投資環境には不透明感残る? 好業績内需株に買い安心感

カエル先生の株式相場プレイバック/ 日興フロッギー編集部平松 慶

マーケットの「温度感」がわかる連載「カエル先生のマーケットハイライト」。今回は、底打ち後、順調に戻った日本株市場の今後のポイントを解説します。

カエル先生の一言

5月の日本株市場は、米関税に対する個別交渉の進展などを好感し順調に回復しました。一方、不透明感は完全には払拭されず、全面的に買われる状況とはなっていないようです。6月の日本株市場も、外部環境をうかがいながら戻りを試す展開となりそうです。

5月の日本株市場

5月30日の日経平均株価は3万7965円、前月末比1919円高でした。

月初は米国と各国間での関税交渉の進展期待を背景に、前月下旬から5月2日まで7日続伸するなど好調にスタート。その後、米中両政府が相互に課していた追加関税の引き下げで合意したことを受け、13日には前日比539円上昇し3万8183円と3万8000円台を回復しました。

中盤以降は、米大手格付け会社の米国債格下げや、米財政の悪化懸念を背景とした長期金利の上昇を嫌気する場面もありましたが、米国がEUへの関税発動を延期すると表明したことを好感し堅調に推移しました。

情報・通信業や建設業など内需系業種が好調な戻り

日経平均やTOPIX(東証株価指数)など全体の動きを示す指数は、4月の底打ちから順調に戻っていますが、業種別に分けて動きを見ると様相がやや異なります

以下の図表はTOPIXと、東証33業種のうち関税問題や為替相場の影響を受けやすい輸送用機器や精密機器などの外需系業種、反対に影響を受けにくい情報・通信業や建設業など内需系業種の年初来の株価の推移を見たものです。

情報・通信業や建設業の4月の下落は相対的に軽微なものにとどまり、5月の戻り局面では大きく上昇し年初来高値を上回りました。一方、輸送用機器や精密機器の下落は大きく、戻りもTOPIXを下回ったものにとどまっています。

関税問題に対する不透明感が残り、為替相場がまだ円高傾向にある中では、内需系業種が選好されやすいと考えられます。ただし、悪材料としての織り込みや解決へ向けた動きが進むことを前提とするならば、外需系業種の戻り余地は大きいとも言えそうです。

今期の企業業績は慎重な予想にとどまる

ファンダメンタルズ(企業業績)面では、3月期決算企業の2025年通期決算発表が5月の中旬に終了しました。

以下の図表は、TOPIXに採用されている3月期決算企業の営業利益を、全体・外需企業・内需企業に分け、前期(2025年3月期)実績・今期(2026年3月期)の3月末時点における市場予想(QUICKコンセンサス)・会社予想を前年比伸び率で見たものです。
TOPIX全体の今期予想は、3月末時点の市場予想では前年比7.4%増と増益が見込まれていましたが、実際に発表された会社予想は6.4%の減益予想でした。関税の影響を踏まえ慎重な見通しとなっているようです。

外需・内需に分けてみると、外需企業の今期予想は12.4%の減益、内需企業は1.0%の増益と方向感には違いがうかがえます。ファンダメンタルズ面からも内需企業の買い安心感を支えていると言えそうです。

関税だけでなく長期金利の上昇も懸念材料に

5月の市場では、関税政策に加えて世界的な長期金利の上昇を懸念材料と受け止める場面もありました。日米独の代表的な超長期金利である30年債の利回りはここのところ上昇基調にあります。
米国では、前にも触れた通り、自国が発した関税政策の影響による景気の悪化や、大幅減税による財政の悪化に対する懸念などが国債格下げや長期金利の上昇につながっていると見られます。

また、日本では夏の参院選を前に消費税引き下げに関する論議が活発化し、財政が膨張することへの懸念が、ドイツでは防衛費増大の政策などによる財政悪化懸念などが長期金利の上昇につながっているようです。

長期金利の上昇は、必ずしも株式市場にプラスではないため、今後も懸念材料として意識される場面も想定されます。

当面のスケジュール

6月も引き続き関税交渉の行方や金利の動向などがポイントとなりそうです。

関税に関してはカナダで行われるG7会合、景気判断や金利に絡むものとしては日米欧でそれぞれ行われる金融政策の決定会合などが注目されます。

また国内では、通常国会の会期末や都議選を控え、政治の動きが活発化することが予想されます。下旬に策定される予定の「骨太の方針」は、正式名称は「経済財政運営と改革の基本方針」と言い、予算編成や重要政策課題への方向性を示すものとして注目されます。

内需銘柄に買い安心感

関税交渉の行方に不透明感が残ることに加え、ドル円相場が前年比で円高水準にあります。そのため、外需企業の業績が見通しにくく、投資対象として買われにくい一方、内需企業の業績の相対的な底堅さが注目されています。

そこで今回は、好業績が予想される内需関連銘柄をご紹介します。銘柄は、TOPIX採用3月期決算企業のうち、2026年3月期の会社経常利益計画が増益で、決算発表本格化前の市場予想(4/15時点のQUICKコンセンサス)を上回り、決算発表後に市場予想が上方修正されたなどの条件を満たすものからピックアップしたものです。

外部環境の影響を受けにくく、底堅い業績が期待される銘柄をチェックしてみてはいかがでしょうか。

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