「キダルト」消費活発 玩具市場を牽引 業績も動かす

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子供が主役だった玩具市場で今、「キダルト」と呼ばれる人の存在感が高まっています。

キダルトとは「子供(Kid)」と「大人(Adult)」を組み合わせた造語で、オモチャやキャラクターグッズなどを楽しむ遊び心を持つ大人を指します。人気玩具を多く手がけるタカラトミーを中心に各社の動向をご紹介します。

タカラトミー、大人向け新シリーズ「tomica+」を展開

タカラトミー 」は1月、人気玩具のミニカー「トミカ」の発売55周年を記念する事業について発表しました。

国内自動車メーカー5社とのコラボ商品を発売するほか、大人向けプレイセットの新シリーズ「tomica+(トミカプラス)」をスタートし、トミカをレイアウトできるガレージ「tomica GARAGE」やドリフト走行を楽しめる回転盤「トミカプレミアム unlimited DRIFT TURN STAGE」を発売しました。

ターゲットはずばりキダルト。タカラトミーは2015年から「大人のためのトミカ」と銘打って、子供向けとは別に塗装やホイールのデザインなど細部にまで再現にこだわった「トミカプレミアム」を展開し、ファンを獲得しています。

「キダルト」とは

・「子供(Kid)」と「大人(Adult)」を組み合わせた造語
・子供と同じように玩具やキャラクターグッズなどを楽しむ遊び心を持った大人
・日本おもちゃ大賞では「キダルト部門」を設けるなど、主要購買層として台頭
・欧米でのキャラクター人気など世界的に広がり

世代を越えたコミュニケーションツールとして裾野を広げている玩具もあります。

現代版ベーゴマ「ベイブレード」の最新シリーズ「BEYBLADEX(ベイブレードエックス)」は世界累計出荷数が2800万個(25年2月時点)を超えるヒット商品です。

10月にはプレーヤー(=ブレイダー)同士の国際交流の場として世界各地の予選を勝ち抜いた優勝者による世界大会「BEYBLADE X WORLD CHAMPIONSHIP 2025」が東京で開催される予定です。大人が参加可能なカテゴリーもあり、世代や国籍を超えた本気の戦いが繰り広げられます。

「大人買い」が玩具市場の成長をけん引

収集目的で大量買いする「大人買い」も子供に比べて購買力の高いキダルトの特徴。「 ハピネット 」では、キダルトの人気が根強いトレーディングカードゲーム商品の23年度の売上高が過去5年で6倍以上に急拡大しています。

バンダイナムコホールディングス 」は懐かしさに駆られる玩具を展開しています。子供時代に憧れたかつてのヒーローと大人になった今の自分を繋げる、変身ベルトなど「大人のためのなりきりアイテムブランド」を販売しています。

一世を風靡した育成玩具「たまごっち」では、仮想空間で世界中のユーザーと交流できる「Tamagotchi Uni(たまごっちユニ)」を投入したほか、育成要素などを充実させた「Tamagotchi Connection」は発売当初の白黒画面をあえて採用し、過去に遊んだことのある大人を中心に人気を集め、第3弾まで新商品を展開しています。

キダルト消費の影響はキャラクターIP(知的財産)の利用拡大にもつながっています。

サンリオ 」の人気キャラクター「ハローキティ」や「クロミ」などは、子供向けだけでなく大人用のアパレルアイテムや下着にも採用されています。

東宝 」では中期経営計画にIP・アニメ事業の強化を盛り込みました。これまで子供向けだったアニメの視聴対象は大人にも拡大し、関連するキャラクターグッズの販売は収益に大きく寄与しています。

好きなものに惜しみなくお金を投入するキダルトは消費の担い手として無視できない存在となっています。