インバウンド増で好業績 「ドラッグストア」関連株が上昇

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株式市場で「ドラッグストア」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は1.9%と、東証株価指数(TOPIX、0.4%高)を上回りました(7月18日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

1~6月の訪日外国人が過去最多

ドラッグストア関連株が上昇したきっかけは、好決算や好調な月次売上高の発表です。

好業績の背景には、訪日外国人(インバウンド)の増加が挙げられそうです。

日本政府観光局が7月16日に発表した2025年1~6月のインバウンドは前年同期比21.0%増の2152万人と初めて2000万人を突破。観光庁が同日発表した1~6月のインバウンド消費額(速報値)も4兆8053億円となり過去最高を更新しました。新型コロナ禍前の2019年の1年間の消費額(4兆8135億円)に半年間でほぼ並んでおり、そのインパクトは大きいとみられます。

また、訪日外国人アプリ「Payke」が実施した「ドラッグストアに関する調査アンケート」によれば、インバウンドの97.4%が日本滞在中にドラッグストアを利用するなど、旅行先の必須のショッピングスポットになっています。

インバウンドの増加はドラッグストア業界にとって追い風になっていることがわかります。

新商圏への進出、M&Aで規模拡大目指す【クリエイトSDH

上昇率首位は神奈川県地盤のクリエイトSDホールディングス 」です。地域での総合ヘルスケアサポートを基盤とした強固なドミナント戦略(特定の地域に集中的に出店することで、地域内でのシェアを高める戦略)を推進。これまでに構築してきた小商圏における高来店頻度のビジネスモデルを土台に市場の変化に適応する施策を進めています。

また、資源価格の高騰や物価上昇に伴う消費者の節約志向に対応し、EDLP(エブリデイ・ロープライス)施策として消費者が求めやすい価格で商品を提供しているのも特徴です。

7月14日に2026年5月期の連結純利益が前期比4%増の163億円、年間配当は前期比12円増の90円になる見通しだと発表しました。

同日発表の中期経営計画では、自力出店による成長に加えて、北関東(茨城・群馬・栃木)や甲信越(山梨・長野)など新商圏への進出、M&A(合併・買収)を活用した規模拡大で高い成長率の実現を目指します。これにより、最終年度となる2030年5月期の目標売上高6800億円(25年5月期実績は4570億円)を掲げました。

関東エリアに初進出【薬王堂HD】

上昇率2位は岩手県を地盤とするドラッグストアの薬王堂ホールディングス 」です。ドラッグストアの一般的な商圏は人口1万人以上ですが、東北地方の特性に合わせて小商圏(人口7000人)でのドミナント戦略をとっています。また、医薬品や化粧品の専門性に加え、食料品や日用品などの生活必需品を取り揃えた店舗を運営しています。

7月4日に発表した2025年3~5月期の連結決算は、純利益が前年同期比8%増の11億円となりました。主力のフード部門が10%増と伸びたほか、ホーム部門、ビューティー部門も好調でした。基盤となる東北エリアでの出店強化に加え、関東エリアへの初出店を実現するなど商圏の拡大を進めており、今後の業績拡大が期待されます。

月次売上高好調、新規出店拡大で注目

アインホールディングス 」は北海道地盤の調剤薬局大手で、14日に発表した6月の月次速報によれば、主力の調剤薬局部門の売上高は前年同月比16.3%増と5月実績(10.9%増)から伸びが加速しました。処方箋枚数が9.2%増となったほか、処方箋単価が6.4%増と伸びており、好業績期待が高まりました。

ゲンキードラッグ 」が6月末に発表した月次営業速報によれば、6月の既存店売上高は前年同月比2.9%増と7ヵ月連続のプラスで、5月実績(1.5%増)から伸びが加速しました。来店客数が2.2%増加したほか、客単価も0.7%上昇しました。

クスリのアオキホールディングス 」は、7月3日に資本効率の向上と株主還元の充実を目的に、600万株・220億円を上限とする自社株買いを発表。2026年5月期はドラッグストア110店舗の新規出店(前期は68店舗)を計画しており、将来的な業績拡大期待が高まりそうです。

市場規模拡大で小売業界での存在感高まる

2024年度のドラッグストア業界の売上高は前年度比9.0%増の10兆307億円となり、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)が中期ビジョンとして掲げていた「2025年に10兆円産業へ」という目標を1年前倒しで達成しました。コンビニエンスストア(11.8兆円)にも迫る規模となっています。

コンビニは出店ペースの鈍化で成長に頭打ち感が漂うなか、ドラッグストアの出店数は順調に増加しておりコンビニ業界を抜くのはそう遠い未来ではないとみられます。小売業界のなかでドラッグストアの存在感は一段と高まりそうです。

ドラッグストア株は、夏は「熱中症対策」、冬は「インフルエンザ対策」の関連銘柄となるほか、食料品を低価格で販売しているため物価高の現状は消費者にとって心強い存在とも言えそうです(『決算を好感、インフルで思惑も 「ドラッグストア」関連株が上昇)