新・臆病者のための株入門

今日からお金賢者になれる「1分書評」/ 日興フロッギー編集部

2006年の発売から26刷を重ねた橘玲(たちばな・あきら)氏のロングセラー、待望の新版です。「株式投資はギャンブルである」と語る氏が「経済的にもっとも正しい」と考える投資法を語ります。

旧版から株価7倍以上に! 怖くないのはやはりインデックス

投資は結果がすべて。「大損したけど良い投資」は存在しないーー。と言って旧版で著者が薦めたのが、世界株式ファンド。その評価額は今や7倍以上になりました。今回加筆した「新NISA活用術」も前方針からブレることなく、オルカン(全世界株式(オール・カントリー))などインデックス型の長期積立投資推しです。

マネー本をたくさん読んできた人にとっては「ああ、インデックスね」となるくらいお馴染みの投資法かもしれませんが、そういう方にこそ読んでほしいのが橘氏の著書。その理由は、金融事件と実体験とを重ね合わせたキレある考察は他では読めないものだからです。

本書は2000年以降に国内で起きた金融ネタを多く取り上げています。ライブドアの粉飾決算や株価操作、ジェイコム株の誤発注により1日で20億円の利益を得た個人投資家など。旧版執筆当時は時事ネタに近い感じだったのでしょうが、これら事件を入口に「株式とはなんぞや?」「レバレッジとはなんぞや?」と繋げていくあたりが達者。

ITバブルの頃、著者は「先物取引で100万円を1ヵ月で1億にする」妄想に夢中になったのだそうです(ほどなく撤退)。そこそこのポジションは取れたものの、額が大きくなりすぎたために臆病メンタルに吹かれてしまった、と言います。「朝起きたら破産しているに違いない」という強迫観念から一晩中株価チャートから離れられず、仕事も生活も破綻しかけた、と。翻って、先のジェイコムで大儲けした個人投資家ですが「20代無職」という属性も話題になりました。著者の話をまとめると「だからこそ彼にはできた。失うものがある人間には、ハイリスクな株式投資で勝てる率は極めて低い」。

というわけで、本書はリスクを取れない多くの人たちが、それでも勝率を上げるベストな方法を考察した本です。投機は必ず損をする、デイトレで稼ぐことは可能だけれど時給換算するとマクドナルドでのバイト代とほとんど変わらないといった試算も。読み終えて、やはりインデックス投資一択だなと思う次第でした。