簡単なお願いで面倒な仕事をあっという間に仕上げてくれる――。そんな助っ人が欲しいと思ったことは誰にでもあるはず。この願いを叶えてくれる最新技術が「AIエージェント」です。米OpenAIと新会社を設立し、AIエージェント事業に乗り出すソフトバンクグループを中心に各企業の動向をご紹介します。
ソフトバンクGが「自律型」AIエージェントで業務支援
「 ソフトバンクグループ 」は今年2月、米国のAI(人工知能)開発企業OpenAIと合弁会社「SB OpenAI Japan」を設立することで合意したと発表しました。企業向けに開発されたAIエージェント「クリスタル・インテリジェンス(Cristal intelligence)」の日本での展開を目指します。
クリスタル・インテリジェンスはメールデータや商談履歴、会議資料など企業が持つ全情報を統合し、経営の中核としてあらゆる業務を自律的に遂行するAIシステムです。
AIといえば「生成AI」がよく知られています。生成AIは、ユーザーから与えられた指示内容に沿って絵や文章、音声など特定のコンテンツを生成する技術です。あくまでも「応答」に特化し、自ら動くことはありません。
一方のAIエージェントは、目的達成に向けてAIが複数の課題を自律的に判断・実行し、最適解を導き出します。人間の細かな指示や操作が無くても、AIが「自分で考え行動する」ことで、より人間に近い業務を担うことができるのが特徴です。
例えば旅行会社の業務ケース。生成AIでは旅行プランやおススメの観光地などを文章作成するなど業務の補完役を担います。
一方、AIエージェントは、旅行者の予算や好み、過去の旅行履歴などの情報を自ら収集し、必要なデータリソースを適宜使い分け、満足度の高い旅行プランを作り上げるまで業務を遂行するのです。
AIエージェントとは
・AI(人工知能)とエージェント(代理人)を組み合わせた造語
・AI自体が学習して判断・実行する技術
・自律型AIとも呼ばれる
ソフトバンクGは自社を第1号ユーザーとして「クリスタル・インテリジェンス」を使いこなし、1億以上のタスクを自動化し、業務の自律化を図ります。グループ外の企業にも販売していく方針です。
IT各社が続々とAIエージェント提供、競争時代へ
IT(情報技術)各社も続々と独自のAIエージェントの提供を開始するなど、早くも競争激化の様相を呈しています。
「 日本電気 」は、高度な専門業務を自律的に遂行するAIエージェントの提供を1月からスタート。日本語性能に優れた独自の生成AI「cotomi(コトミ)」と連携しているため日本語の理解に優位性があり、日本企業にとって使いやすいのが特徴です。
「 富士通 」は24年10月、「Fujitsu Kozuchi AI Agent」を発表しました。第1弾として、損益や商談に関する打ち合わせにAIが自ら参加して適切な情報の共有や施策を提案する会議AIエージェントを展開しています。
「 NTT 」傘下のNTTデータは、プログラミングの専門知識がなくても生成AIアプリケーションが開発できるAIエージェント基盤サービス「つなぎAI(つなぎあい)」を5月から提供しています。ある開発テストでは、通常3カ月程度かかるAIアプリをわずか2週間で作ることができたそうです。NTTデータは2027年までに導入社数を600社に増やし、累計売上高40億円を目指します。
専門領域に特化したAIエージェントを提供する動きも始まっています。「 弁護士ドットコム 」は5月、法務領域に特化したAIエージェント「Legal Brain エージェント」の提供を開始すると発表しました。日々の業務の多くを占めるリーガルリサーチ機能を提供し、大幅な業務効率アップを実現します。
AIエージェントが今後、私たちの頼もしい同僚として活躍する場面が増えていきそうです。