日米関税交渉合意で相場活況 「証券」関連株が上昇

直近の値動きから見るテーマ株/ QUICK

株式市場で「証券」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は4.6%と、東証株価指数(TOPIX、3.9%高)を上回りました(7月25日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

関税合意で大幅高、売買代金も大幅増

証券株が上昇したきっかけは、日本株相場の大幅高です。日本時間7月23日朝(米東部時間22日)、トランプ米大統領が自身のSNSで日米関税交渉に合意したと発表。これを受け、日本株市場は寄り付きから買いを集め、大引けで東証プライム市場の売買代金は前日の4兆2000億円から7兆1000億円に増加、日経平均は1396円40銭の大幅上昇となりました。

翌24日には日経平均は4万2000円台に乗せる場面があり、4万1826円34銭と2024年7月11日に付けた過去最高値(4万2224円)以来、約1年ぶりの高値を付けました。東証プライム市場の週間売買高は、祝日の関係で営業日が1日少なかったにも関わらず、86億8377万株と前の週から12%増えるなど売買も活発でした。証券関連株は売買や手数料収入が増加して業績拡大に寄与するとの期待から物色を集めました。

米関税の不透明感低下、手数料減の懸念後退【野村ホールディングス】

上昇率首位の野村ホールディングス 」は2025年3月期決算で個人・富裕層向けや企業・機関投資家向けの営業部門が業績に大きく寄与しました。

企業向け事業では資本効率の改善に向けた政策保有株式縮小の流れから、投資銀行事業の需要が高まっています。経済の先行きを見極めたいとして控えられていたM&A(合併・買収)案件などに進展があれば、アドバイザリー事業の収益拡大なども期待できそうです。

SBI新生銀行の再上場を申請【SBIホールディングス】

上昇率2位のSBIホールディングス 」も子会社のSBI証券で売買手数料の増加が期待できます。11日にSBI新生銀行の東京証券取引所への再上場申請を発表し、投資家から注目を浴びていたことも追い風となりました。

同社の個別動向としては、住信SBIネット銀行をNTTドコモに売却するほか、17日にはNTTが引き受ける形の第三者割当による新株式発行の払い込みが完了し、SBI新生銀行に残っていた約2300億円の公的資産の完済にメドが立ちました。事業再編の進展により、SBIが掲げる地方再生のための「第4のメガバンク」構想が本格始動し、業績拡大につながるとの見方もあります。

独立系や対面証券も取引増加に期待か

岡三証券グループは独立系の専業証券会社として、系列会社などに左右されない経営の自由度や独自の情報力に強みがあります。

東海東京フィナンシャル・ホールディングスは中部地方を中心として全国に拠点がある対面証券で、地方銀行との連携に強みがあります。

大和証券グループ本社も大手証券として売買の増加による手数料の増加が期待されたようです。独立系や対面証券などでも、米関税の先行き不透明感が後退し、取引が増加することで、手数料の収益貢献が期待できそうです。

主要企業の通期見通しに注意

関税交渉と株式市場を巡っては、今後、中国や欧州連合(EU)と米国が合意に至れば、さらに関税を巡る影響が明確になり売買の増加が見込まれます。証券会社には追い風となることが期待されます。

一方、投資家の関心は7月下旬から8月上旬にかけての主要企業の決算発表などに移っています。日米関税合意からの期間が短く、通期見通しの精査には時間が足りないとして、明確な見通しを示すのを断念する企業も出てきています。

そのなか、公表を見送っていた企業が通期見通しを示すなど、関税を巡る不透明感が和らぐ兆しもみられます。企業の業績予想という重要な投資情報が充実すれば、投資判断はしやすくなります。

個別企業の決算発表や業績予想の公表をきっかけに株式相場が一段と活況となれば、証券会社の収益に追い風となります。また、収益拡大により利益還元期待の高まる場面があれば、さらなる買い手掛かりとなりそうです(『利益還元に積極姿勢 「中堅・中小証券」関連株が上昇)