好決算と北海道沖開発で風が吹く 「洋上風力発電」関連株が上昇

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株式市場で「洋上風力発電」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は3.1%と、東証株価指数(TOPIX、0.1%安)に対して逆行高となりました(8月1日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

決算発表シーズン、業績手掛かりに株価が上昇

7月の最終週、重電の富士電機、電線のフジクラ、古河電気工業、機械のナブテスコ、ガラスの日本電気硝子などの株価が大幅上昇しました。

株価上昇のきっかけは、富士電機は決算発表、フジクラ、古河電気工業は海外企業の決算、ナブテスコ、日本電気硝子は業績予想の上方修正など業績面での発表です。好調な業績の確認や期待が株価を押し上げました。

一方、これら業種や業態の異なる企業を別の角度で見てみると、共通する投資テーマが浮かび上がります。

共通する投資テーマ「洋上風力発電」に大きな動き

5銘柄に共通する投資テーマは「洋上風力発電」です。

洋上風力発電は海上や港湾内など洋上に風車を設置して発電する方法で、陸上と比べて障害物がないうえ強く安定した風が吹くため効率的な発電が期待できます。四方を海に囲まれた日本にとって領海や排他的経済水域(EEZ)を有効活用できるという利点があります。再生エネルギーのなかでも洋上風力発電に対する期待感は大きいとみられます。

7月30日、この「洋上風力発電」に大きな動きがありました。経済産業省と国土交通省が、北海道南部の松前沖と檜山沖の2区域を新たに洋上風力発電の促進区域に指定。

北海道沖が促進区域に指定されたのは初めてで、データセンターなどの投資計画が相次ぎ北海道内の電力需要の増加が見込まれるなか再生可能エネルギーの普及を後押しする狙いとみられます。

今回、業績等を手掛かりに大幅上昇した5銘柄は、この「洋上風力発電」で様々な取り組みを展開しています。

洋上風力発電のキーデバイス【富士電機】

上昇率首位は重電メーカーの富士電機 」です。7月31日に発表した2025年4~6月期連結決算は、プラント、システムの需要増加に加えて、製品販売価格の値上げ、原価低減の推進などが寄与し、売上高と営業利益は過去最高を更新。足元の業績好調を踏まえて、26年3月期業績予想を上方修正しました。

同社は、発電システム向けパワー半導体の製造を通じ洋上風力発電に取り組んでいます。パワー半導体は、風力で発電された不安定な電気を、送電網に適した高品質な電気(周波数・電圧)に変換するための心臓部(キーデバイス)です。

パワー半導体の小型化や高効率化を実現。また、風力発電機の設計・製造・販売で世界トップシェアを誇る風車メーカーであるデンマークのベスタス社とパートナーシップを築いています。ベスタス社の風力タービンに富士電機製の高性能パワー半導体である大容量IGBTモジュールが使用されています。

 風力発電機用ブレード保護シート【フジクラ

上昇率2位は電線大手のフジクラです。7月29日、米特殊ガラス大手のコーニングが25年4~6月期決算と7~9月期の業績見通しを発表。いずれも市場予想を上回り、データセンターで使う光ファイバーなどの生成AI(人工知能)向け需要の強さが意識されました。

同社は、気候変動への対応として「グリーン関連製品拡大」を掲げ、再生可能エネルギーの普及に貢献する製品を開発しています。グループ会社の藤倉コンポジットは、風力発電機用ブレード保護シートを提供。洋上の厳しい環境下で、風力発電機のブレード表面を飛来物や雹(ひょう)、砂などとの衝突による損傷から長期間保護し、メンテナンス周期を延ばすことに貢献しています。

 風力発電の需要部材、海底ケーブルで注目の銘柄

ナブテスコは7月31日に精密減速機事業などの需要拡大を背景に、2025年12月期の業績予想を上方修正しました。同社は、洋上風力発電の安定稼働と効率向上に貢献する技術開発に注力しています。風力発電機の主要部品であるヨー旋回部の状態を監視し、故障を未然に防ぐためのCMFS(Condition Monitoring system with Fail-Safe)という装置を開発・販売しています。

古河電気工業はフジクラ同様、光ファイバーケーブルを手掛けており、米コーニングの決算が株価上昇の手掛りとなりました。同社は、洋上風力発電で発電した電力を陸上へ送るための海底ケーブルを手掛けています。24年1月に商業運転開始した国内最大級となる石狩湾新港洋上風力発電事業に海底電力ケーブルを納入した実績があります。

日本電気硝子は7月31日に電子デバイス事業の売上高増加などから、25年12月期の業績予想の上方修正を発表しました。同社は、洋上風力発電用風車の重要部材であるブレード(羽根)の強化に使用されるガラスファイバーを提供しています。強風や塩害、紫外線などに耐え得る強靭さと耐候性・軽さが特長でブレードの大型化にも寄与します。

市場規模は年率18%拡大の見込み

調査会社のIMARCは、日本の洋上風力発電市場規模は2024年の20億ドルから33年には104億ドル(年率平均成長率18%)に拡大すると予測しています。カーボンニュートラルの政府目標や恵まれた風況、技術コストの低下、エネルギー安全保障への懸念、固定価格買取制度やオークションを通じた政策支援、沿岸の地理的条件と産業革新も洋上風力発電の拡大を後押しすると指摘しています。

投資テーマとしての洋上風力発電関連は、過去でも政府が脱炭素社会の実現に向けた取り組みを公表する場面で物色されました(『骨太の方針で期待高まる 「洋上風力発電」関連株が上昇)。 浮体構造物や装置の他、発電や送電にかかわる部品、ケーブルなど幅広く、関連銘柄も業種業態を超えて様々な企業の活躍が期待されます。50年のカーボンニュートラル実現に向けた国の取り組みが進む中で、折に触れて話題になる場面が増えるかもしれませんね。