レアアース技術が関税交渉で一役か 「都市鉱山」関連株が上昇

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株式市場で「都市鉱山」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は4.2%と、東証株価指数(TOPIX、1.2%安)に対して逆行高となりました(6月6日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します! 

米中貿易摩擦で米国に技術提供か

都市鉱山関連株が上昇したきっかけは、日本が米国にレアアース(希土類)の加工・リサイクル技術を提供するとの報道です。

レアアースは、産出量が少ない貴重な鉱物資源で、その種類であるジスプロシウムやテルビウムはEV(電気自動車)や兵器、ハイテク製品に搭載する高性能磁石に無くてはならないものです。

中国は4月から米関税への報復として、レアアースの輸出を規制。また、5月には、米国と中国は互いの追加関税を115%ずつ引き下げ、米国は引き下げた関税の一部を90日間停止すると合意しているものの、中国はレアアースの輸出制限を完全には解いていない可能性があります。

レアアースを巡る米中関税交渉の先行き不透明感は残っており、日本は米国に技術提供することで、日米関税交渉の譲歩を引き出すことを狙っています。

廃棄された電子機器や家電製品などには金属資源が眠っているということから「都市鉱山」と言われます。「都市鉱山」関連企業は、貴重な金属資源をリサイクルしたり使用量を削減したりする技術を有しており、関税交渉であらためて注目を集めました。

エッチング技術に強み【アサカ理研】

上昇率首位の「 アサカ理研 」は化学薬品などの腐食作用を生かした「エッチング」と呼ばれる表面加工技術を用いて、都市鉱山から貴金属を取り出す技術を持っています。工場の廃液を再利用できるよう処理しつつ、銅などの金属を回収する環境事業も手掛けています。

商社とメーカーの両面を併せ持つ【アルコニックス】

上昇率2位の「 アルコニックス 」はレアメタルに強みを持つ非鉄商社と材料を製造・販売するメーカーとしての2つの部門を持っています。合金素材や電子・電池部品など高機能材料としてレアメタルやレアアースを取り扱い、安定供給を目指すとともに、都市鉱山事業にも関与しています。

廃棄物の回収とリサイクルに強み

松田産業 」は半導体や電子部品、感光材料などの都市鉱山から貴金属を回収しリサイクルしています。

イボキン 」は自社で解体した建築構造物や製造業・建設業で発生した廃棄物などの再生のほか、スクラップの収集や加工も手掛けています。

TREホールディングス 」も産業廃棄物や家電、自動車の回収とリサイクルを手掛けています。

いずれの企業も廃棄物の再資源化に強みを持っており、レアアース関連事業で日米の協力が進めば収益拡大が見込めそうです。 

自動車業界ではレアアース不足が顕在化

中国のレアアースの輸出規制を受け、自動車業界ではレアアース不足が顕在化しています。スズキがレアアース不足で小型車「スイフト」のスポーツモデルを除く全モデルの生産を停止していると伝わったほか、米フォード・モーターも多目的スポーツ車(SUV)「エクスプローラー」の生産を停止しています。

都市鉱山のリサイクルによるレアアースの供給だけで需要を満たせるかは疑問が残るものの、今後の米中交渉次第では都市鉱山に頼らざるを得なくなる可能性もあります。 

経済産業省が検討していた「資源の有効な利用の促進に関する法律」の一部改正は2月に閣議決定され、レアメタルの回収や再利用が義務付けられました(『レアメタルの有効利用を促進 「都市鉱山」関連株が上昇)。米国との協力が進まなかった場合でも国内で一定の需要は確保されそうです。米中間税交渉のゆくえを日々確認し、都市鉱山関連株への投資判断に役立てたいですね。