データセンターの新増設進む 「送電網」関連株が上昇

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株式市場で「送電網」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は3.5%と、東証株価指数(TOPIX、0.4%安)に対して逆行高となりました(7月4日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

関西電力と東京電力HDが大型投資

送電網の関連株が上昇した背景は、データセンター向け送電網強化のために大型投資が行われるとの報道です。

関西電力はグループで変電所や送電線の新増設に1500億円超を投資。東京電力ホールディングスも千葉県内の送電網増強に追加投資します。

生成AI(人工知能)の普及に合わせ、大阪府の箕面市や奈良県生駒市、千葉県の印西市や白井市ではデータセンターの新増設が進んでいます。

データセンターは多くの電力を消費するため、変電所や電線の増強・新設への需要が高まります。大手電力会社がデータセンター向けの送電網強化に大型投資するとの報道で、送電網関連銘柄は業績の伸びに期待した物色を集めました。

データセンター事業に本格参入【東京電力ホールディングス】

上昇率首位は東京電力ホールディングス 」です。送配電子会社の東京電力パワーグリッドが2030年代前半までをめどに千葉県北西部での送電網増強に2000億円超を投じると伝わっています。2カ所で変電所の新設を目指し、変電所間をつなぐ送電線の新設や張り替えも進めます。

7月1日には「2027年度にもDC(データセンター)事業に本格参入する」との報道があり、策定中の再建計画・総合特別事業計画の中でDC事業を「新しい本業」と位置付ける方針のようです。これまでは子会社を中心にDC関連事業を手掛けていましたが、東電力HDが前面に立ってDC事業を押し進めれば、データセンターの増設が進むほか、電力供給網の強化の必要性が高まりそうです。

送電用鉄塔に投資集まるか【巴コーポレーション】

上昇率2位の巴コーポレーション 」は送電線に利用される鉄塔の設計・製作を手掛けています。1917年に送電用鉄塔の国産化に成功して以来、長年培ったノウハウによる研究開発やテストで安全性を確保しています。

東電力HD向けの送電用鉄塔を多く手掛けているため、送電網増強の主要な投資先として業績の伸びに期待した買いを集めました。環境を意識し、劣化した設備を補修し無駄なく利用するメンテナンスも手掛けており、送電網への追加投資で継続的な収益向上を見込めそうです。

ラピダスの「北海道バレー構想」にも思惑広がる

東京エネシス 」は東京電力ホールディングスの関連会社で、変電設備や電力設備の工事や保守などを手掛けています。

北海道電力 」は、最先端半導体の量産を目指すラピダスが計画する、半導体関連企業や研究機関などが集まる「北海道バレー構想」の実現に合わせて電力の供給力を強化する方針を示しています(『北海道バレーに新シリコンアイランド 「大手電力」関連株が上昇)。さらなる電力供給能力の必要性への思惑が広がりました。

関西電力 」は子会社の関西電力送配電が2026年以降に4カ所の変電所を増強し、扱える電気容量を約3割増やす計画です。いずれの企業も、データセンターの新増設による設備投資増加の恩恵を受け、収益向上が見込めそうです。

電力供給能力向上でさらなるデータセンター増にも期待か

以前から生成AIの需要増に対応するためデータセンターの市場規模は拡大が見込まれており、データセンター建設工事の増加も期待されていました(データセンター特需がここに! 「電気・通信設備工事」関連株が上昇)。ソフトバンクグループは米AIインフラ投資計画「スターゲート」や北海道のデータセンター新設など、AI分野への巨額投資を続けており今後も生成AIへの需要増加は期待できそうです。

電気供給の増強でさらにデータセンターも増加するとみられ、今後も送電網関連銘柄を含めたデータセンター関連銘柄の動向には目を離せません。