米国株のキラキラ10銘柄 FANG+

あなたの知らない「インデックスの世界」/ おせちーず須山 奈津希

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今回ご紹介するのは、米国株で構成される株式指数”FANG+”です。近年とても好調な株価指数の1つです。

10銘柄で構成される株式指数

FANG+とは略された呼び方で、正式名称があります。NYSE FANG+ Indexです。米国株市場ではNYFANGというティッカー(※銘柄コードのようなもの)を持ちます。同指数は、”NYSE米国ビッグテック10指数”とも呼ばれています。

ニューヨーク証券取引所が所属するインターコンチネンタル取引所が定義する業種にもとづき、次の表で示すテクノロジー、メディア・通信、一般消費財セクターのテクノロジーおよびテクノロジー関連企業の取引量の多い成長株10銘柄のパフォーマンスを追跡するように設計されています。米国のキラキラした花形企業10社で構成された株式指数と理解して問題ないでしょう。2014年9月までさかのぼった形で2017年9月に算出が開始されました。
10銘柄で構成されるFANG+のうち、実は6銘柄はほぼ固定されています。メタ・プラットフォームズ(META)アップル(AAPL)アマゾン・ドット・コム(AMZN)ネットフリックス(NFLX)マイクロソフト(MSFT)アルファベット(GOOGL)です。どれも日本でもよく知られた企業ですね。

ルール(海外では”メソドロジー”と呼ぶことが多い)ではこの「ほぼ固定」な6社のことを” FAANMG”と呼んでいます。6社の頭文字をくっつけたものです。”ほぼ固定”というのは、これら6銘柄がFANG+の”メソドロジー”が定義する時価総額や流動性といった銘柄選定条件に合致しないような状況になった場合は他の銘柄に入れ替えられる可能性を排除していないからです。

残りの4銘柄は、該当するセクター銘柄からメタなどの6銘柄を除いた米国企業から、時価総額、流動性でランキングし、上位4銘柄がFANG+に採用されます。2025年6月末現在で採用されているのはサイバーセキュリティー企業のクラウドストライク(CRWD)、半導体設計を営むエヌビディア(NVDA)、デジタルワークフローと自動化プラットフォームを提供するサービスナウ(NOW)、半導体ソリューションとインフラストラクチャーソフトウェアの2つを主力事業とするブロードコム(AVGO)です。SNS、クラウドサービス、AI向け半導体、検索エンジンなどの分野で世界のトップ企業が顔を並べていますね。

銘柄入替と運用ルール

FANG+の銘柄見直しは3の倍数月に実施されます。とはいえ、10銘柄のうち6銘柄は「ほぼ固定」ですから、よほどのことがない限り残りの4銘柄のみが見直しの対象になります。見直しの発表日は3の倍数月の第2金曜日で、銘柄入替は3の倍数月の第3金曜日の取引終了後です。

直近の銘柄入替は2024年9月でした。テスラ(TSLA)とスノーフレイク(SNOW)が除外され、クラウド・ストライク(CRWD)とサービス・ナウ(NOW)が採用されています。

また、3の倍数月には10銘柄を10%ずつというウエイトの調整が実施されます。構成銘柄数が少ないので、特定の銘柄の値動きの影響をマイルドにするための指数ルールだと想像されます。

好調なパフォーマンス

では、FANG+のパフォーマンスを確認しましょう。すでにこの連載でご紹介した代表的米国株指数のS&P500NASDAQ100と比較することにします。2023年以降はFANG+の圧勝と言っていいでしょう。ただし、2022年だけを見ればFANG+には厳しい1年でした。2022年は米国のハイテク株の株価が軒並み軟調だったため、ハイテク株ばかりで構成されるFANG+の値はまともにハイテク株軟調の波を受けたためです。また2025年4月初頭の「トランプ関税ショック」と呼ばれるマーケット全体の下落時にもFANG+は他の株式指数より大きな動きになりました。FANG+の値動きは銘柄数が少ない株式指数は、値動きが激しくなりがちであることを示すわかりやすい例です。

※過去の一定期間を分析したものであり、将来の動向等を示唆するものではありません。

10銘柄なら、個人でも株式指数連動ポートフォリオを作れる?

米国株は1株単位で投資できるから、FANG+は10銘柄しかないなら10銘柄を1株ずつ買ってみればFANG+と同じになるんじゃないか? と考える方がいらっしゃるかもしれません。なるほど、ちょっと試してみましょう。

株価がまちまちですから、1株ずつ保有すると株価が大きいネットフリックスやサービス・ナウのウエイトが非常に高くなってしまいます。一番株価が大きいネットフリックスは一番株価が小さいエヌビディアの約8.5倍です。FANG+は四半期に一度1銘柄10%にウエイト調整されますが、1株ずつの保有ではそれがなかなか難しいことを教えてくれる結果です。しかも1株ずつ買っても合計約4,800ドルです。1ドル=145円だとすると約70万円となかなかの金額になります。

もうひと頑張りして、ウエイトを可能な限り均等にしようとすると次の表のようになりました。

今回は銘柄間のバランスは少し取れていますが、合計で約180万円(1ドル=145円の場合)となってしまいました。ちょっと気軽に試してみようと思える金額ではありませんね。また、外国株式取引口座の開設手続きも必要となります。個別株でFANG+の真似ごとをするのは簡単ではなさそうですね。

ETFなら気軽にFANG+に投資可能

ちょっと値動きが大きいことは理解したうえでFANG+に投資してみたいと考える方にぴったりなETFが2025年に設定されました。「 iFreeETF FANG+ 」です。一口2,000円程度で取引できますし、何より円で取引できます。自分でリバランスする必要もありません。iFreeETF FANGが設定されるまでは円建てのFANG+連動商品は投資信託しかなかったので、iFreeETF FANGの登場で選択肢が広がりましたね。FANG+連動ETFは、世界のトップ企業への投資を身近にしてくれるありがたい存在と言えるでしょう。