第1四半期決算発表スタート 業績見通しに回復の動き?

カエル先生の株式相場プレイバック/ 日興フロッギー編集部平松 慶

マーケットの「温度感」がわかる連載「カエル先生の株式相場プレイバック」。今回は、順調に戻った株式市場の動きと、7月下旬からスタートする決算発表を軸に今後のポイントを解説します。

カエル先生の一言

6月の日本株市場は、米関税や中東情勢を巡り警戒感が高まる場面もありましたが、概ね上昇基調をたどりました。7月は3月期決算企業の第1四半期決算発表がスタートします。企業業績に注目が集まる展開が予想されます。

6月の日本株市場

6月30日の日経平均株価は4万487円、前月末比2522円高でした。

月初の日本株市場は、米関税強化や米中貿易摩擦激化の懸念を背景に、2日に日経平均が前日比500円弱値下がりするなど軟調なスタートとなりました。

中旬にかけては、米中首脳間で行われた関税政策を巡る電話協議を受け、貿易摩擦の緩和観測が浮上。また、米雇用情勢の底堅さや、米長期金利の低下を背景とした米国株式市場の上昇を受け、日本株市場も好調に推移しました。

月半ばには、イスラエルや米国によるイランの核関連施設への攻撃などにより警戒感が高まる場面があったものの、状況は落ち着きを取り戻したことなどから、下旬にかけては市場心理は改善し、株価は再度上昇。世界的な株高の中、27日に日経平均は約5ヵ月ぶりに4万円台を回復しました。

リスク耐性高まり世界的に好調な戻り歩調

米関税ショックによる4月の大幅下落以降、5月、6月と株式市場は世界的に順調な戻り歩調をたどっています。

以下の図表は、日経平均、NYダウ、FTSE、DAXといった日米英独の2025年年初を起点とした主要株価指数の推移です。英独は既に今年の高値を更新、日米もそれに続く展開です。
関税政策や中東情勢を巡っては、市場のリスク回避姿勢が上昇と低下、それに伴い株価も下落と反転上昇を繰り返し、上値を追う展開となりました。

関税交渉や中東和平については、依然として不透明な点が残り楽観はしづらいところですが、市場のリスクに対する耐性は相当程度ついてきたと言えそうです。

低い発射台からスタートした企業の業績予想

一旦、リスクに対する耐性がついてきた感のある日本株市場。ここから上値に挑戦するにはポジティブ材料が欲しいところです。

企業の業績動向はどうでしょうか。以下の図表は、企業の経常利益の伸び率を、市場全体(NIKKO250)、製造業、非製造業ごとに、2024年度実績、2025年度予想、2026年度予想で見たものです。

市場全体の経常利益の伸び率は、2024年度に9.0%伸びましたが、2025年度は、米関税政策の影響なども踏まえ、1.6%増にとどまっています。それでも、2026年度になると10.1%増と回復することが予想されています。
ここからのポイントの一つは、既に慎重で低い水準にとどまっている2025年度予想の変化の方向です。折しも、7月は下旬から3月決算企業の第1四半期(4−6月)決算発表が行われます。

関税政策の影響が不透明な中で策定された予想が、影響度合いを織り込みつつ、どのように修正されるのか。上方修正となった場合は大きなポジティブ材料となりそうです。

7月は注目イベントや材料が目白押し

前述のように、7月は下旬から企業の第1四半期決算発表が行われますが、それに先立ち、事前の会社側による修正の発表や、証券アナリストによる見通しの修正、また先行して、米国など海外企業の決算発表もスタートします。ファンダメンタルズ(企業業績)に注目が集まるタイミングとなりそうです。

マクロ(経済環境)的には、下旬から月末にかけて重要イベントが目白押しです。日米欧で金融政策の決定会合が予定されており、米欧で緩和方向が強まると市場は好感する場面が想定されます。また、米欧で4−6月期のGDP速報値が発表予定。米関税政策の影響も現れていると思われ、市場の注目度は高いでしょう。

国内では、参院選が予定されています。政策面では、「減税」や「物価高対策」が最大の争点となっています。いずれにしても、「アベノミクス」のような日本の成長戦略を期待させるものとは異なり、市場がポジティブに受け止める場面は想定しづらいところです。

決算発表を手掛かりとした銘柄アイデア

7月下旬から8月中旬にかけて行われる3月決算企業の決算発表での注目ポイントの一つは、通期に対する第1四半期(4−6月)の進捗状況です。「4−6月」の3ヵ月間は1年の四分の一、つまり25%に相当します。

以下の図表は、TOPIX採用3月期決算企業のうち、①時価総額が1,000億円以上の大企業、②2026年3月期第1四半期の予想経常利益の進捗率が期初の会社計画に対して30%以上、③直近の予想PERが2015年以降の平均以下、予想はQUICKコンセンサスなどの条件を満たす主な銘柄です。

足元の業績が好調に推移しており、割安感も感じられる銘柄としてチェックしてみてはいかがでしょうか。
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