回転寿司チェーン店 海外出店加速で成長機会拡大

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インバウンド(訪日外国人)の増加で日本食に触れる機会が増え、海外の和食ブームは衰える気配がありません。特に和食の定番「SUSHI(寿司)」は健康志向の高まりから日常の食卓にも浸透し、商機と捉えた日本企業は海外展開を積極化しています。海外の持ち帰り寿司チェーンを相次ぎ買収し、足場を固めるゼンショーホールディングスを中心に各社の動向をご紹介します。

すき家のゼンショー、M&Aで持ち帰り寿司を積極展開

ゼンショーHD 」は5月に発表した中期経営計画で、2028年3月期までの3カ年で海外に3000店舗超を出店する計画を発表しました。国内の出店計画は約500店にとどまるなか、実に6倍の規模に上ります。海外出店の中核を担うのが回転寿司チェーン「はま寿司」に加え、持ち帰り寿司チェーンの展開です。

ゼンショーHDは近年、欧米の持ち帰り寿司チェーンのM&A(合併・買収)を積極化。18年の米アドバンスド・フレッシュ・コンセプツ(AFC、Advanced Fresh Concepts Corp.)に始まり、23年には独スシ・サークル・ガストロノミー(Sushi Circle Gastronomie GmbH)と英米で店舗展開するスノーフォックス・トプコ( SnowFox Topco Limited)の3社を買収しました。これらの企業の店舗網を活用しながら、ゼンショーが強みとする自社グループの調達力や物流網を組み合わせ、収益拡大を図ります。

牛丼チェーン「すき家」を祖業とするゼンショーHDの事業の中で、寿司事業の存在感は増しています。利益面の貢献も大きく、25年3月期は国内外の回転寿司チェーン事業の「グローバルはま寿司」と海外の持ち帰り寿司を含む「グローバルファストフード」の2事業で全体の営業利益の7割弱を稼ぎ出しました。26年3月期も寿司事業の成長が事業拡大をけん引する見込みです。

競合の回転寿司チェーン企業も海外展開に商機

他の回転寿司チェーン企業も海外に商機を見出しています。

「スシロー」を運営する「 FOOD&LIFE COMPANIES 」は24年11月に発表した中期経営計画の見直しで、海外店舗を26年9月期までに310~320店舗と24年9月期(182店舗)から7割あまり増やす方針を示しました。

これまで店舗拡大の中心となっていた中国などの中華圏に加え、今年2月には中間所得層が拡大するマレーシアに1号店をオープン。北米での展開も進める方針です。

寿司チェーンの「魚べい」や「元気寿司」などを手がける「 Genki Global Dining Concepts 」は、海外に240店舗(25年3月期)を展開しています。新規エリアへの進出も進め7月には元気寿司ベトナム1号店をオープンしました。海外店舗は28年3月期までに317店舗まで増やす計画で、海外の売上高比率を16%(25年3月期は13%)に高め、31年3月期には20%の達成を目標に掲げています。

くら寿司 」は米国や台湾での事業拡大に注力します。同社は6月、23年に進出し現在、3店舗を展開している中国本土市場からの撤退を決めたと報じられました。現時点で米国は約80店舗、台湾で約60店舗を展開しており、特に米国は新規出店を加速させる方針です。

主な寿司チェーンの海外出店数(20253月末時点)

・ゼンショーホールディングス                  1万521店舗
・FOOD&LIFE COMPANIES                207店舗
・Genki Global Dining Concepts              240店舗
・くら寿司                         136店舗

寿司の海外進出拡大が追い風になる関連企業もあります。その1つが寿司飯を握る寿司ロボットを手がける「 鈴茂器工 」。同社は寿司チェーンの頼れる黒子として成長を続けています。25年3月期の売上高全体に占める海外比率は32%でしたが、28年3月期には45%にまで引き上げる計画を掲げています。

和食ブームを背景とした「SUSHI」の海外進出が一段と進めば、日本国内を収益基盤としてきた企業にとってもさらなる成長拡大の好機となるかもしれません。