株式市場で「知的財産(IP)」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は4.1%と、東証株価指数(TOPIX、0.5%高)を上回りました(6月20日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
関税の影響を受けにくい安心感も
株価上昇のきっかけは、サンリオとIGポートの資本業務提携や、セガサミーホールディングスによる会社説明会の開催などです。これらにより、市場で知的財産を保有する企業への関心が高まりました。
トランプ米大統領による高関税政策の先行き不透明感は依然として晴れていません。その中、「無形資産」である漫画やアニメ、ゲームは、「有形資産」である自動車や半導体などと比べ関税の影響を受けにくいとの見方があることも、買い安心感を誘っているとみられます。
サンリオと資本業務提携【IGポート】
上昇率首位はアニメーション制作大手の「 IGポート 」です。傘下に「プロダクション・アイジー」、「ウィットスタジオ」などのアニメ制作会社を抱え、代表作には「ハイキュー!!」「進撃の巨人」「攻殻機動隊」「SPY×FAMILY」などがあります。
6月17日に「ハローキティ」「マイメロディ」などの権利ビジネスを手がけるサンリオと資本業務提携を発表しました。サンリオが保有するキャラクターIPの映像化やIGポート制作作品に関連するキャラクターを起用した事業機会の共同創出、新規IPの共同創出・開発・取得及び育成などで協業します。
ウィットスタジオが、サンリオキャラクターを用いたネットフリックス向けアニメ「My Melody & Kuromi」を制作し、7月に配信開始が予定されており、注目を集めそうです。
会社説明会を開催【セガサミーHD】
上昇率2位はゲーム大手の「 セガサミーホールディングス 」です。18日に機関投資家などを対象とした説明会を開催しました。
同社は従来より株式市場との対話を重視し、株主還元の強化や戦略説明などに積極的に取り組んでいると受け止められていました。今回の説明会で経営陣が株主価値の向上を意識していることなどが改めて確認されたもようです。
有力IP保有、新機種販売好調で注目
「 スクウェア・エニックスホールディングス 」は、「ドラゴンクエスト(ドラクエ)」、「ファイナルファンタジー(FF)」という超強力なRPG(ロールプレイングゲーム) の2枚看板を抱えており、IP関連として注目度が高まっています。
「 任天堂 」は、8年ぶりとなる新機種「Nintendo Switch2」を6月5日に発売し、4日間で世界販売台数が350万台を突破しました。同社ゲーム機として発売4日間の販売台数としては過去最多を記録し、2026年3月までに1500万台販売するという目標達成に向けて好調な滑り出しとなりました。
「 コナミグループ 」は、ゲーム大手で「遊戯王」、「METAL GEAR」、「実況パワフルプロ野球(パワプロ)」、「プロ野球スピリッツ(プロスピ)」、「eFootball」などの有力IPを抱えています。
IPの市場規模が拡大
日本のアニメは海外で高い需要があります。動画配信サービスの普及で世界中の視聴者へのアクセスが容易になっており、海外売上高を拡大する機会が増加しています。
2024年6月に公表された「新たなクールジャパン戦略」では、日本のコンテンツの海外市場規模は22年までの10年間で3倍の4.7兆円に拡大し、鉄鋼や半導体製造装置と同程度の市場規模になったと試算。さらに、28年までに10兆円、33年には20兆円規模にすることを目標に掲げています。
また、キャラクターグッズや音楽売り上げ、動画配信プラットフォームやSNS(交流サイト)での広告収益、投げ銭などの「クリエイターエコノミー」なども勘案すると、アニメの海外の市場規模はすでに11兆円規模に達しているとの指摘もあります。
収益機会を逃すまいと、豊富なコンテンツを持つ企業との資本提携なども相次いでいます(『コンテンツ争奪活発化か 「知的財産」関連株が上昇』)。IP市場規模の拡大期待を背景に、関連銘柄は堅調な推移が期待されそうです。