株式市場で「水道」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は9.4%と、東証株価指数(TOPIX、2.4%)を上回りました(5月30日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
30年度までに下水道改修へと伝わる
水道関連株が上昇した背景は、政府が2030年度までに老朽化した下水道の改修を進めるとの報道です。
1月に埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故は、古くなった下水道管が破損したことが原因とみられています。国土交通省は上下水道の調査を実施中で、古くなった上下水道の更新に取り組み、全長5000キロメートルの安全性の確保を目指します。6月に閣議決定する国土強靱(きょうじん)化の中期計画で目標を定めるとみられます。
下水道管の耐用年数は平均50年と言われている中、全体の2割が使用から40年以上経過しており、老朽化対策は喫緊の課題です。政府が本格的な対策に乗り出し、全国で改修工事が急速に進むとの思惑が一段と高まり、関連銘柄の物色を誘いました。
足元の業績も好調【日本ヒューム】
上昇率首位の「 日本ヒューム 」は下水道や上水道に使うヒューム管製造の最大手で、シェアは24年度で23.5%を誇ります。下水道の工事なども手掛けます。
13日に発表した2025年3月期連結決算で下水道関連事業の営業利益は前期比52%増の19億円と好調で、全体の増収増益に寄与しました。水道管工事の需要が増加すれば、一段と業績成長が期待できそうです。
「水が途切れない世界」目指す【日本鋳鉄管】
上昇率2位の「 日本鋳鉄管 」は上下水道向けの鉄管やマンホールなどを手掛けています。同社のパーパス(存在意義)は「水が途切れない世界を実現する」で、上下水道インフラの維持や向上への貢献を目指しています。国や自治体による水インフラ耐震化の推進施策を注視すると明言しており、株式市場で買いが膨らみました。
工事の恩恵に期待
「 NJS 」は水と環境に関するコンサルティングを手掛け、上下水道インフラ施設向けの点検調査や災害対策を支援しています。
「 オリジナル設計 」は地方自治体が上下水道を整備する際の調査や施工監理などのコンサルティング事業を手掛けています。
「 前澤工業 」は上下水道用機器や水処理装置の専業メーカーで、国や地方公共団体が主な販売先となっています。
いずれの企業も国や地方公共団体を主な取引先とする事業を展開しており、政府が水道管の更新を急ぐことによる業績への恩恵が期待できそうです。
たびたび物色の対象に
水道管の老朽化はかねて指摘されており、整備が進むとの思惑から、関連銘柄はたびたび上昇する場面がありました。八潮市での事故を受け、老朽化に対する危機感が一段と強まった場面でも、物色されています(『老朽化に対する危機感高まる 「水道」関連株が上昇』)。
政府が本腰を入れて対策に乗り出すとの思惑から、今回も大きく買われるなど、ホットなテーマになっています。新たなニュースや決算発表など、今後もたびたび関心を集める場面がありそうです。改めて注目してみてはいかがでしょうか。