の実状です。人間心理としてはわからなくもないのですが、儲かっている少数の人はこの逆の行動をとっているわけで、これができる人はトレードの世界でお金を増やすことができるのです。「人の行く裏に道あり花の山」なんていう相場の格言がありますが、この通りにはなかなかいかないものです。

特に最近の相場は、理論通りにいかなくなっているようです。上がり始めれば、その動きが加速して急激に上がり、下がり始めると急激に下がるといったように、上下に激しく動くようになっています。相場の価格そのものを直接コントロールするのは極めて難しいといえるでしょう。

2.コントロールできないことをコントロールしようとしてはいけない

投資の本質は「蓄積」です。ひとつの銘柄が上下するタイミングを狙うのではなく、いくつもの投資対象を組み合わせて分散して投資することで、その本質が浮かび上がってきます。

次の図では真ん中をいく太い実線が「本質」になります。個別で見れば上下激しく変動しているようでありますが、複数の銘柄に投資すると、多少の上下はあったとしても、全体を見ると緩やかな右肩上がりの曲線になっていますよね。これが投資の「本質」なのです。

一つひとつの銘柄をコントロールすることは難しくとも、分散して投資することで、ある程度リスクをコントロールできるとわかっていただけたのではないでしょうか。

では、分散したとき下がっていくことはないのか? について考えてみましょう。図の【A】のように上がっていくのか、【B】のように穏やかに横這いなのか、【C】のように穏やかに下がっていくのか。

長期的にみればどれが自然体だと思いますか? 答えは【A】です。本質が蓄積されていくものを束にすると、長期的には上がっていくといえます。

銘柄さえ間違えなければ、無理してなんとか上げていく必要など全くない仕組みなのです。「長期は本質に従う」といえますね。

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